噴き出しかけた反動でカークは盛大に咳き込み、
「だ、大丈夫ですかカークさん?」
とフランシスに背中をさすられる羽目になった。

「…大丈夫だ…」
咳き込み終わると、カークはモニターの中の美女達をため息まじりに改めて見つめた。


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カークは、ジルとはもちろん旧知の間柄だが、実は残りの二人、薫と花純とも面識はあった。
というより、アルディ家に立ち寄った際にマリナに引き合わせられたのだ。

しかし紹介する時にマリナがうっかり口を滑らせて、昔ふざけて自分が抱きつく度に、純情なカークは赤面してバスルームに駆け込んで冷水シャワーを一時間浴びた話をしてしまった。

もちろん、この危険な二人がそんな面白いことを聞き逃すはずもなく、すっかり悪ノリし、

「ほう、それならあたしが女の扱い方を手取り足取りたっぷりと教えてやろうか?朝まで眠らせないぜ」
と薫がニヤニヤと笑いながら言葉で責め、
「じゃあ私の体で試してみる?」
と花純が自慢のボディで迫り、たまりかねたカークは真っ赤になってバスルームに逃げ込んだ。

しかしカークがシャワーを浴びて出てくると、待ち構えていた二人に代わる代わる攻撃にあい、シャワーを浴びて出てくると赤面して再びシャワーという悪夢のような繰り返しが、見かねてジルが止めるまで、延々と続いたのである。

あまりに恐ろし過ぎる出会いを思い出して、カークは無言でダラダラと汗を流し続けたのだった。


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「気になる点?」
カークが眉をひそめると、フランシスは頷いて続けた。

「関係があるかは不明ですが、事件が起きるのとほぼ同時刻に、休日でもないのに、被害にあった店の近くの交差点で妙な人だかりが出来ていたという情報があって、見ていた所なんです」

フランシスはパソコンに向かい操作を始め、すぐに中央のモニターに街中の様子が俯瞰で映し出された。

フランシスの言うとおり、交差点の一角には、何かを囲むように不自然にかなりの数の人間が密集している場所があった。

カークは画面を見つめたまま、慎重に言った。
「テレビや映画とか何か撮影でもあって、単に見物客が集まっただけなんじゃないか?」

「いえ、この近辺で大規模な物は行われていないそうです」
返って来た答えに、カークはちょっと息を付いた。
「何もないのにこの人だかりか…それは確かに妙だな。もっとアップに出来るか?」

「はい、ズームにします」
フランシスがマウスをカチカチとクリックすると、カメラがその集団へと寄って行き、中心にいた三人の人物を映した。

「☆○△!!!!?」
画面に大写しにされたその姿に、カークは思わず、飲みかけていたコーヒーを噴き出しそうになった。

(…なっ、なっ、
なんだってこの三人がこんな所にいるんだ!?)




「はい」という返事が中から返って来て、カークはモニター室のドアを開けた。

室内にはずらりと縦横に並んだモニターがそれぞれ違う映像を映しており、前にはパソコンを載せた机と椅子が数組置かれている。

「あ、カークさん!」
そのひとつに座って作業をしていた一人の青年が振り返って顔を輝かせた。

「よう、進んでるか?」
「はい!」
今年配属されてきたばかりの新人刑事フランシスはハキハキとした口調で答えた。

少々早とちりで仕事の面ではまだまだ未熟な面があるが、努力家で自分を慕ってくれる同じ名前のフランシスのことを、カークも目を掛けていた。

「ラスパイユで強盗だって?
詳しく報告してくれ」
カークは近くの椅子を引き寄せてフランシスの隣に腰を下ろした。

「は、はい」
フランシスは緊張した面持ちで手元の資料をめくって読み上げ始めた。

「30分ほど前、ラスパイユ通り沿いの宝石店『mashmaron』に客を装った二人組の男が押し入り、30万ユーロ相当の宝飾品を盗んで現在逃走中です」

モニターには店内の別々の角度から撮られた防犯カメラの映像が流され、大きなバックを持った二人の男達が買い物客のいる店内に現れると、いきなり一人が女性店員を人質に取って短銃を突きつけ、その間にもう一人がバックから取り出したハンマーでショーケースを叩き割って、奪った宝石類をバックに詰め込んであっという間に外へ逃げていく一部始終が記録されていた。

「白昼堂々、3分以内の鮮やかで大胆な手口か。ピンクパンサーに似てるな」
カークは、日仏を含む世界各国で被害が報告されている国際窃盗団の名前を挙げた。

「はい。ピンクパンサーとの関連も含め、犯人の行方及び逃走経路については現在捜査中です。
店員や居合わせた買い物客は全員無事で今聴取中です。
市内の防犯カメラの映像も確認しているんですが、ちょっと気になる点がありまして…」