クリスマスを間近に控えて街中が浮き足だった、とある平日の午後のことだった。
雪がちらつき始めた街での長時間の張り込みを終えたカークは、冷え切った体を自販機の紙コップのコーヒーで温めながら相棒の刑事のオットーと談笑し、職場であるパリ市警察の古い階段を登っていた。
「おう、ルーカスにオットー」
不意に声を掛けられてカーク達が顔を上げると、コートにマフラー姿の同僚の刑事が二人、ちょうど上の階から降りてくるところだった。
「これから聞き込みか?」
カークが訊くと、二人組の片方が肩をすくめて答えた。
「ああ、さっきラスパイユ通りで強盗があったんだ。これから行って来る」
横からもう片方が口を挟んだ。
「モニター室でフランシスが防犯カメラの映像見てるから、あとよろしくな」
「オッケ。今日は一段と冷えるから気を付けろよ」
とカークが言うと、
「メルシィ」
二人はカークとオットーの肩を軽く叩いて、
「雪か、本降りにならないといいが」
「今夜はホットワインで一杯やりたいな」
口々に言いながら階段を降りて行った。
彼らを見送って階段を登りきると、オットーは刑事課のドアを親指を立てて指差した。
「じゃカーク、オレはこのまま課長に報告して来る」
「ああ、頼む。オレはフランシスの様子を見てくるよ」
カークはオットーと別れ、廊下を進んでその突き当たりにあるモニター室の前に立つと、ドアをノックした。

