(な、なんでマリナまでいるんだ!)
カークは心の中で絶叫した。


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マリナはしっかり厚着をしているが寒さに小さな体をさらに縮こめながら、それでも足取りは軽く楽しそうで、まるで遠足に行く子供のように見える。

(いくら日本より寒いからって、モコモコに着込んじゃって、着ぐるみみたいになってるぞ。でもなんだか可愛いなぁ…)

彼女らしい様子に、束の間カークがほっこりした気分になっていると、

「ここです!物陰にいる女性を見て下さい!!」
フランシスは短く叫んで画像を停止させた。

(物陰? …って、こここれは~っっ!!)


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マリナの背後にいる人物に気付くなり、カークは再び心の中で絶叫した。

(これはアルディ家美人諜報員、マドモワゼルchanっ!!!)

ご存知ない方の為に説明しよう。
マドモワゼルchanとは、語学は堪能、かつシステムはプロフェッショナル、この世のあらゆる事象に精通した頭脳と美貌とを武器に、ハイヒールで世界を股に掛けて活躍する、精鋭ばかりが集められたジル直属の凄腕諜報員なのである。

正体を隠して日本国内に潜入し、普段は会社に勤務しながら『日本総アルディ計画(仮)』を密かに進めているが、年に数度は海外出張と称してジルによって召集され、ヨーロッパで極秘ミッションを行っていると聞いている。

その彼女がパリにいるということは…。

カークはゴクリと生唾を飲んだ。




「この三人は多分事件とは無関係だろう。ただの通りすがりのヘンな一般人じゃないか。
まだまだ修行が足りないなハハハ…」

カークが引きつった顔で乾いた笑い声を立てると、フランシスは納得いかなそうな表情で言った。

「そうですか?でもこの三人、どこかで見た気がするんですよね。
どこでだったかな…」

その言葉に、カークはギクリとし、笑いが止まった。

変装しているとはいえ、薫は世界で活躍するヴァイオリニスト、花純も一流のファッションモデルでシャルルの友人の美馬貴司と交際中であり、共にアルディ家やシャルルとの関わりも深く、ジルに至っては当主の従姉妹で補佐だ。

明らかにまずい。
彼女らの正体とアルディ家の関係者であることをフランシスが気付かないうちになんとかしないと。

「カークさん、何だか今日は顔色悪くないですか?」
思わず青ざめるカークを見て、フランシスは心配そうに訊いた。

「だっ、だ、大丈夫だ…」
しどろもどろになりながらカークが答えると、
「はぁ…そうですか?」
とフランシスは渋々話を元に戻した。

「あと、また別の場所の防犯カメラの映像なんですが、これを見て下さい」

再びフランシスがマウスを操作すると、モニターのひとつに店舗が並ぶ賑やかな通りとそこを行き交う人々が映し出しされる。

その中にひときわ目立って小柄な女性がトコトコと歩いて来るのを見つけ、カークは驚きに目を見張った。




そんなカークをよそに、フランシスは続けた。

「どうやら青年実業家が秘書と愛人を連れてクリスマス用にショッピングするみたいですね。こっちはこの強盗のせいでクリスマスも仕事決定だって言うのに~っ!!」

くぅ~っと恨めしそうな奇声を上げ、憤懣やるかたないフランシスはモニターの中の薫をビシッと指差した。


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「この色男、絶対裏では悪いことして金儲けしてますよね!それに金と権力にモノを言わせて、セクシーな美人秘書と絶っっ対デキてますよね!職権乱用だあ!!」


どこから見ても危険な香りのする美男っぷりにさらに磨きのかかった薫と、その愛人にしか見えない花純に、カークは心の中で激しいツッコミを入れた。

(カオル、まさかついに性転換したのか!!おまけになんでカスミとそういう関係になってるんだ!!日本人はコスプレが好きなのか!?)

一方すっかりヒートアップしたフランシスは、もはや捜査から脱線してるだろと言わざるをえない方向へ話を展開させた。


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「おまけにレジーナみたいなキレイな未亡人にまで手を出すなんて!ズルいっ!!」

(『Charade』のレジーナ風って…なんでジル、君までコスプレなんだ!?)

とんでもないことに巻き込まれそうな予感に、カークは体中の水分が全部冷や汗に変わって行く気がした。