『マレフィセント』感想。眠れぬ嫉妬のディズニー。 | まじさんの映画自由研究帳

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ディズニーは、またしても『ウィケッド』を越える事ができなかった。
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ディズニーは過去の傑作アニメに、新たな解釈を加えたリメイクに躍起になっている。当初ディズニーは『眠れる森の美女』を悪役マレフィセントの視点で描いた実写版を製作すると発表した。コレはブロードウェイ発の、世界中で大ヒットを飛ばしたミュージカル『ウィケッド』の影響である。
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『ウィケッド』は「オズの魔法使い」の悪い魔女の視点で描描いており、良い魔女と悪い魔女が、かつては親友であり、その二人がなぜ袂を分かつ事になったのかを描いた、傑作ミュージカルである。原作とディズニーの映画版『オズの魔法使』をベースにし、細かな設定に小さな違いはあるものの、様々な現代的な問題を取り入れ、悪い魔女を浄化し、原作の善悪が一変するその内容は、大きな反響を呼んだ。ディズニーがこのミュージカルに大きな嫉妬を抱いているのは、ミュージカル新参の同業社ユニバーサル製作だからである。ディズニーは『美女と野獣』でミュージカルに進出し、ブロードウェイでそれなりの地位を築き上げて来た。だがユニバーサルはブロードウェイに突然現れて、その年のトニー賞を総ナメにしたのだ。
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ディズニーにとっては面白くない話だ。ディズニー版『オズの魔法使』をネタにして、善悪がひっくり返る話を作られ、その年の話題をライバル社が全部持って行ったのだ。その嫉妬からディズニーは、古い作品の映像化に際して、新しい解釈を取り入れた焼き直しをし始めた。

一つの作品に特化せずに作られた『魔法にかけられて』では、現代のニューヨークを舞台に、おとぎ話の王子と姫がくっつかない話を作り、オリジナリティを見せた。『アリス・イン・ワンダーランド』ではアリスが不思議の国を再訪する後日譚、『オズ~はじまりの戦い』では、オズが王になる前日譚を見せた。『アナと雪の女王』でも、原作では悪い魔女である雪の女王をマイノリティとして描き、新たな解釈の物語を生み出した。因みに、エルサの役を演じたイディナ・メンゼルは『ウィケッド』初演で主役を演じ、トニー賞を受賞した女優である。似たプロットの作品に彼女を起用した事から、ディズニーが『ウィキッド』を意識しているのは確実である。

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そして今回『マレフィセント』でも『眠れる森の美女』のヴィランである、マレフィセントの視点の物語を作った。だが今回も、原作はもとより、アニメ版、バレエ版のどれにも繋がらない、パラレルストーリーとなってしまった。『アリス・イン・ワンダーランド』や『オズ~はじまりの戦い』でもそうだったが、過去の作品に繋がる物語になっていないのが残念で仕方ない。原作に出てくる「100年の眠り」が欠如している。元々は、長い眠りの間に起こった事と関わらない事で、女性の無垢の美徳を現していると言われるが、そもそもディズニーのアニメ版でも同様、意外とサックリ目覚めるので、そこは目を瞑るとしても、ディズニーには、名作と呼ばれるアニメ版があるのだから、せめて『マレフィセント』はアニメ版に繋がる物語として描いて欲しかった。この魔改造物語を真実の物語と言ってしまうのは、見ていて実に痛々しい。

マレフィセントの設定を根本から変えている辺りは、いい仕事をしているが、アンジーにキャラクターを寄せ過ぎていて、マレフィセントに見えない。しかも彼女が出突っ張りなので、一人芝居状態。
おかげでオーロラ姫が影に隠れてしまい、容姿以外の部分が、余り魅力的ではない。(エル・ファニングはかわいいぞ!)
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特に予言を知りながら、糸車の針で指を刺すシーンは、魔法による夢遊病の様な表現で、実にガッカリした。
このストーリーなら、真実を知った絶望感から、自ら永遠の眠りを選ぶ表現であるべきだ。魔法のせいにしてしまっては、全く設定が活きていない。
ステファン王の大幅な改変も良かったが、オーロラ姫を守るという、大義が欠如しているのは頂けない。王の本音がマレフィセントを倒す事だとしても、大義で家臣を動かすのが王である。コプリーは相変わらずいい目をしていたが…。
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フィリップ王子の扱いも酷い。真実の剣や美徳の盾など、いかようにもできそうな魅力的なアイテムがスッポリとカットされ、単なる当て馬に成り下がっている。
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王子は手前ではなく奥に追いやられている。

ここはやはり、フィリップ王子は剣を取り、マレフィセントを塔から突き落とすシーンが必要だった。少なくともそう見える結末が用意されなくてはならない。その後で、Bパーツによって救われるのであれば、整合性の取れたストーリーが組み立てられただろう。

Bパーツだって、整合性を取る為の設定だった筈で、それを奪われた事から呪いをかけるという動機が良いのに、その設定が全く活かし切れていない。

悪にも義があるとの解釈を見せるのはいいが、物語の世界観を変えずにやらねば、それはただ、別の話でしかない。『スターウォーズ』のダースベイダーの過去を知る事で、絶対的な悪の象徴的なイメージが崩れ、浄化されるようなカタルシスは『マレフィセント』にはなかった。それどころか、あんなオチで、オーロラ姫が笑顔で終わるなんて酷過ぎる!そんな役をエルたんにやらせるなよコラ!
こんな所からも、アメリカの薄幸な家庭事情が垣間見られてモヤっとした…。両親が別居の家庭が多いんだねぇ。

クォリティの高いCGとアンジーの見事なコスプレのおかげで、興行的には成功をしているようだが、作品的な価値としては『ウィケッド』の足元にも及ばなかった。
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まるでアイデア一発の素人が、二次創作で作ったような脚本だった。そういうのを他社がやるのはいいが、本家のディズニーがやるべきではない。ディズニーは本道から外れたキワモノに走るよりも、もっと堂々と王道を歩むべきである。

こういう百合百合した二次創作は同人誌でやんなさい!



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