『イントゥ・ザ・ストーム』感想。驚異的脅威の怪獣映画。 | まじさんの映画自由研究帳

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いつものデザスター・ムービーだと思ってノーマークだったが、ホラー映画だとの評判に突き動かされて観てみたら、立派な怪獣映画だった!

現実にある竜巻は、毎年アメリカ本土を襲う、史上最強の脅威である。いまだ人類は、その軍事力を持っても戦う事すら出来ず、発生や進路を予測して避難するしか出来ないでいる。出現の予兆があるが止める事ができず、なすがままに街を蹂躙し、そして、突然煙のように消えていまう。跡には破壊された瓦礫の山だけが残る。まさに怪獣である。
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1996年の『ツイスター』も、同様の竜巻ハンターが出てくるが、彼らの人間模様を描きつつ、彼らの仕事を客観的視点で描いていたのに対し、今回はもう一歩踏み込んで、主観的な立場から竜巻を体験させている。

現実にある脅威の映像として、POVが効果的に活きている。POVとは、Point Of Viewの略で、主観ショットとも言われ、カメラの視点と登場人物の視点を一致させる手法の事。登場人物がカメラで撮影したドキュメンタリー映画がそれに当たる。最近ではフェイク・ドキュメンタリー(=モキュメンタリー)などが、この手法で撮られる事が多い。

携帯のカメラや監視カメラ、ビデオ撮影などを駆使した映像の臨場感は、現実感があり、彼らが見たものを観ている体験として仕上がっている。それでいて娯楽性もあり、退屈になり兼ねない内容を飽きさせずに見せてくれる。
父子、兄弟の人間模様を主軸に、そこに関わる竜巻ハンターの視点、そしてYouTubeバカなど、多彩なキャラクターが同時に同じ竜巻を目撃し、多重視点の主観映像で見せている。
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耳が尖っていそうな顔した俳優が、父親役を演じており、誰かと思ったら『ホビット』でトーリンを演じたリチャード・アーミティッジだった。子育てが不器用な教頭という、厳格な父親をとてもナチュラルに演じていた。演技の幅の広さが伺える。
息子が持っているナイフの使い方がとてもいい。巨大なものを描いている作品で、小さな小道具で人間関係や心境の変化を表す脚本は大好きだ。

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ウディ・ハレルソンに似た所があるマット・ウォルシュという俳優は、正直知らなかったが、とても好感の持てる演技でファンになった。コメディアン出身という事だが、白鯨を追うエイハブのような狂気的な一面も見せつつ、ラストでは奇跡的な光景の目撃者となる。竜巻観測用の装甲車が熱い!主役メカまで登場するサービスはたまらない。
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竜巻という、強大な力を目の当たりにする者たちの視点で描く事で、被写体ではなく撮影者を描くのは、近年の新しいPOVの形式だ。更に、一人称ではなく、多重視点である所も、この映画の大きな特徴と言えよう。
地上にいる人間の目線から見上げた、文字通り天まで届く竜巻の姿は、まさに怪獣。恐ろしさの中に美しさを持つ、自然の脅威である。
テキサス州やカンザス州など、アメリカには毎年、竜巻と付き合う人達がいる。だが、近年では気候変動により、我が日本でも竜巻の発生件数が増えている。もはや対岸の家事ではなくなりつつある竜巻災害に対し、フィクションとはいえど、彼らから学ぶべきものは大きい。