『アウトロー』感想。俺様万歳映画。 | まじさんの映画自由研究帳

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『コラテラル』のようなハードボイルドを期待したオイラが悪かった。コレはトム・クルーズのトム・クルーズによるトム・クルーズのための俺様万歳映画だった。
往年のスター映画のような俳優重視の作風だが、美女の扱いがぞんざいだ。ただひたすらにトム・クルーズがカッコ良く、時にセクシーで、そしてスマート。大振りのアクションと、射撃も凄いぞと、もう、トム・クルーズの魅力をいかんなく発揮!むせ返る程のフェロモン!目が眩む程のオーラを振りまく、トム・クルーズ・プロパガンダ映画だ!

徹頭徹尾、トム・クルーズを持ち上げた演出だ。彼の見せ場であるアクションは勿論の事、彼が通ればモブの美女が笑顔で返し、モテ度をアピール!そこでなぜ?とツッコミを入れたくなるシーンで脱ぐ!むん!熱狂的なトム・クルーズのファンなら、大喜びだ!
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喜ぶトムさん\(°▽° )ノ

コレだけ主演俳優に媚びる監督も珍しい。なぜか…いや、当然のように、トムはこの監督を痛く気に入っているようだ。

いちいちサスペンスを盛り上げる演出も意味がわからない。特に変なのは射撃場のシーンだ。
トムが的を貼りに行くシーンから、無駄にサスペンスシーンを盛り上げる音楽が流れる。それを見守るロバート・デュバルが不敵に銃を触る。しかし何も起こらない。どうやらその老人には殺意はなかったようだ。
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そして、トムが銃を構えると、背後に人影が忍び寄る。だが、何も起こらない…。どうやらその人影は本当に、無関係な人だったようだ。
いったい、誰の心情風景を盛り上げて、流れる音楽なのか、さっぱりわからない演出だった。
サスペンスにホラー映画の手法を持ち込むと言えば聞こえはいいかも知れないが、これはただのお門違いだ。ここで煽られて拍子抜けした所で、いくら待ってもモンスターが現れるわけではないのだ。

しかし、ある意味モンスターと呼べる者が出ているかもしれない。どういう人脈かは知らないが、ドキュメンタリー映画の鬼才ベルナー・ヘルツォークが、悪役で出演しているのは面白い。顔を見た奴は死ぬ!と言う触れ込みの割りに、その設定が活きているのは登場の時だけだったのは残念だが、何本も指がなく、昔、自分の指を食ったと言うのは面白い。お前も自分の指を食ったら、命だけは助けてやろうって所は、クレイジーな悪役らしさがあって結構好きな感じだ。
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このネタは、彼自身の短編映画『ベルナー・ヘルツォーク、自分の靴を食べる』のパロディだと思われる。この短編は、創作ではなく、セルフ・ドキュメンタリーである。かつてヘルツォークは、知り合いの学生に「お前が映画を完成させたら、俺は自分の靴を食ってやる」と言った。だが、その学生は本当に映画を完成させたので、ヘルツォークは、その学生映画の試写会で、自分の靴を料理して食ってみせた。彼はその模様を自ら撮影したのである。ラストで「映画の為なら、靴くらい、いくらでも食ってやる」と豪語しているw
そんなオチャメなヘルツォークの怪演が、この映画で見られたのは良いポイントだった。

監督のクリストファー・マッカリーは脚本家出身という事で、確かに脚本は悪くない。『ユージュアル・サスペクツ』以来『X-MEN』の脚本に参加しブライアン・シンガーと仕事を共にする事が多いようだ。トム・クルーズとはヒトラー暗殺計画を描いた『ワルキューレ』で出会い『M:Iゴースト・プロトコル』の脚本リライトで参加。
トムのお眼鏡にかない、この作品で監督へ大抜擢された。脚本家としての才能はあるようだが、監督としての演出力は今ひとつだった。ただ、トム・クルーズに気に入られる演出力には長けているようで、トムは『M:I』シリーズ5作目の次回作に彼を監督に抜擢した。また、最新作『オール・ニード・イズ・キル』の脚本チームにも参加させている。おそらくは、トムの見せ場を担当しているのではないだろうか。暫くはトムの座付き作家として、食いっぱぐれはなさそうである。