何の為に等身大のイングラムを作ったのか?
この原寸大模型が、作品の足枷となっている。人物の背景に、全身が写る不自然なアングルが多く、意味のあるシーンが少ない。原寸大ありきの脚本となっており、動かない棒立ちのイングラムが登場するシーンばかりで構成されている。
エピソード0では、統制の取れた軍隊のような整備班を見せたいのだろうが、棒立ちのイングラムのせいで、仏像、教祖、信者の構図が出来上がり、白い制服のせいもあり、新興宗教のようにしか見えない。
明らかに、脚本ありきの画ではない。原寸大を作ったから、それに合わせた脚本になっている。棒立ちイングラムを活かせるシーンはハンガーと、トレーラーで寝ているだけのシーンだけだ。少しでも動けばたちまちCGだ。よってハンガー中心のストーリーとなり、現場でのシーンは少なくなる。動かないレイバーを誰が見たいのだ?
我々は、現場で活躍するレイバーが見たいのだ!グリグリ動かなくてもいい。渋滞の中でリフトアップして、下町の工事現場で、ガチンコ対決しているレイバーが見たいのだ!
やっとの思いで出動したかと思えば、クラタスに相手に一発撃って終わるあっけなさ…。(クラタスから出てきたのが神戸浩なのは、かなり嬉しいのだがw)
押井守は、あるモノないモノの制約の中で、自分のカラーを出して作品を作る才能に長けた監督だ。よって、今回は明らかに動かない原寸大イングラムを見せる為だけの脚本になった。その証拠に第二小隊は既に解散の危機だ。
これなら棒立ちイングラムでも、撮影の出番はかなりあるに違いない。ただの背景ならCGでも充分なのに、背景にしかならないものを原寸大で作ってしまっている。その予算があるならば、もっと細かな美術に凝るべきだし、CGにも予算を割くべきだ。
今後も動かない棒立ちイングラム立像をメインに、CGの少ないパトレイバーを見せられると思うと、かなりうんざりする。それでも、きっと、どれか1つは面白いハズだと信じて、最後まで付き合うけどね…。
動かないロボットは、ただの仏像だ!
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