『カウボーイ&エイリアン』感想。かなづちスープ・ウエスタン。 | まじさんの映画自由研究帳

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豪華キャストが贈る奇跡の荒唐無稽映画!西部開拓時代に宇宙人がやって来て、カウボーイがエイリアンと戦うなんて、どう考えてもアルバトロス辺りのB級映画のプロット。これをスティーブン・スピルバーグとロン・ハワードが製作し、ジョン・ファブローが監督しているのだから驚きだ。彼ら以外の企画だったら、絶対に製作される事はなかっただろう。
『エイリアンvsプレデター』『ジェイソンvsフレディ』など、ありえない対決映画の流行りに乗って、突如として現れたスピルバーグの企画!聞けばコレも流行りのアメコミ原作だとか。
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この奇想天外な発想は、原作者が幼少時代に沸いたものだと言う。
カウボーイごっこで、インディアンとの対決に飽きて、宇宙人と戦った事が始まりだとか。

つまり子供が、カウボーイごっこ中にインディアン役の奴が「撃たれても死なないもんねー。実は俺、宇宙人でしたぁー!」と、やったりするアレが、発想の原点だと言うのだ。
中二病どころの騒ぎではない。この発想は小二だ!こんな小二の発想を映画界の巨匠スピルバーグが、ユニークだと拾い上げて映画化したのである。
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だが、さすがはスピルバーグ。この映画は、開拓時代を舞台にしたSF映画だと思って観ると、肩透かしを喰らう。実は、コレは単なるアメリカ西部の開拓寓話だった、という仕掛けになっているのだ。
奇抜に見えるプロットだが、実は西部劇の本質は何も変わらない。街にふらりと現れた記憶を失った流れ者、謎頑固者で親バカの街の有力者と、父の威光を着る駄目なその息子。ミステリアスな謎の美女や保安官ギャングなど、西部劇ではお馴染みの連中が、街を襲う正体不明の敵とガンアクションで戦う、至って普通の西部劇だ。その正体が、たまたま宇宙人だっただけに過ぎない。実はエイリアンに意味はないのだ。
お互い相容れない流れ者と頑固オヤジが、共通の目的の為に共闘し、互いに認め合い、友情を交わし、そして流れ者は馬に跨り去って行く。
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『カウボーイ&エイリアン』は、正統派の王道を行く、馴染み深い西部劇だったのである。

映画ライターなら、ここでマクガフィンとしてのエイリアンの話をするところだが、オイラはウルゲン・ヴルフの絵本『かなづちスープ』を思い出した。

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『かなづちスープ』はこんなお話。
ある寒い日に森を歩いていたヤーコブは、森の中に住むカタリンというケチな男に美味しいスープを作らせ、ご馳走になろうとする話だ。ヤーコブはカタリンに言った。「かなづちを使って、おいしいスープができるんだ」。カタリンは「本当?」と身を乗り出して聞いてきた。それなら作り方を教えてやろうと、鍋に湯を沸かさせ、そこに大きなカナヅチを入れさせた。そして、えんどう豆、ベーコン、ジャガイモ、ニンジン、スパイス、バター…と、カタリンはヤーコブの言うとおりに、鍋に具材を投入した。ヤーコブは「かなづちが決め手なんだ」と言いつつ、出来上がったおいしいスープをふたりで食べたと言うお話。

ヤーコブは言葉巧みに野菜たっぷりのポトフを作らせたのだ。カナヅチ以外は至って普通の美味しいポトフである。カタリンはかなづちを入れると言うアイデアに新鮮味を感じ、まんまと主人公に、熱いスープをご馳走してしまったのだ。


おそらくはスピルバーグとハワードは、西部劇を撮りたかったのだろう。だが、ハリウッドには西部劇は当たらないジンクスがあり、大手スタジオは西部劇の企画に消極的だ。そこで彼らは、原作付きのこの企画を持って来て「西部劇にエイリアンが出てくる映画を見たことあるかい?」「エイリアンが決め手なんだ」とか言って企画を通したに違いない。
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我々も西部劇にエイリアンと言うエッセンスが入ったと聞いただけで、惑わされてはいけない。SFの味を期待して舌を回してみても、この映画はそんな味はしない。熱くてコッテリした西部劇の味しかしない。
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この映画の色々なレビューを読んだが、SF映画として期待した人たちが、低い評価をしているのに対し、西部劇として観た人は、結構楽しんでいる。賛否がが別れた原因は、この辺りにあるようだ。
だが、ダニエル・クレイグのかっこいいカウボーイ姿が拝める貴重な映画である点では、相容れない両者であっても理解し合える、唯一のポイントであるだろう。
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