楽鴬師匠との出会いから数カ月たったころ
島の中で、
娘が突然学校に行けなくなった。
一時的なものだと
そんなに心配していなかった私。
でも、一週間、二週間・・・
柱にしがみついて
「行きたくない」と泣く毎日。
みんなの中で
楽しそうに遊んでいたし
みんなから慕われていたし
勉強だって
決して出来ないほうではない。
なぜ・・・
本当に頭をこねくり回して
多方面から考えても
わからない事ばかり。
ただ、娘の胸の奥深くに潜む
哀しみなのか、怒りなのか
はたまた絶望なのか
寂しさなのか・・・
それを時間をかけて、
今こそ聞いてあげたいと思った。
こんな時のために
心の勉強をしてきたのだと。
不思議と落ち着いて
私自身は腹を括れていた。
しかし、間もなく
疲れ果ててしまった。
娘に疲れたのではない。
父や、担任の先生や
校長先生や
地域の人
憶測でいっぱいの
私に対する「注意事項」を
ノートいっぱいに箇条書きして
呼びつけられた。
私は、その質問に
ひとつひとつ答えて行った。
校長先生は
「もう、何も聞く事がなくなった」
と言った。
その時に、不意に
「島での生活は卒業」
そんな風に、急に
本当に急に
声が聞こえた気がした。
逃げるという風にみる人もいるだろう
どこに行っても
大切な課題をクリアしない限り
追いかけてくるのが
運命というものだ。
人生というものだ。
でも、本当にその時は
何かが総動員をして
私たちを島から出ていかそうと
しているようにさえ思えた。
そんな出来事が続いた。
あそこにも
ここにも
そして、3年間暮らした
家の小さな二階のスペースにさえも
もう、居場所がないように感じていた。
☆おかあちゃん③へつづく
絵:有咲