私は義母の顔を見つめながら、カバンの中から持参した郵便物を取り出した。
「そうですか。そちらはこういうものが家に届いても迷惑じゃないっておっしゃるわけなんですね。こぉんなにたくさんあるんですけど」
言いながら私は銀行やローン会社からの封書やハガキや電報を義母の目の前にちらつかせた。
「これなんか、早急に連絡請うって書いてありますよね、○○ファイナンスから。こっちは○○銀行からでローンが2ヶ月延滞してるそうで、早急に連絡欲しいとのことですよ。2ヶ月分の支払いを求められてますね」
言いながら私は1通1通広げてカウンターの上に並べていった。
「おたくはこんなものが来ても迷惑じゃないかもしれませんけど、うちは迷惑なんですよ」
義母は顔を舞ったにして怒鳴った。
「こんなもの、こんなところに並べないで!!営業妨害よ!」
急いでカウンターの上の郵便物をかき集める義母に私はにっこりと笑って言った。
「あら、営業妨害で訴えられるならそれでもかまいませんよ。私もあなたの息子さんに対して慰謝料請求の裁判を起こすだけですから。支払命令が出たらそちらがお困りなんじゃありません?差し出がましいですけど、今でもこんな状態なのに支払うお金がそちらの中で少しでも増えたら、それこそ銀行やローン会社に払えなくなって大事な家が競売にかけられることにもなりかねないんじゃありません?その辺をよくお考えになったらいかがですか?商売なさってるのに裁判沙汰はねぇ・・・」
わざと語尾を濁すと、義母は黙ったまま私を睨みつけ、腹立たしげに郵便物をゴミ箱に投げ入れた。
私はわざとゆっくりとゴミ箱から電報と銀行からのハガキを拾い上げると
「あらあら、これ早急に連絡してくれってかいてありますよ。捨てるのはまずんじゃありませんか」
と再度義母の目の前に差し出した。
義母は私の手から郵便物をひったくると、
「さっさと帰って!!」
と叫ぶように言うと、店の奥に引っ込んでしまった。
ちょうど、店の前に車が止まり、お客さんが入ってこようとしているようだった。
私は
「じゃあ、お邪魔しました」
と奥にいるはずの義母に声をかけて店を出た。
車に乗り、店を後にしながら複雑な気分を味わっていた。
すっきりしたといえば、正直なところすっきりしたし、勝ったという気持ちもあった。
でも、微妙に後味の悪さがあるのだ。
たとえ反りが合わなかったとはいえ、義理ではあっても母であり、父であった人である。
こんなふうにいがみ合う時が来るとは思ってもいなかった。
私は怒りにまかせて行動したことをほんの少し後悔していた。
でも、この後悔を覆すような出来事がこの後、次々と起こることになるのである。