「車いすユーザー・義足ユーザーの皆様に向けた新しい乗り物の試乗会を行うにあたり、モニターを募集しています」
大阪への車椅子旅を決行中、知人からそんな案内文が転送されてきた。
「車椅子に乗っているなら、行ってみませんか」と。
▲新しい相棒、松葉杖と共に試乗会へ行ってきた
その「新しい乗り物」とは、WiCoMo(ウィコモ)。
“Wish Construct the Mobility”(願いがモビリティをカタチ作る)が名前の由来で、「下肢障害があって、家にこもりがち」「障がいに関係なく楽しめる活動があれば」というニーズに応え、車椅子ユーザーの人生をより豊かにするために開発がスタートした。
歩行が難しい人の移動手段として使えることはもちろんだが、障がいの有無や年齢に関わらず、すべての人が楽しめるモビリティーを目指していることが大きな特徴だ。
大事にしているのは、楽しさと安全の両立。
風や音、操作感といった、スポーツバイクに乗るような楽しさを味わいながら、移乗時や走行時の安心感・安定感は損なわないことを目指している。
12月9日、できたばかりの試作1号機がお披露目された。
たった3日間だけど車椅子ユーザーになってみて気づいたことはたくさんあったので、歩く代わりになってくれる新しい乗り物とはどんなものなのか、興味津々…。
▲WiCoMo試作1号機
一見してまず思ったのは、カッコいい。
今回、私はコンサート会場へ行くため車椅子を借りたわけだが、こんなスタイリッシュな乗り物だったら、テンション上がるなと思った。どうしても従来の車椅子は「歩けない気の毒な人」的イメージがつきまとう。だからこそ親切にしてくれる人もたくさんいて助けられた面もあると思うけど、遊びに行く時は、車椅子もオシャレしていいんじゃないかな?と感じた。
試作機は黒だけど、カラーバリエーションがあったら、推し色を選ぶのもいいかも。
▲試乗中。胸当てに体を預けて乗るので、休憩するときも楽チン
他の女性からは「この乗車姿勢だと、スカートは履けませんね」との声が上がった。なるほど、たしかに…。個人的にはスカートほぼ履かないし問題ないけど、女子的には洋服を選ぶ幅が狭まるからマイナスかもしれないね。
スカート絡みで考えると、自転車みたいにタイヤやチェーンに裾が巻き込まれる心配がないのはメリットかも(ミニベロに乗ってて、チェーンでお気に入りのロングスカートをビリビリにした経験がある…)。
重心が高く、タイヤが小さいから安定感はどうなのか心配だったけれど、サスペンションが優秀なのか、左右に重心をずらしてみてもまったくグラつくことはなかった。
広島の歩道が傾斜・段差・歪みのトリプルコンボであることを考えると、そうした環境下でどうなのか疑問(不安)は残るところだけれど…。それはきっと今後、開発が進んで屋外での検証などを通してクリアされていくんだろうな。
個人的には、膝を怪我して、左足に重心をかけたり踏ん張ったりできなくなってからタクシーに乗り込むのもコツが要るようになったほどで、自転車的なこの乗り物に移乗するのはさらに難しく感じた。一度乗って、その安定感を実感した後は恐怖感もなくなったけれど、座面が通常の車椅子に比べて高いから、最初はちょっと怖かったのが正直なところ。完全に下肢を動かせない場合は、どう体を引き上げて移乗するかも課題になりそう。
あとは、膝が曲がらないためステップ(正式名称未確認)に足を乗せられず、実際の走行時は地面に引っかかりそうだったのも、ちょっと怖いなと思った。膝が曲がらない人や自分で足を動かせない人も安心して足をセットできる工夫があるといいかもしれない。
まだ試作段階ということで、動力系統や操作系統は未搭載。
完成品は、電動になる予定だそうだ。今回の大阪旅では肩や背中、腕が筋肉痛でバキバキになったので、電動ありがたい…。
私を含め、試乗した人たちはそれぞれ感じたことを自由に発言。要改良点もたくさん出たが、総合的には「楽しそう!完成が待ち遠しい!!」と言うのが総意だったようだ。もちろん私もそう感じた。
帰りの車で、広島でいちばん賑やかなショッピングエリア・本通の交差点を通りかかったときのこと。横断歩道を挟んで、両側にはたくさんの歩行者や自転車が信号待ちをしている。
「ここにWiCoMoがフツーにいるようになったら、面白いですね」
試乗会に誘ってくれたばかりか、送迎まで買って出てくれた松本由香さんが言う。
▲試乗会のことを教えてくれた松本さん(右)と一緒に記念撮影
松本さんは、障がい者サッカークラブ・A-pfeile(アフィーレ)広島のマネージャーで、広島県における障がい者サッカーの総括団体・広島県インクルーシブフットボール連盟(HIFF)理事でもある。障がいの有無に関わらず、好きなスポーツに取り組んで楽しむことは当たり前!ということを発信し続けている方なので、誰もがスポーツ感覚で楽しめる新しい乗り物に惹かれるのも当然だ。
誰もが自由に、やりたいことができるという理想。そのためのハードルは、残念ながら少なくないし、低くもない。でも、1つ1つなくしていくことは、きっとできるはず。
WiCoMoがその一助となってくれる期待は大きい。これからの進化が楽しみだ。