前回より始めた「 好奇地理博物誌」の企画は実は本日の前代未聞の二酸化炭素爆発で未曾有の災害を被った「ニオス湖の湖水大爆発」がメーンで、前回の「カメルーン山」は今回の導入部分であった。
というのは二オス湖などと言っても99%の読者は不知(私自身も大爆発まで知らなかった)ゆえ、場所を知ってもらうには先ず国名では聞いたことのあるカメルーン山を出した方が分かりやすいと思った次第である。
■で場所(位置)であるが(地理ではどこにあるかが一番大切である)、上図のようにカメルーン山の北方約300kmにある青丸→●ニオス湖とありますね・・ついでにその100km南方に小さい青丸のマヌーン湖も後で出て 来るので覚えていて頂戴。
つまりニオス湖はカメルーン火山列の北方に位置するほぼ円形のマール型火口湖で、面積は1・6km2と群馬県の榛名湖より少し大きい程度だが、水深は208mと結構深い湖で、
湖底の地下にマグマ溜まりがあって湖水中に二酸化炭素 (CO2)を放出するという極めて特異な湖で、このような湖は近くのマヌーン湖とルワンダのキブ湖https://ameblo.jp/mayoerossan2/entry-12484043566.html?frm=themeを入れて世界に3例しかありません。
特に湖底に近い深層部は高密度で過飽和状態にあって、僅かな振動や異変で攪拌されると大量の二酸化炭素が突発的に噴出して大爆発を起こす危険性を包含しているのです。
最初に湖水爆発が起こったのは1984年の小さなマヌーン湖で、この時は地元住民37人が窒息死する惨事が勃発したが、同様の天災がより大きなニオス湖で起こるとは誰も予見できなかったのである。
ところが1986年8月21日、突如ニオス湖の中央で巨大な泡が膨れ上がり大音響とともに湖水爆発が勃発、それに伴って160万トンの二酸化炭素が大気中に放出され、空気より重いCO2は近隣の2つの渓谷に流れこんで原住民コム族の村を襲ったのであります。
■その結果、20km圏内に住む住民1,746人と家畜約3,500頭が窒息死(上写真)した外、約4,000人の住民が呼吸器障害や火傷、麻痺を負うという前代未聞の特異な天災に見舞われたのである。
ちなみに犠牲者の多くは家の内外や道路で穏やかに横たわるようにして死んでいた・・
「まるで生物だけを殺傷する中性子爆弾でも落とされたようだった」そうで、以来湖周辺は危険地帯として現在も住民の居住が禁止されている。
■2001年以降日本のODA(政府開発援助)で湖底の二酸化炭素を強制排出する5本のガス抜きポンプの建設が進行中で、写真はうち完成したガス抜きポンプ1基の様子で、ニオス湖の湖面が赤いのは湖水爆発後鉄分が酸化して赤く染まったのだそうです。
こうした中で現在問題となっているのはニオス湖をせき止めている火山岩の天然ダムの劣化で、天然ダムは湖水の侵食を受けて上部では穴や空洞が出来ており、下部ではすでに水漏れが始まっている。
つまり、かつてニオス湖形成の原因となった地震活動が、今度は湖の外壁を崩壊させる可能性があり、それに伴って大洪水が起こるとより大規模な二酸化炭素爆発が想定され、カメルーンのみならず隣接するナイジェリアにも来襲、被害想定地域に住む犠牲者は5万人を超えると推定されている。
ちゃんちゃん