

ページへ帰りの電車の中で彼からメールが入った。
「やっぱりもう一度会って話をしよう」
帰宅してからすぐに彼に電話をかけて「これはどういうことですか?」と聞くと「もちろんこれからもお付き合いをしたいという意味だよ。メールで分かってくれるかと思った」という返事だった。
結局付き合うことになり、あの条件のことをそれ以上はお互いに蒸し返さなかった。
ただ、私の方に変化があった。
彼がトイレに行っている間に彼の真似をして支払いを済ませるようにしたり、毎回のデートで格好に気遣ったりして、彼の提示した条件に沿った行動をした。
同時に私の中で徐々に彼への得体の知れない恐怖心が芽生え始めていた。
彼と会うたび極度に緊張して食事が喉を通らず、吐き気、めまい、動悸が激しくなるなどの症状が出ていた

付き合うことになってもプラトニックな状態は続き手さえつながなかったので、もしスキンシップがとれるようになればこの症状が治まるかもしれない、と前向きに考えた。
二人の間に何もないうちにお互いの誕生日が近づいてきた。
奇遇にもお互いの誕生日がたった一日違いだったので、同時に誕生日プレゼントを用意した

「サプライズでなければならない」というプレッシャーがのしかかる。
いろいろ考えた末、彼はパソコンで目を酷使する仕事なので目の疲れを癒すグッズと、私が選曲したCDをプレゼントした。
二人が出会ってから今までの気持ちの変化をストーリー仕立てにして曲を並べた。
たとえば、出会いに関する曲を1曲目に、好きになっていく気持ちを表す曲を2~3曲目、相手の気持ちが分からなくて不安になる曲を4~5曲目、お付き合いすることになってハッピーな曲を6曲目以降に、という感じに編集した。
それをCDに焼いてラベルを印刷し、歌詞カードも作成。
デートした日にちがカレンダーで確認できるので、歌詞の上に「○月○日 出逢い」だとか「×月×日 繋がれない淋しい手」などと書いた覚えがある。
手作り感はあるものの、完成品の出来栄えに自己満足。
こんなものを渡されたら彼はどんな反応をするのだろう。
やりすぎじゃないだろうか?
私自身これを渡すことにプレッシャーを感じた。
そこまで彼のことを好きなのだろうか?
嫌われることが恐ろしい一心でサプライズ品を作っているような気がしてならない。
これを渡すことでますます自分自身を追い込むことになるのではないだろうか?
誕生日に切り替わる午前0時に彼からメールが届いた。
「Happy Birthday!マヤちゃんにとっていい年にしてあげるよ^^」
それを見て、息が詰まりそうになった。
この人と一緒にいると私の命は1年ももたないかもしれない

お互いにプレゼントを交換し合うデート当日。
まずは彼からの誕生日プレゼント。
ティファニーのブレスレットだった。
チャームはシルバーでブラックラバーに通してあり、カジュアルテイストだった。
私がいつもデートで着ている服はかわいめの格好なので、正直テイストが合ってなかった。
しかも、サイズが大きすぎてゆるゆるだった。
彼は「ごめんね。女性の店員さんに試しにつけてもらったんだけど、マヤちゃんには大きすぎたね」と反省していた。
私からのプレゼントは最初、目を癒すグッズだけ渡した。
それでも彼は喜んでくれていた。
デートの締めくくりのディナーが終わった後、「実は・・・」と言って私はおもむろに手作りCDを取り出した。
彼は「おお、これはすごい!感動!!」と満面の笑みで喜んでくれた。
でも私はその笑みを見ると、もう後には引き返せなくなったような恐ろしさを感じた。


ページへ面白かったり共感したらぽちっとお願いします


