1989年(平成元年)12月。
街はすっかりクリスマス色になっていた。
まばゆいイルミネーションがデコレーションされ、
多くの恋人たちが手をつなぎ歩く。
このころのクリスマスは今と違い、異常な盛り上がりを見せていた。
イブには赤プリの予約が殺到し、一泊10万円以上になったり、
高額なティファニーのオープンハートをプレゼントしたりと、
バブルを象徴するような景気のいい話ばかりだった。
この年のクリスマスは、何と言っても山下達郎の「クリスマス・イブ」だろう。
テレビやラジオ、有線から洪水のように流れていた。
前年からCM放送が始まり、クリスマスソングとして定着したのはいいんだが、
恋人がいない自分にとっては、とても惨めな気持ちになる曲だった。
何が”きっときみは来ない”だ!何が”ひとりきりのクリスマスイブ”だ!と
歌を聞くたびに卑屈になっていた。
でも今年は違った。
自分にも恋人と呼ぶことができる特別な人ができたからだ。
仕事もメキメキやる気が出てきて、毎日イキイキしていた。
思うに恋愛のはじまりほど、甘美で至福の時はないだろう。
何だろうこのトキメキは?
今まで感じたことのない連続だった。
そのころ僕らは一緒に暮らし始めていた。
僕が初めて彼女の住まいに訪ねた時から、居心地がよくて、
気づけば1日、2日、3日と経過していた。
結局自分のアパートを引き払い彼女の家に転がり込んだ。
商店街をぶらりと歩き、スーパーで買い物をする。
二人で「恋人たちの予感」を観たり、雑貨屋に行ったり、
何気ないひとときに仕合せを感じる。
レンタカーを借りて、横浜までドライブに出かけ、
この年に完成した横浜ベイブリッジを渡ることにした。
その頃、ベイブリッジの真ん中で路肩に車を停車させ、写真を撮ることをみんなやっていた。
ベイブリッジは高速道路だから、道交法違反なんだが、これをやらなきゃ帰れない。
僕らも路肩に停車した。
キラキラ光る大黒埠頭やマリンタワーが遠くに見えた。
その夜景をバックに二人で写真を撮った。
おそらく年齢的にもこれが”最後の青春”の瞬間だっただろう。
するとパトカーがやってきて、注意されその場を去った。
もうじき色々あった’80年代が終わろうとしていた。
1980年 ジョン・レノンがダコタハウスで射殺
1981年 チャールズ皇太子とダイアナが結婚
1982年 フォークランド紛争勃発
1983年 大韓航空機撃墜事件
1984年 ロス五輪開催
1985年 日本航空機墜落事故
1986年 ハレー彗星大接近
1987年 世界の人口が50億突破
1988年 日産・シーマ発売
1989年 昭和から平成へ
いよいよ時代は、’90年代へ、この年に僕らは結婚することになる。
それは僕にとって波乱の始まりだった!
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