布団を頭からかぶり、まどろみかけていた。
正月の早朝、僕は九州の小さな田舎町にいた。
関わっていた番組がちょっと前に終わり、
何もかも嫌になって実家に帰っていた。
上京して4年、どこか限界を感じていた。
このまま田舎町で公務員でもやるのも悪くないと
思い始めていた。
スタスタと小さな足音が聞こえた。
「ヒロさん、起きちょんの?」とばあちゃんの声が聞こえた。
僕は面倒くさく返事をしなかった。
すると、「陛下が亡くなったよ」と言った。
「えっ!」と声を上げ僕は慌てて飛び起きた。
居間にはお袋がいて、食い入るようにテレビを見ていた。
画面からは、昭和天皇崩御を告げるニュースが洪水のように
流れていた。
そして、色紙に書かれた平成の文字が掲げられ、新たな元号の
始まりを告げた。
1989年1月7日午前6時33分。昭和という時代は終焉を迎えた。
思えば太平洋戦争では300万人の国民が犠牲となり、
戦後は焼け野原の中から奇跡の復興を遂げた。
前年、陛下の様態悪化が報じられると自粛ムードが高まり、
パチンコ屋のケバケバしいネオンは消え、プロ野球のビールかけは
中止となりバラエティ番組などもプログラムから消えていた。
国民には重苦しい不安感が広がっていた。
そしてついにその時が来たことになる。
静まり返る皇居周辺、悲しみの表情を浮かべる国民。
テレビはあらゆる方向からその様を報じていた。
その光景を見て何故だか急に東京に戻りたくなった。
「もう一度あの街で勝負したい」そんな思いがひしひしと湧いてきた。
もう少しで24歳になる。ここが勝負所かもしれない。
「帰るよ」とお袋に告げると荷物をまとめ始めた。
僕を乗せた電車は東京に向け走り始めた。
世はバブル絶頂期。
思い返せば僕にとって平成は大波乱の始まりだった。
平成元年にある女性と出会い、その後三度の結婚を
経験することになる。
あのまま田舎にいれば平凡な人生を歩んだことだろう。
だが僕は違う道を選んでしまった。
恐らくどっちにしても後悔しただろう。
自分の人生を大きく変える運命の人との出会いは、
もうすぐそこまできていた。
to be continue