ジャズな去り方 | May1993-2022アーカイブ

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佐山さんのお別れ会があった。
僕はそこには行けなくて
その日の予定に追われた。

一日の終わりに

帰りの電車の中で
先日ソエがレコーディングした「花アリラン」のサンプルを聴きながら帰宅した。

佐山さんが亡くなった真夜中に、自宅で作業をしていたら
突然テレビが点いて驚いた。
そんな夜があった。

旅立たれる数日前に佐山さんとの最後の時間があった。
「帰ります」
と伝えると
「チセちゃんは元気?」
と小さな声でニッコリと微笑まれた。

「元気ですよ。チセが作った演劇部が今度大人たちの大会に選ばれて出場するんです」
と伝えると
「そう」
と嬉しそうだった。
最後まで子どもたちの事を気遣ってくださる事に込み上げそうになった次の瞬間

「それにしても…へリョンはスタイル良かったなぁ…」
と呟かれた。
込み上げたものが一瞬止まると、また

「へリョンはスタイル良かったなぁ…」
としみじみ。
僕は笑ってしまって

そして佐山さんは数日後に旅立たれた。

どれだけの人にどんな言葉と、どんな音を残されたのだろう?
でも僕にとっての最後は

「へリョンはスタイル良かったなぁ…」

だ。

今でも唐突に、もういないんだと思い知って
そして急速に色んな想いが巡り巡って
泣きそうになる。
でもその次の瞬間

「へリョンはスタイル良かったなぁ…」
も込み上げてきて、クスッと笑ってしまう。

佐山さんらしいジャズな去り方だ。

「おい、なに泣いてるんだ?
人生、まんざらでもないよ」

金哲義