これは当時の夢と言うより、今になって思う悔いのようなものなのだが、学生時代、俺は跳びたかった。
俺の身長は177cmである。それだけでは平々凡々なのだが、加えて垂直跳びが70cmを越えていたとなれば話は全く変わってくる。俺の手の到達点はクラスの中でも屈指の高さであった。体育ではバスケにおいてはリバウンド要員、バレーにおいてはブロック要員として非常に重宝されたものだ。
しかし残念ながら、バスケもバレーも俺には向いていなかったであろう。俺は身体能力こそそこそこであったが、運動神経が壊滅的だったのだ。純粋に跳躍力だけで勝負できる競技は何かあるだろうか。思うにそれは走り高跳びである。実際に俺は、中学の県大会の標準記録を1年生の時に跳んでいた。もし俺が陸上部に入り走り高跳びを選んでいたら、県大会、あるいはその先の景色が見えたのではないだろうか。
もっとも何事も、夢想するようには万事が上手くはいかないだろう。努力の果てには必ず限界が訪れる。けれどそれでも、ただ机上で吠えているよりはずっと素敵ではないか。