SF絡みのトピックでお馴染みの議題、「タイムマシンは実現可能か」。しかしこのテーゼを論じる際には「未来への時間移動」と「過去への時間移動」を分けて考える必要がある。なぜなら驚くなかれ、未来への時間移動はとっくに実現しているからだ。
(1)まずは「未来への時間移動」。これは実に簡単だ。皆さんは「ウラシマ効果」というものをご存じだろうか。アインシュタインの「一般相対性理論」によると、高速移動するロケットの中では時間は非常にゆっくりと流れる。例えば僅か2泊3日の亜光速航行をした後に地球に帰還すると、地球ではすでにで数十年の月日が経過しているということが起こり得るのだ。そこは紛れもない未来の地球、時間旅行達成である。また未来へ時間移動しようと思ったら、何も大々的に宇宙に繰り出す必要はない。地球上でも可能な高速移動、例えば日本から航空機に乗って東回りに(地球の自転方向に沿って)世界一周すればいい。そして再び日本に戻って来た時、そこは2500万分の1秒だけ未来の世界だ。
(2)続いて「過去への時間移動」。これが極めて困難だ。多くの人は宇宙船が光速度を突破して超光速航行に入れば時間がさかのぼり出すと考えているが、それは大いなる誤解である。実際は地球を飛び立った高速ロケットと地球との間で「超光速通信」を1往復させれば、ロケット内で送信するより前に返信メッセージが届くことになる。因果律を破り、過去への情報通信成功である。しかしかのアインシュタインは一般相対性理論において「光速度が宇宙最速である」と示している。超光速通信など言語道断だ。
以上より、未来への時間移動はともかく過去への時間移動は現在の理論物理学では到底不可能である。過去への時間移動を現実化する為には既存の物理法則を根底から覆さなくてはならない。何より困難に立ちはだかるのは一般相対性理論だ。人類がニュートン力学を廃すのに丸2世紀を要した。現代最先端の物理学を完全に破棄するには、一体何世紀かかるのだろうか。