本題に入る前に、少々ウンチクを。
一般に天文学者が宇宙と呼んでいるのは、「観測可能な宇宙」である。これは理論上、地球に光が届き得る範囲の宇宙であり、「全宇宙」のごく一部だ。「全宇宙」はあまりにも広大である為、その中で地球に光が届く領域は極めて限られてしまうのである。
さて米天文学誌アストロノミカル・ジャーナルは13日、驚くべき研究発表をした。
我々が住まうこの「観測可能な宇宙」には、実に2兆個もの銀河が存在するというのだ。これは1000億個程度とされてきた従来説の、実に20倍の数である。
俺はあえて言おう、「だからどうした」。
この感想自体は、世の多くの人たちと一致するものであろう。しかしそこに至るまでの思考経緯、世間の人たちは「途方もない数字を並べて遥か宇宙に空想をめぐらすほど、こちとら暇人ではない」と言ったところか。
しかし俺はいささか違う。「所詮は狭い『観測可能な宇宙』内の誤差程度の話。そんな微々たる差異にいちいち驚くほど、俺はウブではない」。
いつからか俺は、「観測可能な宇宙」内の如何なる発見、如何なる天文学的数字にも関心がなくなってしまった。なぜなら「全宇宙」のスケールで見た時、「観測可能な宇宙」など原子1つにも満たないほど矮小だからだ。
「観測可能な宇宙」の大きさは直径930億光年=10の19乗メートル弱。それに対し「全宇宙」の大きさは諸説あるが、米物理学者L.サスキンドが導き出した解によると10の10乗の10乗の122乗メートル。比喩しようにも何物にも例えられぬほどの、とんでもない巨大数だ。
まるで金魚鉢のような「観測可能な宇宙」。
その中で銀河の数が1000億個=10の11乗個だろうが2兆個=10の12乗個強だろうが全く以てどうでもいい。目にし耳にする全て、そのなんと微小たることか。