10代、20代の頃、俺はアホみたいに筋トレをした。
特に運動部や運動サークルに属したことのない俺が、一体なぜ筋トレなどしていたのか。痩せるためか体力をつけるためか、それとも女にモテるためだろうか。
そのどれも違う。俺が筋トレをする理由はただ一つ、ずばりゲーセンのパンチングマシンでハイスコアを出すためだ。
俺はパンチングマシンが強い。友人内においては比類なきほど強い。
以前テレビ番組の企画で、元WBA世界ミドル級王者・竹原慎二がパンチングマシン「ソニックブラストヒーローズ」でスコア223を出していたが、俺は同機種でスコア231を叩き出した。
しかしまきしま現在35歳、もうかれこれ3、4年ほどもパンチングマシンの前に立っていない。
つくづく歳だけは取りたくないものだ。加齢が俺から奪ったもの、それは体力でも腕力でもない、パンチングマシンを打つ機会である。
然るに俺は思うのだ。
例えば35歳の男が一人でボウリングをやっていても、そこに何ら違和感も問題もあるまい。そしてそれは、ダーツやビリヤードについても同様であろう。
ならば問いたい。なぜ三十路男が一人、ゲーセンでパンチングマシンを打っているとイタイのだろうか。