AKB48のシングル総売上が、史上初の4000万枚突破。そしてこちらも前人未踏、シングルのミリオンは26作連続27作目に。俺はアイドルグループの音楽に魅力を感じない。そしてAKBがどのような商法を展開してきたかも知っている。しかしそれでも尚、俺は2010年代を席巻した”AKB48”という社会現象に強い関心を抱いている。なぜなら彼女らは、「凍りついて止まってしまった音楽史」を再び動かしたからだ。
1990年代初頭、それはまるで遅れてやってきたバブル景気のように「ミリオンセラー時代」到来。それまで50万枚を売上げればヒットとされてきたCDシングル市場において、KAN『愛は勝つ』201万枚、小田和正『ラブストーリーは突然に』258万枚、CHAGE AND ASKA『SAY YES』282万枚など次々とメガヒットが誕生。そしてそれはDREAMS COME TRUE、ZARD、GLAY、宇多田ヒカルら超大物アーティストたちによる「音楽日本記録更新戦争」の勃発であった。
しかしその数多のアーティストたちによる日本記録更新合戦は、全てB'zによって終止符を打たれてしまう。B'zはシングル総売上日本記録(当時)、アルバム総売上日本記録、その他ありとあらゆる音楽日本記録を完全に独占。そのシングル・アルバム総売上は実に8000万枚以上、2位のMr.Children、3位の浜崎あゆみ以下に2000万枚以上の大差をつけ、絶対王者として首位に君臨する。その後2000年代に入り、一転「CDセールス氷河期」に突入。日本の音楽チャート史はB'zの圧勝劇を最後に書きとどめ、そのまま時を刻むのをやめてしまった。
◆シングル・アルバム総売上枚数
1位 B'z 8182万枚
2位 Mr.Children 5912万枚
3位 浜崎あゆみ 5056万枚
4位 サザンオールスターズ 4894万枚
5位 AKB48 4515万枚
6位 DREAMS COME TRUE 4356万枚
7位 松任谷由実 3948万枚
8位 GLAY 3853万枚
9位 ZARD 3746万枚
10位 宇多田ヒカル 3622万枚
11位 SMAP 3518万枚
12位 安室奈美恵 3239万枚
13位 CHAGE AND ASKA 3141万枚
14位 嵐 3048万枚
15位 松田聖子 2966万枚
16位 L'Arc-en-Ciel 2927万枚
17位 globe 2893万枚
18位 Kinki Kids 2606万枚
19位 中森明菜 2538万枚
20位 TUBE 2455万枚
「AKBの売り方は反則だ。そしてこんな記録、未来永劫誰も破れるはずがない」、きっと大多数の人がそう感じていることだろう。しかし時代がどんな形に変化しようと、音楽市場が生き物である以上そこに「絶対」はない。AKBのシングル総売上が不滅である保証はどこにもないのだ。なぜなら「こんな記録、誰も破れるはずがない」、それは俺らの世代がB'zに対して抱いた思いだからである。