遠く遠く、地平線の遥か彼方よりも遠くへ。
あの頃僕たちは背伸びをした。
世界はどれほど広いのか。
僕たちの見ているこの景色はどれほど小っぽけなのか。
そしていつしか僕たちは大人になった。
背伸びをしていた子供時代より、遥かに背は高くなった。
けれど、今もまだ分からずにいる。
それで何かが変わったのか。
僕たちの視界は、僕たちが見ているこの世界は、
子供の頃より果たしてどれほど広がったのだろうか。
計算してみた。
ここでは人間の周辺視野を120度とし、
観測者から地平線までの距離を半径とした円に、
120度/360度=1/3
をかけたものを視界の広さと定義する。
今、地球の半径をR、観測者の地面からの視点の高さをT、
観測者から地平線までの距離をLとする。
この時三平方の定理より、
L^2+R^2=(R+T)^2
L^2=T(2R+T)
Lを半径とする円の面積Sは、
S=πL^2=πT(T+2R)
よって視界の広さVは、
V=(1/3)×S=(1/3)×πT(T+2R)
π、Rはそれぞれ定数であり、
TはRに比べ極めて小さいため、
この段階でVはTにほぼ比例することが分かってしまう。
だが一応計算を進めることにする。
π=3.14、地球の半径をR=6000000(m)とする。
子供の視点の高さTc=1(m)とすると、
子供の視界の広さVcは、
Vc=(1/3)×3.14×1×(1+2×6000000)
≒12560001 (m2)
また大人の視点の高さTa=1.7(m)とすると、
大人の視界の広さVaは、
Va=3.14×1.7×(1.7+2×6000000)
≒21352001 (m2)
Va/Vc≒1.7
案の定、大人の視界の広さはほぼ子供との身長比倍、
2倍にも満たないことが分かる。
では子供と大人、それぞれが見渡せる視界の広さは、
果たして東京ドーム何個分なのだろうか。
東京ドームの広さをSd=47000(m2)とすると、
Vc/Sd≒267.23 Va/Sd≒454.29
よって子供の視界の広さはおよそ東京ドーム270個分、
大人の視界の広さは東京ドーム450個分となる。
もっともここ首都圏近郊では、
広々と地平線が見渡せる場所などほとんどないのだが。