『ドラえもん』の主人公はドラえもんか、それとものび太か。
今尚議論のやまないこのテーゼ、しかし実は結論はすでに大昔に出ている。この件について作者の故藤子・F・不二雄氏は生前、「『ドラえもん』の主人公はドラえもんである」と明言しているのだ。けれどそれを聞いて、「はい、そうですか」と納得する人はまずいないだろう。なぜなら『ドラえもん』という作品は、誰がどう見ても間違いなくのび太目線で物語が進行しているからだ。
◆日本を代表する漫画家といえば?
(「gooランキング」より)
1位 手塚治虫 (代表作/鉄腕アトム) 10751票
2位 藤子・F・不二雄 (ドラえもん) 4715票
3位 鳥山明 (ドラゴンボール) 3704票
4位 尾田栄一郎 (ONE PIECE) 2212票
5位 藤子不二雄A (笑ゥせぇるすまん) 833票
6位 井上雄彦 (SLAM DUNK) 610票
7位 松本零士 (宇宙戦艦ヤマト) 517票
8位 あだち充 (タッチ) 506票
9位 青山剛昌 (名探偵コナン) 457票
10位 赤塚不二夫 (天才バカボン) 443票 ※以下略
ではなぜ主人公はドラえもんであって、のび太ではないのか。
恐らくのび太格の「日常世界の平凡な少年」を主人公とした藤子F作品は、『ドラえもん』より以前に例がなかったからであろう。例えば『ウメ星デンカ』、『モジャ公』、『オバケのQ太郎』など、「異世界からの来訪者がごく普通の家庭にやって来てドタバタを繰り広げる」、これが藤子・F・不二雄の王道パターンである。実際に初期の『ドラえもん』の作風もまた、ドラえもんを中心に巻き起こる非日常コメディーであった。 けれど藤子F氏は、のび太というキャラクターにひと際強い思い入れがあったのではないか。 現に氏は、「のび太のモデルは僕自身である」とも語っている。いつしか『ドラえもん』は、「のび太がドラえもんの助けを借りて、日常の中で教訓を得る」という展開へと変遷していった。
言わばドラえもんは、主人公を譲った主人公である。
しかし思うに、それが数多の藤子F作品の中でもとりわけ『ドラえもん』が国民的人気作となった所以ではないだろうか。何でも出来てしまう万能ロボットと、何をやってもドジばかりの少年。読者や視聴者がどちらに自分を重ね感慨にふけるか、言わずもがなであろう。