アニメ映画監督・宮崎駿をどのように評価すべきか。もし俺に問うならば、「鳥山明、尾田栄一郎らの漫画家と同様、日本の漫画・アニメ文化を牽引した作家の一人である」。それ以上でも以下でもない。
少なくとも俺は、宮崎駿監督作品の世界的名声をそのまま鵜呑みにはしていない。むしろその評価は正当なものではないとすら思えてしまう。なぜなら宮崎駿が世界から脚光を浴びたのは97年『もののけ姫』、01年『千と千尋の神隠し』以降の作品であるが、宮崎氏の創作力のピークは84年『風の谷のナウシカ』、86年『天空の城ラピュタ』、88年『となりのトトロ』らであり、これらと比べた時、後年の作品が称賛に値するとは到底思えないからだ。
◆後世に残したい国民的アニメTOP10
(フジ『アニメアカデミー
1億3000万人が選ぶ不朽の名作』より)
1位 サザエさん
2位 ドラえもん
3位 となりのトトロ
4位 まんが日本昔ばなし
5位 ドラゴンボール
6位 ONE PIECE
7位 名探偵コナン
8位 風の谷のナウシカ
9位 鉄腕アトム
10位 アルプスの少女ハイジ
しかし最近になって思い至るに、それは仕方のないことなのかも知れない。ここでマイケル・ジャクソンを例に挙げる。彼の音楽が最も躍動感と飛躍性に満ち溢れていたのは、79年のアルバム『オフ・ザ・ウォール』であろう。けれどその飽くなき探求は、良くも悪くも82年『スリラー』を以て完遂してしまった。そしてその後のアルバム作品、87年『BAD』や91年『デンジャラス』などに至っては完全に輝きを失い、耳に転がし目を向けるべき要素はもはや何一つ残っていない。
一方、彼のアルバム作品に対する世界の評価はどうであろうか。単純に売上枚数で比較するなら、『オフ・ザ・ウォール』は800万枚、『スリラー』は前人未踏の1億1000万枚、『BAD』、『デンジャラス』はそれぞれ3000万枚。あくまで数字上において言うならば、マイケルの世界的脚光は『スリラー』以降の作品に寄せられたと言っていいだろう。
全ての創作家について、創造極点と寄せられる名声にはタイムラグがある。考えてみれば当たり前のことだ。ならば宮崎駿に対する世界的称賛もまた、肯定的に捉え評価すべきなのであろうか。