俺まきしまと言えば、
自称”埼玉では知らぬ者なき腕力王”である。
”腕相撲・友人内最強”
”ゲーセンのパンチングマシン・友人内最強”
腕力系種目・友人内2冠ホルダーだ。
そしてこれはもちろん、誇張表現である。
ヒョロヒョロの文化系からゴリゴリの体育会系まで、
俺の腕相撲の通算勝率は…8割チョイくらいかな。
けど8割とは何とも中途半端、四捨五入して10割で良くね。
という訳で、まきしまはあくまで、
自称”埼玉では知らぬ者なき腕力王”なのである。
ちなみに俺の身長は176cm、体重は69kg。
しかし俺は着痩せ体型なのか、
どうも実際の体重よりはるかに貧弱に見えるらしい。
よってかつて数多の友人たちが、
俺を舐めきって腕相撲を挑んで来た。
「まきしまにだったら絶対に負ける気がしねえ」
…0コンマ3秒、瞬殺で返り討ちだ。
けれど、それももはや昔の話。
周りの友人たちは結婚して子供を持ち、
すっかり牙が抜けて、つまらない大人になっちまいやがった。
今じゃ誰も、俺と腕相撲をしてくれない。
「はいはい、まきしまが強いのはもう分かったから」
「いい歳して力自慢とか、見ててイタイよ」
ぐう…正論というのはどんな打撃よりも殺傷力が高い。
何も言い返せねえ。
だがしかし。
現在俺が友人と呼んでいるヤツラ、
そのうち何人かに、俺は殴られたことがある。
はっ、蚊が刺すほどにも効かんがな。
それに対し、記憶する限り殴り返したことは一度もない。
俺は力比べは大好きだが、暴力は大嫌いなのだ。
という訳で、友人たちに告ぐ。
過去一度でも俺を殴ったヤツ、
今さら殴らせろとは言わない。
加齢にかこつけて良識人ぶってないで、
四の五の言わずに俺に腕相撲でぶっ倒されなさい。