東日本大震災・横浜から埼玉県北に帰る男(その10) | まきしま日記~イルカは空想家~

まきしま日記~イルカは空想家~

ちゃんと自分にお疲れさま。

「ただいま!!」


2日ぶりに見る婆さんの顔。
この言葉を口にする瞬間、
俺はどれほど夢見たことか!


おぼつかない足取り、ふらつく頭で自分の部屋へ。
とにかくテレビを!


官房長官
「この度の福島第一原発の爆発は、
水蒸気爆発による建屋の爆発であります!
これは、
外部に大量に放射性物質を放つものではございません!」


良かった…!
福島はチェルノブイリを免れた…!!
日本は最悪の被爆災害を免れたぞ―――


その後のことはよく覚えていない。
恐らく崩れ落ちるように眠りについたのだろう。


朝、つけっ放しのテレビが俺を起こした。
最初に耳にしたニュースは、
現在、分かっているだけでも1万人、
恐らく数万人の人が、その尊い命を落としたということだ。







今、この日記を、
どれくらいの人が読んでくれているのだろうか?


俺が2日間の帰路、壮絶な道程で感じた、
焦り、疲れ、安堵、喜び…
これらは、生きている証だ。
それが永久に叶わなくなった人たちが、
今この瞬間も、何百人といるのだろう。


ほんの3日前なら、馬鹿馬鹿しいほど当たり前だったこと、
ただ生きているということ、
今気付かされた、このかけがえのない幸運を、
あくまでも謙虚に、どこまでも素直に、
ともに喜び合おうではないか。


今こうして、
あなたたちと繋がっていることに感謝する。