ジョン・ノースバリーが遺した100の言葉 -8ページ目

5月26日 刃物はそれ自体には何の危険もない。ただそれを握った人間によって変化する。

ジョンは半自給自足で生活している。

自分で作れるものはなるべく自分で作り、

自分ではなんともならないものは町のスーパーで調達している。


そのためか、ジョンの家にはボクが見た事ないような刃物類がごろごろ転がっている。

たとえば薪割りの斧。

今まで漫画か映画でしか見た事がなかった。無論触ったこともない。

 『おい、薪、割ってみるか?』

ジョンに促され暖炉に使っている薪を割ってみる事にした。

造作もなくジョンは薪を真っ二つに割るのを見てボクにも簡単にできるだろうと思っていた。


ところが案外うまくいかない。

真っ二つに割れないうえに斧がとても重たかった。

まるで棒の先っちょに百科事典でもつけているみたいだ。

きれいに割れないからかすぐに手が痛くなってきた。

腕も疲れて上がらない。

 『ジョン、もう無理だよ。代わってくれないか。』

ジョンはやれやれといった表情でボクから斧を受け取ろうとした。

その時だった。

握力がなくなったボクの手から斧がするりと滑り落ちる。

その下にはボクの足が。

あっと思った瞬間、ジョンが斧を受け止めてくれた。

危うくボクの足が薪より先に真っ二つになるところだった。

ホッとしてジョンを見ると、手のひらから血が垂れていた。

 『ご、ごめん、ジョン!大丈夫?』
 
 『ちょっと切っただけだ。これくらいいつものことだ。』

そういい残すと手当てをしに家の中に戻っていった。

派手に出血していたがジョンの言うとおり、

傷そのものは浅く、少ししたら出血は収まった。

 『やっぱり刃物は怖いね。ちょっとしたことなのにケガしちゃうもんね。』

ボクはまるで自分のミスでそうなったことを斧のせいにするかのような口ぶりで

ジョンに声をかけた。

それを聞いたジョンは

 『刃物はそれ自体には何の危険もない。
  ただそれを握った人間によって変化する。
  それは人間も同じなんだ。使う人間によって変化する。

と表情変えずに返してきた。

あいつはこうだから扱いにくいとか

あの人はこんな人だからやりにくいとか

そんなことばかり考えていた。

だったらどうしたらいいのかを考えたことなんかなかった。

そんな人たちをさげすむように否定し、

離れたところに身を置くことで逃げてきた。

逃げちゃ駄目だ。

もう逃げたくない。

まずは今一番扱いにくいと思っている人をどうにかすることを考えよう。

ここでの生活にひとつの目標ができた。