ジョン・ノースバリーが遺した100の言葉 -10ページ目

5月24日 『死にたい』と他人に言う人は、それ以上に『生きたい』という気持ちが強い人なのだ。本当

 『車に乗れ。町にいくぞ。』

朝食のあと自分の部屋にこもっていたボクに

ジョンが部屋の扉越しにそう言った。

 『どこへ行くの?ジョン』

ジョンの強制的な態度に強いストレスを感じ、

ふさぎこんでいたボクはとても出かける気にはならなかったが

無視するのもどうかと思いあえてそう尋ねてみた。

 『人に合うんだ。お前のことも相手に言ってある。
  ただし口は一切挟むなよ。』

また勝手にボクの行動を決める。

そんなジョンに閉口しつつ、少し考え、

外出すれば気分も変わるかもしれないと思い、

ジョンに同行しようとベッドから降りた。


支度をして表に出るとすでにジョンは運転席に座っていた。

ボクが乗り込むと黙ってアクセルを踏み込んだ。



町に着くと、一件のカフェの前に車をとめ、

ボクに降りるように指示をする。

 (いちいち言われなくても停まったら降りるのに・・・)

そんなことを考えながらカフェに入っていくジョンの後に続く。

待ち合わせ相手はすでに店内にいたようで

ジョンはカウンターでボクの分まで勝手に注文を済ますとそのテーブルに座った。


相手はボクより少し年上くらい。

痩せ気味でどんより暗い雰囲気の男性だった。

こんなクマ男に待ち合わせ相手が金髪美女なんてあり得ない。

簡単にボクのことを紹介すとすぐに本題を話始めた。

その痩せ男の話を要約するとこうだ。

自分はこの町を出て大都市に働きにいったが、ちっともうまくいかない。

生活もままならくなってきて借金が山のように出来てしまった。

しかも悪い女にだまされて実家の土地まで売らないといけなくなってしまった。

このままじゃあ生きてても仕方がないのでいっそのこと自殺しようと思ってる・・・

そんな感じだった。

昼間っからなんとも陰気くさい話だ。

しかしなんて哀れな人だろう。

ジョンはそんな彼を励ますのかと思っていた。

ところが

 『じゃあ、死にたきゃ死ねよ。
  何も問題の解決にもならねえがな。』

そう言い放つとまだ湯気の立ってるコーヒーもそのままに

席を立って店を出てしまった。

 (え!?)

ボクは予想外の展開に驚きつつ、慌ててジョンの後を追った。

ひとり取り残されて目もうつろな痩せ男の姿が

動き始めた車内から少し見えた。


帰り道、ジョンに

 『さすがに今のはないんじゃない?
  彼はジョンに助けてほしくて相談したんだろ?
  あれで自殺したらジョンのせいだよ。』

憤りを感じたボクは少し強い口調で彼に迫った。

それを聞いたジョンは車を急に減速して路肩に止めて

ボクの目をみながらこう言った。

 『死にたい』と他人に言う人は、それ以上に『生きたい』という気持ちが強い人なんだ。
  本当に死にたい奴は人に話す前に勝手に死んでる。』

ボクの目を見て話したのはこのときが初めてだった。

ジョンは車を再び発進させながら前を向いたままこう言った。

 『今のあいつにはそれがわかっていない。
  昨日の晩、電話でもあいつにそういったんだ。
  あいつをマジで助けるのは、あいつがそれをわかってからだ。』

二人の関係をボクは知らない。

それでも二人の間に何か強い友情があるような気がした。

ジョンはジョンなりに他人のことを考えているということなのか・・・