Hyper Fun & Hobby -6ページ目

太田 俊夫 二重条痕

京都の鞍馬山で火祭りを眺めながら、華僑の張才しは、戦時中、大陸で日本軍に焼き殺されかけた少年時代に思いをはせた。小才のきく彼は、タイに逃れ、豊満なタイ娘スリナーと結ばれる。そこで、謎の男・洪培煙と手を組み、戦後混乱期の日本に乗り込んで巨利を得た。だが張才は、洪こと実は元日本兵の赤座がヘロインにまで手を伸ばし、妻のスリナーとも通じていたと知って、彼の追放を謀る。そのころ、赤座をつけ回していたヤクザが殺され、その死体の首には"二重条痕"が浮き出ていた・・・。


太田 俊夫 千分の一秒殺人事件

漢方薬を扱う「大興」の経営者・宗常光こと谺二郎は、営業の管理職として迎えた男に面接して仰天した。その男・殿村こそ、戦時中、谺を拷問にかけ片目を奪ったうえ、恋人明子まで死に至らしめた元憲兵伍長であったからだ。谺は中国大陸に逃れ、敗戦前後の混乱期に莫大な利益をあげ、華僑になりすましてきこくしたのだった。なにも気付かない殿村に、谺は陰湿な復讐を誓った。ある夜、写真道楽の谺が能登に伝わる御陣乗太鼓の仮面を撮影中、妻の秀英が変死した。死霊の仮面は何を見たか?


太田 俊夫 粉飾企業殺人事件

株式会社トウケンの社長・伊村耕造は、その朝、富士山麓の土地開発の打ち合わせのため、中央高速道路を通り、甲府に向かっていた。トウケンは、旧社名を東洋絹布株式会社と称し、繊維会社して創設された。岳父である先代社長からバトンタッチをうけた伊村は、大阪五綿から発達した総合商社を模倣し、トウケンをみごと総合商社に脱皮発展させることに成功していた。いま彼は「伊村天皇」と社内で畏敬されるワンマン社長だった。車が大月市を過ぎたとき、伊村は、突然、運転手に河口湖に向かうように命じた。予定外のコースである。