こんばんは!
本日11月3日は文化の日です。
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毎年文化の日は文化人らしい(?)ことをしようと思っていますが,
結局何をするでもなく読書をするという普段通りの休日を送りがちです。
さて,そんな文化の日にご紹介する本はこちらです。
町田そのこ先生著,『星を掬う』です!
Amazon.co.jp: 星を掬う (単行本) : 町田 そのこ: 本
○あらすじ ※ 上記サイトより引用
町田そのこ 2021年本屋大賞受賞後第1作目は、すれ違う母と娘の物語。
小学1年の時の夏休み、母と二人で旅をした。
その後、私は、母に捨てられた――。
ラジオ番組の賞金ほしさに、ある夏の思い出を投稿した千鶴。
それを聞いて連絡してきたのは、自分を捨てた母の「娘」だと名乗る恵真だった。
この後、母・聖子と再会し同居することになった千鶴だが、記憶と全く違う母の姿を見ることになって――。
★ ちなみに『星を掬う』特設サイトもあります。以下にリンクを貼ります。
星を掬う|特設ページ|中央公論新社 (chuko.co.jp)
○感想
町田そのこ先生の作品としては,以前『52ヘルツのクジラたち』という書籍を紹介していました。その後も別の書籍を読みたいな,紹介したいなと思いつつ機会に恵まれませんでした…
しかし,今回読破し紹介するに至りました。
本書を読んで何よりも感じたことは,
「様々な社会問題を内包し,それらが簡単に解決するわけではないという現実を突きつけられる作品」
です。もちろん悪い展開が常に描かれているわけではないのですが,全体を通し,すべてを読み切っても上記の感想をもちました。
それは決して悪いということではないです。
「ああ,現実って自分の知らない部分もあるけれど,これと同等かこれ以上の葛藤や困難があるのか」と感じる機会になるという気持ちが芽生えました。(個人の感想ではありますが…)
以下,ややネタバレを含みます。
本書で描かれる社会問題は,DV,若年性認知症,家族による介護の限界とは?,夫婦問題,SNSの問題などなど多々あります。うまく言語化できない部分もありますが,登場人物すべてが何かしらの問題を背景にもっています。(実際の日常でも多かれ少なかれ誰もが問題を抱えているという見方もありますが…)
加害者側(この小説で言うと主人公芳野千鶴の元夫である弥一や千鶴の職場の上司であった岡崎など)においてもこの小説の裏側で何かしらの問題があってそこから人間的に問題を起こしてしまうという構図であると思われます。
こういった問題は安易に解決するわけではなく,当事者たち(被害者側が主ですが)は悩み続けるということに読者は直面します。
引っ越してもいずれ場所を見つけられて襲われるという連鎖が続くということが生々しく描かれています。
その他の問題も決して安易な解決をしていないのが本作だと思います。最終的に解決と言えるのかというものもあったりします。
何よりも読者として苦しさを感じたのは,千鶴の母親聖子の視点で物事が描かれている場面です。聖子がこの物語において若年性認知症を患っているのですが,その心情が描かれている部分を読んだ後に千鶴の視点に戻ったときの聖子の姿を読んでいくのが何とも言えない気持ちになります…
本書で聖子の言葉として
「自分の手でやることを美徳だと思うな。寄り添いあうのを当然だと思うな。ひとにはそれぞれ人生がある。母だろうが、子どもだろうが、侵しちゃいけないところがあるんだ」
というものがあります。この言葉の重みを感じるのは本書に聖子の視点が含まれていることが影響しているのかなと私自身は感じています。
以上の私個人の感想も踏まえてぜひ読んでみてください。おそらくどの登場人物に着目しても興味深く,少し重く感じながら読んでいくことができると思います。
ちなみに,町田そのこ先生の作品『52ヘルツのクジラたち』の読書メモはこちら↓↓↓
最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)/