10月のある日、芸大茶会へ行ってきました!
ちょうど8月に、芸大在籍中の鋳金作家、澤田万里子さんとコラボレーション(記事「旅する茶会御礼」→☆)を終えたところです。今回、芸大茶会に行ったのは、彼女が背中を押してくれたこともその理由の一つです。
東博応挙館の東京美術倶楽部席、石膏室の芸大茶道部席、最後は武者小路千家家元席という順で回りました。
それぞれ違った趣向の茶席で、それぞれ素晴らしかったです。
▲東博の応挙館
ここで特筆したいのは、芸大席です。雲の上に見立てる一面の白はインパクトでした。お道具も全部芸大現役の先生方が特別に作った作品で、芸大ならではの茶席であると所々で感じていました。
藤原信幸のガラス茶碗はシュッとしていて印象に残りました。また、前田宏智の打ち出し花入れもゴージャスで繊細なお仕事でした。あとは澤田さんの師匠に当たる赤沼潔の茶釜が、伝統的な雰囲気でありつつも、革新的な技術を持っていたらしいです。
ここまで芸大工芸科の先生方に興味をそそられたのも、茶席で一生懸命説明してくださった茶道部の学生さんのすがすがしい解説のおかげかと思います。それに立派なお点前も印象に残りました。
同行のA先生は亡くなられた芸大工芸科の先生だった三浦小平二の話しをしてくれました。それで帰ったら三浦さんの作品を調べてみたりして、確かに作品はキュートな絵付けのある独特な青磁でした。
A先生が淡々と三浦さんとのご縁と、その作品を使わせてもらったことを語っている姿もまた、私にとっては面白みのもう一つでした。
日本の茶道は美意識だけではなく、一つ一つの道具の伝承や出自などの歴史的側面の知識も問われています。それは中国茶と随分違います。中国茶の中で、特定な道具(たとえば、宜興壺や建盞)にしかそれを弁別するような知識がなくても差し支えがありません。
しかし、今回芸大茶会に来て思ったのは、美への認識の共通することです。東京美術倶楽部待合の横山大観「月見布袋図」の色合いが柔らかくて綺麗だとか、武者小路千家席の江月宗玩「初祖菩提達磨大師」という横一行の軸が迫力あったとか、脇に百年前の茶の本原本を見れたとか、素人の私もじかにその感動を味わえることができました。歴史的な知識はあってなおさら楽しめると思いますが、十分に色々気付かせてくれた時間でした。
そして、この茶会を経て、芸大工芸科現役の先生方への関心も高まり、私の中で、工芸というものについての全体像もまた、形を変えていくようです。
日本に来て5年目の今は、ますます茶の輪が広がっていくように感じます。


