「まひる野」という歌誌があって、昨年6月、「除名」という連作短歌が掲載されたことを紹介した。歌人である故・窪田空穂(芸術院会員)が1905年、詩歌集として『まひる野』を刊行したが、その息子である窪田章一郎が1946年、若い歌人を集めて創刊主宰した伝統ある短歌雑誌である。

 

 今年の第1号が刊行され、同じ作者が「パルタイの月」と題する連作短歌を投稿している。「パルタイ」とはご存じのように、「党」のドイツ語である。

 

 今回、作者は、「除名」から発展して、「離党」をテーマとしている。「除名」から半年経ち、「パルタイ」との距離が広がっていく様が、哀しくリアルに描かれている。

 

千葉県松戸市在住 大葉清隆

 

パルタイの月とわれの隔たりに白く寂しくビラは積まれる

きみもまた湿って過ごし生きているドアノブに挟みしビラの号外

わが友に病名問われ逡巡し「惚けて居ります」こころ騒立つ

昨夜まで猛り叫びしわれなれど今朝はゆっくり「赤旗」を読む

わが離党 夢だと知りて窓叩く隔離部屋にも訪問を受け

離党にははやすぎるなり亡き父に逢ってはいない枯れ葉落つる夜

円き葉に切れ込み深き同志らの心は違(たが)いモンステラごと

猶猶と精進せよとわれに問う一人じゃ届かぬ怒りも届かぬ

 

 「除名」も再掲しておこう。

 

新聞に除名を告げる決議見てわが精神は統合失う

天守から駆けおりてくる建てまえに我はたかだか従いしのみ

同志らは攻撃だよと言うけれど痴呆がすすむ我には掴めず

頭痛来て抗鬱剤に依存してしばらく我は胡麻化し生きる

わがごとき下で支えしとういんの足は弱れどビラ配るのみ

暮れてゆく党本部へとまっすぐに 人は黙して逆走をせり

靴ひもをむすべぬ我はサンダルで夜明けの街に新聞配る

ごきぶりを素手で掴める娘でもお化けは怖い除名も怖い