千葉県松戸市在住 大葉清隆

 

新聞に除名を告げる決議見てわが精神は統合失う

天守から駆けおりてくる建てまえに我はたかだか従いしのみ

同志らは攻撃だよと言うけれど痴呆がすすむ我には掴めず

頭痛来て抗鬱剤に依存してしばらく我は胡麻化し生きる

わがごとき下で支えしとういんの足は弱れどビラ配るのみ

暮れてゆく党本部へとまっすぐに 人は黙して逆走をせり

靴ひもをむすべぬ我はサンダルで夜明けの街に新聞配る

ごきぶりを素手で掴める娘でもお化けは怖い除名も怖い

 

 この連作短歌「除名」は歌誌「まひる野」の6月号に掲載されている(特集のタイトルは奇しくも「結社の魅力」)。歌人である故・窪田空穂(芸術院会員)が1905年、詩歌集として『まひる野』を刊行したが、その息子である窪田章一郎が1946年、若い歌人を集めて創刊主宰した伝統ある短歌雑誌である。

 

 8中総で決まった「反共反撃」が党員に何をもたらしているのかが象徴的に示されている。除名をきっかけに開始された反撃は、100年の歴史と27万の党員を擁する強大な「革命党」が、私一人をつぶす目的で行われているものだが、党員一人ひとりの心にも癒やしがたい傷を与えているようだ。

 

 作者は精神障害に陥っているようだ。それでも毎日の「赤旗」を配り続けている。靴ひもを結べないほどの精神状態なのだろう。だからサンダルで配達するのだ。除名が心に刻みつけた恐怖はお化けと同じように怖い。しかし党本部が「逆走」していると認識はしている。

 

 そうだよね。半世紀の党員人生のなかで、批判とか自己批判とかの世界で生きてきた私のような人間だって、半年もの間、「赤旗」で名前をさらされて批判を受けてきたこと、それが今後も続く方針が示されたことへの痛みは計り知れない。毎日27万人からハラスメントを受けているようなものだ。

 

 ましてや、党というのはやさしくて思いやりにあふれた人間の集団だと思って生きてきた党員にとっては、突然の「革命党」への転身は思いも寄らぬ出来事であったろう。「革命党」まらば反革命集団をつぶさなければならないのだから。自分も、除名された党員に対する攻撃に加わらなければならない。

 

 そんなことを党員に強いる8中総って、どうなんですか。