連日、この問題がニュースとなり、議論されている。この問題で一言。

 

 私の立場は、先日「徴用工問題の解決を困難に陥れる輸出規制」というタイトルで書いた通り、日本側が何らかの対抗措置をとること自体は否定しないが、その措置は徴用工問題の解決に直接につながるような措置であるべきだというものである。徴用工とは性格の異なる戦略物資の輸出規制なんかをやってしまうと、いったい争っている問題は何だったっけということになりかねないからだ。

 実際、当初、日本政府は、「徴用工問題で信頼が失われたので」ということを、輸出規制発動の理由にしていた。しかし現在、「徴用工問題と関係ない」と強調している。実際、「関係ある」ということになると、「なぜ関係ないことで報復しているのか」ということになり、輸出規制も支持されなくなるし、その結果、徴用工問題での日本政府の立場も弱まってしまうのである。

 

 じゃあ、お前の考える「直接につながるような措置」とは何かと問われれば、頭に浮かぶのはこういうことである。日本企業が求められている賠償というのは、現行の条約・協定の枠組みの範囲でいうと、すでに支払い済みのものである。だから、求められたものは韓国政府が支払うべきものだとして、韓国側に外交協議を求めるべきだろうと思う。

 

 韓国はそれでは不満だろう。だから、その外交協議のなかで、日本側が支払うべきだとするなら、その根拠を明示し、議論をつくすべきである。こうやって、とにかく徴用工問題で外交協議を開始すべきなのだ。

 

 ところが韓国側は、日本側が外交協議を申し入れても、仲裁裁判問題で協議を申し入れても、ずっとゼロ回答であった。現在、韓国側は日本企業が賠償金を支払えば協議に応じると言っているようだが、賠償金を支払えば、もうそれで問題は終わってしまうので、協議の必要性自体がなくなってしまうのであって、無意味な発言である。

 

 日本企業が支払うべきものかどうかで日韓間に争いがあるのだから、その問題で堂々と協議に応じるべきなのだ。日韓条約と請求権協定に植民地支配を認めていない誤りがあるから、日本側が賠償に応じられるよう、条約と協定を改定したいというなら、その場で粛々と提起すべきだ。

 

 それにしても、この問題で一番びっくりしたのは、日本側はもう3年も前から、韓国側の対応に安全保障上の問題があるとして、協議を申し入れていたという外務省の情報である。つまり、徴用工問題をきっかけに輸出規制に踏み切ったとしても、もともと韓国に対して不信感を抱いていたということだ。

 

 日韓の信頼関係がそこまで揺らいでいるというなら、いつまで現在のようなみせかけの凖同盟関係を維持するのかという問題にもなってくる。それほどの問題なのだから、安全保障上の問題はあるが関係を考慮して明らかにしないというのでは済まされない。可能な限り公開して、日韓関係をどうするのかをもっと基本的なところまで議論していくべきだろうと考える。

 

 韓国の防衛に日本が関与しなくていいということになったら、在日米軍も国連軍の存在も見直しの対象になってくるわけで、非常に重要なことだと思う。もしかして日本政府は、それがイヤで、情報を出さないのではなかろうか。国の在り方にかかわる問題なのだから、そういうことではいけない。