これはダメでしょととっさに思った。解決すべき問題の性格を踏まえないやり方だからである。

 

 韓国側が二国間交渉にも応じないし、仲裁の手続も無視するなかで、日本側が黙っていられないのは理解できる。何らかの措置は必要だろう。しかし、その措置は、争っている問題の性格に沿って、何が問題で、どう解決すべきなのかが、両国民にわかるようなものにすべきだと思う。

 

 争われているのは、70数年前までの植民地支配と結びついた徴用工の悲惨な労働に対して、当時、徴用工を働かせていた企業が、現在、賠償すべきかどうかである。日本側がそれを問題にして何らかの措置をとるというなら、それがどう問題なのかわかるようなものでなければならない。

 

 ところが、日本側の措置というのは、賠償を求められている製鉄会社等の利益を守るようなものではない。徴用工とは何の関係もない半導体を材料にして、韓国に不利益をもたらそうとするものだ。半導体を輸入する韓国企業を困らせ、輸出する日本の企業も困らせるが、いったい徴用工とどんな関係があるのかと、みんなわけがわからなくなってしまう。

 

 要するに、相手を困らせればいいというもので、問題を解決しようというものではないということだ。日本国内では通用しても、外交交渉としては最悪。

 

 しかも、安全保障上の問題がない国として韓国の指定を外すという。貿易立国の日本として安易にルール変更はできないけれど、安全保障を持ち出すと、通常の経済ルールを変更しやすいという動機なんでしょう。

 

 けれど、これって、もう北朝鮮の核・ミサイル問題では、韓国を協調の相手にしないということだ。北朝鮮はそれほどの脅威ではないと政府が認めているようなもので、それはそれでいいけれど、日本外交の基調に反することであっても、「韓国憎し」という感情問題を優先させるということで、困ったことである。

 

 たとえ企業が被告になっていても、二国間の問題は外交交渉で解決するのが基本である。訴訟沙汰になっている企業を前面に立てて、その企業が求められる負担をどうやって二国間で交渉して解決するのか。そこにつながる措置でないと、ただ泥沼に陥るだけだろう。