厚年の始まりである昭和17年6月から今の年金の形になるまでの流れと、明日20時の有料版ご案内。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんばんは!
年金アドバイザーのhirokiです。

本日の記事は今夜の有料メルマガの概要を書くつもりだったのですが、知っておいて欲しいところだったのでやや端折ってはいますが年金の形の移り変わりについてです。

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では本日4月3日20時の有料メルマガご案内。
・事例と仕組みから学ぶ公的年金講座(月額770円税込み毎週水曜日20時にメルマガ発行)
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本日4月3日の第340号.「目立たないけど歴史の変化の中で生まれた経過的加算と障害特例の事例」


※(やや通常記事に近い概要)

年金を支払う際の内訳は、国民年金からの老齢基礎年金と厚生年金や共済からの老齢厚生年金の2階建て年金が基本となっています。


1階部分は20歳から60歳までの年金加入期間に応じた国民年金を支払い、2階部分は過去の報酬に比例した年金である厚生年金を支払います

例えば20歳から60歳前月までの間に、国民年金に3年間と厚生年金に27年加入したとします。
残り10年は国民年金未納だった場合に貰える年金は国民年金からの老齢基礎年金を30年分受給して、27年分の老齢厚生年金を受給します。
未納の期間は何も年金には反映しません。


あれ?ほとんど厚生年金なのに、どうして国民年金も27年分貰えるの?と思われたかもしれませんが、20歳から60歳前月までの480ヶ月間はどんな職業の人であれ国民年金に加入しているからです。

厚生年金に加入している人は国民年金にも同時に加入している事になります。


という事は厚生年金保険料と別に国民年金保険料を支払っているのかというとそうではなく、厚生年金保険料から将来の国民年金(基礎年金)の財源も支払われていますので別途、国民年金保険料を納める必要はありません。


厚生年金に加入していない人は、個別に国民年金保険料を支払う必要があります。



ところで、年金の形は昔からそうだったのでしょうか。


上記のようになったのは昭和61年4月1日からの新年金制度が始まってからです。

今から約38年前の時にまず国民年金を誰もが65歳になれば受給して、その上に報酬に比例した老齢厚生年金を支払うという形になりました。


ではその前は一体どのような形だったのでしょうか。

簡単に振り返ってみます。
長文を避けるため込み入った解説は今回は割愛。




まず厚生年金が始まった昭和17年6月。


ちょうど大東亜戦争真っ只中ですね。

戦争真っ只中に厚生年金ができてますが、当時の名称は労働者年金保険法というものでした。
老後や死亡、障害を負っても年金で保障する事で国民の士気を上げるためでもありました。


最初は肉体労働の男子で10人以上働いてる会社しか加入する事ができず、20年加入すれば平均給与(平均標準報酬月額の事)の3ヶ月分を年金として支給するよっていう報酬比例部分の年金1本のみでした。




次に昭和19年10月になると改正があり、厚生年金と名称が変更になります。

この時に女子や事務職で働く人も厚生年金の適用になったので、女子の厚生年金記録を見る時は昭和19年10月以降となります。

女子も工場で働くように動員されるようになったので(14歳から25歳の独身女性。女子挺身隊という)、彼女たちも年金に加入させる必要が出てきました。


厚生年金は20年加入したら、将来は平均給与の4ヶ月分を支給するというふうに保障が少し手厚くなりました。

しかしながら加入期間が20年なのでまだ厚生年金受給者自体は存在していませんでした。


また、女子は徴用期間が1年とか2年であり、また、今後就職して20年を満たせる可能性が非常に低かったので脱退手当金というものを貰いやすくしていました。


今では考えられない事ですが、今まで支払ってきた保険料を返してあげる制度ですね。
年金を貰う可能性が低いなら支払ってきた保険料を返してもらう。


労働者年金保険法の時は3年加入してないと脱退手当金を貰えませんでしたが、昭和19年10月に厚生年金に改正してからは6ヶ月加入したら脱退手当金を貰える事にしました。


そして、昭和20年8月に敗戦するわけですが、敗戦以降の猛烈なインフレで年金積立金の価値は無くなってしまい、厚生年金はほぼ壊滅状態となりました。
現在は年金積立金を主な財源にはしていないので積立金が消滅しようが年金は消滅しない。毎年支払われる保険料をその年の年金受給者に送る賦課方式で支払っている)


まだもちろん老齢の年金を受給できてる人は存在しません。
20年以上は加入する必要があるからですね。



次に昭和29年5月。

しばらくは障害年金や遺族年金が数千件ほどあった程度でしたが、昭和29年5月に厚生年金を再建させるための大改正が行われました。


この大改正前までは、年金の形はまだ報酬に比例する年金1本の形でしたが、この改正以降は2階建てに変更されます。


厚生年金は報酬比例部分の年金1本だけでなく、加入期間に比例した年金である定額部分という年金が導入されます


よって厚生年金をもらう際は「報酬比例部分+定額部分」の2階建となりました。


報酬比例のみの年金から加入比例の年金を導入したのは、一つには報酬比例部分のみだと単純に収入が高い人は高い年金を得て、収入が低かった人は低い年金になります。

そうすると現役時代の格差がそのまま年金格差でも同じ状況になり、また当時は厚生年金に10%の税金が投入されていたので高い年金を得る人ほどより多くの税金が使われてしまう事になりました。


そのため、定額部分という加入期間が同じなら同じ年金になる(当時は20年で月額2000円)を支給する事で、最低でもこのくらいの年金を受給させる目的で、当時の農村部の生活保護基準をもとに月額2000円となりました


加入に比例した年金である定額部分と報酬比例部分とを組み合わせる事により、単純に報酬比例部分の年金のみの場合よりも年金の格差が縮まる事になりました。


例えば保険料を4払った人は4の年金がもらえて、1払った人は1の年金がもらえます。
差はもちろん4倍の差があるので、年金も4倍の差になります。

しかし、加入期間に比例する年金を組み込むとどちらも例えば2の定額部分が払われた場合は、前者は6で後者は3となり年金の差は2倍に縮まりました。

このように定額の年金を組み込むと格差が縮まるので、単純には支払った保険料ほどの差は生じないようになりました。



今度は昭和36年4月1日。

この年はお馴染みですが、国民年金制度が始まった年ですね。
厳密には昭和34年4月から始まりましたが、それはちょっと性質が違うので保険料を払うようになった昭和36年4月1日からのを覚えておけばいいです。


ここから国民年金が始まったのですが、この時の国民年金は主に厚年や共済に加入できていない農家の人や5人未満の零細企業、自営業の人などを対象にしたものでした。
国民年金は何の年金の保障がない人のために創設されたものでした

よって、細かい制度は抜きにしてザックリ言うとサラリーマンが加入する厚生年金、公務員が加入する共済年金、その他自営業者などの人が加入する国民年金が存在しました。


厚年は最低20年、共済は最低20年、国民年金は最低25年加入する事が必要でした。
それぞれの制度は独立していました。


ところが年金制度が独立しているがために問題がありました。
もし厚年を例えば10年くらい加入して退職して、国民年金に渡ると今度は国民年金で25年加入する必要が出てきます。


厚年は20年満たしてないから年金はもらえないですよね。
10年分は掛け捨て。

新たに国民年金独自で25年を積み重ねていかないといけません。


それだと年金が貰えずに掛け捨てという事態になりかねないので、国民年金ができた時にそれぞれの独立した制度の期間を合わせて25年以上あれば加入した分の年金くらいは貰えるようにしようよ!という事にしました。


つまりさっきの厚年10年加入してるなら、国年はあと15年加入すれば25年になって受給期間を満たして厚年は10年分、国年は15年分の年金がもらえるというふうにですね。

これを通算年金といいます。


形としては独立した制度が初めて手を繋いだ時でもありました(昭和29年に厚年と船員保険が期間通算という事例はありますが)


この時から加入した分の年金はもらえるようになったので、年金が非常にもらいやすくなりました。



そして、昭和61年4月の年金大改正に飛びますが、それまでの年金の形をまとめます。

・厚生年金→「報酬比例部分+定額部分」
・国民年金は国民年金。
・共済組合→原則は報酬比例部分のみ。ただし「報酬比例部分+定額部分」の厚生年金の計算式によるものを昭和48年に導入。

共済は2つのうちどちらかで計算したほうで多い方を支給。


というそれぞれの形がありました。


ところが昭和61年4月からは20歳から60歳までの人はどんな業種の人であれ国民年金の被保険者となりまして、将来は65歳になったら誰もが国民年金から加入比例の老齢基礎年金を貰うようにするという事になりました。

よって、みんなが国民年金の被保険者になったので、わざわざ各年金制度の期間を繋ぎ合わせるという必要がなくなり、期間通算する通算年金は廃止されました。


この時に被保険者が次のようになりました。

・厚年や共済加入者→国民年金第2号被保険者
・国年のみの人→国民年金第1号被保険者
・国民年金第2号被保険者の扶養に入っている人→国民年金第3号被保険者


退職して自営業になっても、その後にサラリーマンの扶養に入っても結局は国民年金の被保険者として国民年金の被保険者期間を積み重ねるからですね。


ちなみにそうなる前に加入比例の年金を支給していたところがありますよね。

そう。
厚生年金や共済年金の定額部分というところです。

みんな国民年金の被保険者になった事だし、この定額部分を昭和61年4月以降は廃止して、同じように加入期間に比例した年金を支給する国民年金にすり替える事にしました。


全員が国民年金の被保険者になって、65歳になったら加入期間に比例した老齢基礎年金を受給するのであれば、定額部分の役目は終了してしまいました。


よって昭和61年4月1日からは年金の形が次のようになりました

・厚生年金と共済年金→「報酬比例部分(老齢厚生年金や退職共済年金)+老齢基礎年金」
・国民年金→老齢基礎年金

どの職業だった人もまずは国民年金から老齢基礎年金を貰いましょうねという事になったのですね。


ところがです。


定額部分を国民年金にすり替えたのはいいんですが、ここで年金額の問題が生じてしまいました。

差が生じてしまって、定額部分よりも低い年金になってしまったのです。


じゃあどうするかってところで、差額加算(経過的加算)と呼ばれる加算が出てくるわけです。


よって今夜20時の有料メルマガは別視点から差額加算までの経緯と、年金計算事例を考えていきます。

なお、今現在新規で年金請求にて定額部分が発生する人がいないので、障害等級3級以上の人や厚年期間44年以上の人であれば定額部分が発生するため、障害者特例を使っての年金計算の流れを見ていきます。

今夜はややボリュームが多いですが、重要な部分であります。
差額加算ってとても少ない金額ですが、多くの人が苦手にするところだからですね^^;


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(内容)
1.年金加入期間を元に計算する仕組みの始まり。
2.加入期間に比例した年金である定額部分の終わり。
3.障害者特例までの事例。
4.65歳からの年金。

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本日4月3日の第340号.「目立たないけど歴史の変化の中で生まれた経過的加算と障害特例の事例」


(以降の予定記事)

4月10日の第341号.「
第341号.小さい子供がいる時に死亡したら配偶者と子の生活が心配!だけど国民年金が威力を発揮する」

4月17日の第342号.低年金者向けに支給される場合がある給付金と、保険料を多く支払った人より年金額が多くならないようにする仕組み。

4月24日の第343号.国民年金保険料の前納の性質と、年金記録を数える時の誤算。

5月1日の第344号.数ヶ月ほど行方不明の後に遺体発見したものの、死亡日がいつなのか不明の場合の遺族年金の取り扱い。

5月8日の第345号.1日生まれの人の年金と、年金請求が月末か1日かで1ヶ月分変わる場合。

5月15日の第346号.加給年金は配偶者が65歳になったら消滅してしまうはずなのに、なぜこの夫婦にはずーっと付きっぱなしなのか(重要!)

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4月7日日曜日「Vol41.保険を超えた制度を可能にした国民年金保険料免除が作られた理由と、その役割と仕組み」


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