こんばんは!
年金アドバイザーのhirokiです。
本日、厚生労働省のHPが更新されて令和6年度の年金額が発表されました。
それ見たら2.7%増だったので、あれ!?って思って金額を書き直しました。
大変申し訳ございませんでした💦
まあ、数値が確定するまではブログだけにとりあえず書いておいて、メルマガには発行してはいなかったんですけどね^^;
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1.令和6年度の年金額は2.7%上昇。
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令和6年度の物価変動率が3.2%、賃金変動率が3.1%引き上がる事になりました。
それに対して高齢化による年金の負担増加や、少子化による現役世代の減少を数値化したマクロ経済スライド0.4%という事なので、年金額は賃金変動率3.1%からマクロ0.4%引いた2.7%増加となります。
老齢基礎年金満額でいえば、今は795,000円(68歳以上の人は792,600円)となっておりますが、令和6年度は816,000円(月額68000円)。
68歳以上の人は813,700円(月額67,808円)となります。
年金額の100円未満は四捨五入し、月額は一円未満切り捨てて切り捨てた分は2月支払い期にまとめて支払います。
年金年額が約2万円増額となっていますね。
どういう計算なのかというと、老齢基礎年金の場合は平成16年の額である780,900円を基準とします。
令和5年度はこの時は物価が2.5%上昇で、賃金が2.8%上昇、マクロが0.6%だったので物価変動率は1.9%(1.019)上昇とし、賃金変動率は2.2%(1.022)上昇となりました。
780,900円×改定率(令和4年度改定率0.996×令和5年度賃金変動率1.022=令和5年度改定率1.018)=794,956円≒795,000円(100円未満四捨五入)となっていました。
なお、68歳以上の人は物価変動率を原則使う事が平成12年改正の時に決まっていて、780,900円×(令和4年度改定率0.996×物価変動率1.019=1.015)=792,613円≒792,600円となっていました。
改定率というのは物価や賃金変動率を加味した部分です。
で、令和6年度は新しい物価や賃金が発表されたので、それを用いて新しい年金額を算出します。
・令和6年度老齢基礎年金満額(67歳までの人)→平成16年度基礎年金基準額780,900円×(令和5年度改定率1.018×賃金変動率1.027=1.045)=816,040円≒816,000円
なお、68歳以上の人は本当は物価変動率を使いますが、賃金上昇より物価上昇の方が大きい時は賃金変動率を使います。
物価を使うのは主に年金受給者の人ですが、その年金というのは現役世代の賃金から一定率を控除した保険料から支払います。
支え手である現役世代の賃金上昇の力を超えてしまうと、年金財政としては苦しくなりますよね。
例えば60キロの人が30キロの人をおんぶしていて、おんぶされてる人が35キロになったら苦しくなります。
よって、68歳以上の人は780,900円×(令和5年度改定率1.015×賃金変動率1.027=1.042)=813,697円≒813,700円となります。
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2.基礎年金額は過去最高水準であり、年金額や給与が上がると経済的にも活発化するかも?
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さて、僕がその金額を見て思ったのは、これは老齢基礎年金の満額では過去最高水準だった事です。
今まで過去の老齢基礎年金の最高額は平成12年度から平成14年度までの804,200円が最高だったから、それを超えたなあとちょっとビックリでした。
マクロ経済スライドで実際の経済の伸びより抑えられるから、実質としては年金の伸びは目減りしていると言われますが、そんな事は多くの人はそこまで気にしません。
何が大事かというと金額が上がる事です。
それにより人々の消費活動に意欲が出て、経済の回復に向かう可能性があるからです。
給料とかもそうですが、幾らかでも上がっていくと気分が良いから「ちょっといろいろ買い物しようかな」っていう欲が出てくると思います。
消費が活発になってくると会社はモノやサービスが売れるから利益が上がります。
需要が増えてくると物価が上昇してきますが、モノが高く売れるので会社の利益が上がるから社員の賃金も徐々に上昇してきます。
そのように利益が上がると社員への給料も上がり、給料が上がるとその社員がまたいろいろとモノを買おうとします。
そうする事で経済が活発になってきます。
デフレの時はその逆が起こっていました。
不景気で会社は利益が少ないから社員への給料は上げないか、下げ気味になってきます。
給料が少ないとモノを買おうとする事を抑えます。
そうするとモノが売れないから、会社は商品の値段を下げて買ってもらおうとします。
モノの値段が下がると利益が少ないから薄利多売するしかないんですが、利益が少なければ社員の給料も上がらないか少ない。
給料が低くて人々はモノが買えないから、会社はさらに商品の値段を下げる…この繰り返しだったからなかなか給与は上がりませんでした。
ただし、そのようなデフレというのは給料は上がらないけども、モノの値段が下がっていくので、貨幣の価値としては上がってるんですよ。
例えば1万円持ってて、1000円のモノを買っていたのが500円の半額になれば貨幣価値は2倍になります。
1万円が2万円の価値に上がるという事です。
デフレは貨幣価値が上がるから、給料が上がらなくても買えるものは増えるんですが、人間というのは貨幣価値とか考えないですよね。
僕もそんなに考えないですが、やはり目に見えないところというのはなかなかわからないものです。
貨幣価値は上がってるんだよっていっても、「ああー…給料上がらないからモノは買わないでおこう…」となるはずです(笑)
ところが、賃金が上がり始めると変化が目に見えますよね。
給料や年金が増えると、「お!金額が増えてる!」という感じになって気分が良くなります。
しかしながら、この時に賃金の伸びよりも物価の伸びが大きいと貨幣の価値は下がります。
例えば1万円が12000円に増えましたが、モノの値段が1000円から1500円にアップしました。
そうすると、1000円のものがそれまでは1万円で10個買えていたものが、8個しか買えなくなりました(12000円÷1500円=8個)。
つまり買えるモノが減ったから貨幣価値は下がっています。
ところが人間は給料などが増えると気分が良くなるから、「ちょっと何か良いモノでも買おうかな!」というような非合理的な行動に移りやすいものです。
物価が上がって買えるものが少なくなったから買うのを抑えようというのが合理的な行動ですが、給料が上がってくると気分が良くなって消費活動に移ってくるんですね。
人間は必ずしも合理的な行動をしない。
よって、最初の年金の話に戻りますが、確かに物価上昇に負けてるし、マクロ経済スライドにより年金の価値は目減りしてるでしょう。
しかし、目に見えて収入が上がるというのは人間の心を上向きにさせる働きがあるので、消費を促進してくるのではないかと思います。
もちろん経済というのはどんなプロの人でも完全に予測する事はできませんし、僕みたいなただの年金アドバイザーであれば尚更ですね^^;
ですが、年金が上がったけど実質は目減り…と毎回聞くたびに、多くの人はあまり実感はないのではないでしょうか。
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3.厚生年金も上がるのか。
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次に厚生年金は上がるのかというと、これももちろん上がります。
基礎年金とは計算が違うので物価や賃金を反映させる部分が違います。
厚生年金は過去の給与記録を使って計算します。
その過去の給与に物価や賃金の伸びを反映させて、現在の貨幣価値に直します。
これを賃金の再評価と言います。
これは何かというと、過去の給与って今の貨幣価値と同じではないですよね。
今の1万円の価値は昔の1万円とは違います。
例えば昭和30年代でいえば月給与なんて2〜3万円くらいでした。
それで1ヶ月の給料としては生活できましたが、令和6年現在に月給与2〜3万円もらっても困りますよね(笑)
過去の給与がその程度だったからって、その金額のままで年金計算したらとんでもない少ない年金になりますよね。
あれから年々の賃金上昇率により貨幣価値も変動するわけであり、昭和30年代であればその2〜3万円に再評価率13くらいを掛けると26万円とか39万円になります。
よって、年金計算する時は過去の給与を再評価した額で計算して、現在に相応しい年金額を支給します。
※再評価率(日本年金機構)←これは見方は難しいので参考程度に見てください^^;
では令和6年度はどうなるのかというと例えば昭和50年度の給与で計算してみましょう。
昭和50年に給与が15万円だったとします。
昭和50年度の再評価率は大体2.0くらいですが、そうすると15万円×2.0=30万円で今の年金を計算します。
実際は給与(標準報酬月額)は過去の全体の平均を使います。
例えば1ヶ月で計算すると(15万円×再評価率2.0)×7.125÷1000×1ヶ月=2,138円の年金額になります。
では令和6年は年金額は2.7%上がる事になりましたが、この値を再評価率2.0に掛けます。
そうすると再評価率2.0×1.027=2.054になりますので、これを15万円にかけると308,100円になります。
その額で厚生年金を計算します。
そうすると(15万円×再評価率2.054)×7.125÷1000×1ヶ月=2195円となって、賃金上昇率2.7%が反映されています。
というわけで、令和6年度からの年金額やその他諸々の給付も引き上げという事になります。
※追記
マクロ経済スライドとは何か。
過去にも何度も書いてはきてるんですが短めに説明すると、年金額の価値を引き下げる値です。
平成16年改正前は年金は現役男子平均賃金の60%台の給付をするというのが目標でしたが、平成16年改正で50%以上という事になりました。
昔はその60%台の給付をするために、5年ごとの年金再計算で必要な保険料を決めていましたが、それだと少子高齢化の中では一体どこまで保険料負担が必要なのか不安になってきますよね。
以前は、将来は約38%の厚生年金保険料が必要になるという試算がされた事がありました(昭和60年改正前)。
だから平成16年改正によりその保険料負担の上限を厚生年金は18.3%、国民年金保険料は17000円×改定率という事に決めてしまいました。
保険料という収入の上限により、年金が現役男子平均賃金の50%水準のものになったので、60%台から50%まで下げていかないといけませんよね。
そのため、年金水準を下げていかないといけないんですが、単純に下げていくとどうしても反発が強くて大変です。
今回の記事に書いたように目に見えて金額に変化があると心理的な影響が非常に大きいのです。
そこで年金は物価や賃金の連動する特徴があるので、それらが上がった時にその伸びを抑制する事で、年金価値を60%台から徐々に50%へと引き下げていく事になりました。
ただ、引き下げていくんだというだけだと「けしからん!」って誤解されそうなんですが、マクロ経済スライドは非常に重要な役割があります。
それは今の若い人の将来の年金水準を高めるためであります。
え?下げてるのに、将来上がる?と疑問に思われたかもですね。
まず、平成16年改正時に保険料収入を固定したわけですよね。
そうすると将来入ってくる収入の合計(イメージとしては面積)は概ね決まってしまったわけです。
今の人が受ける年金と将来の人が受ける年金の総額をどう分配するかを考えた時に、今の年金受給者の人の年金受給を抑制すると将来の人の年金の取り分が多くなるんですね。
これは例えると、1つの餅がありましたとします。
その餅を50%ずつ分ければそれぞれ同じだけ食べれますが、今の人が70%食べちゃったら将来の人は30%を食べるしかありません。
しかし、今の人が70%ではなく55%くらいで抑えとこうかなってすれば、将来の人は45%食べる事ができます。
まさにそういう事が行われるために、マクロ経済スライドという年金抑制が行われているのであります。