厚生年金額を計算する際に用いる平均標準報酬月額と平均標準報酬額とは。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

おはようございます!
年金アドバイザーのhirokiです。


まず3月15日20時に発行した有料メルマガご案内と次回。

3月15日に発行したのは第285号.約40年前に発生した厚生年金からの遺族年金を貰ってる人と今の制度の人が全く別物の理由。

次回は3月22日の第286号.共済と厚年期間がある人で平成27年10月以前に65歳になった人とは貰う年金が違う事例。

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3月15日の第285号.約40年前に発生した厚生年金からの遺族年金を貰ってる人と今の制度の人が全く別物の理由。

1.世間では、年金は保険であるという認識が低い。
2.昭和61年3月31日までに配偶者が死亡。
3.最初の事例の旧遺族年金と、現在の遺族厚生年金の比較(話を手短にするため障害厚年受給者の死亡から遺族年金発生)。
という内容でお送りしました。

3月中に発行済みの以下のメルマガは登録後に即座にメルマガが送信されます

3月1日の第283号.海外居住中や60歳から65歳までの年金に加入していない時の障害年金事例はやや特殊。

3月8日の第284号.年金積立金の現在の役割と進行する高齢化への対応、そして年金積立金の重要な歴史。

3月15日の第285号.約40年前に発生した厚生年金からの遺族年金を貰ってる人と今の制度の人が全く別物の理由。



では本題です。
今回の内容はちょっと最近書いたばかり?ですが、最アップします。

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1.厚生年金保険料率は平成29年9月に18.3%で上限を迎えた。
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厚生年金保険料率は毎年9月にアップしますが、平成29年9月に18.3%を上限に固定されました。


これは平成16年改正で決められました。

平成16年改正までは大体、夫婦2人の年金月額が現役男子の給与額に対して60%台を支払うという考え方に立ち、
その年金給付を行うために必要な財源(保険料)を決めるというやり方でした。


バブル崩壊する平成3年になるまではとりあえず経済は成長し続けたから、賃金も物価も上がるしそれは成り立っていたんです。



しかし、このやり方だと高齢者は今後も増えていくし、少子化で現役世代が減っていく中では当時はマズイ状態になる事が問題になっていったんですね。
従来の、給付水準を保つために保険料を引き上げ続けるというやり方を続けていたならもう年金制度は厳しかったかもしれません。



さて、現在の制度の根本となった昭和60年改正は上がりすぎた給付を大幅に引き下げ(適正化という)、将来世代の保険料負担も大幅に軽減させた改正でした。


だけどそれでも少子高齢化は予想を上回り毎回コロコロ変わる保険料負担に国民の不信感は深まる中で、従来からのまず年金給付ありきなやり方から、平成16年改正の時に180度変えて入ってくる収入(保険料)の上限を決めて、その収入の中で年金給付をやりくりする方向に変えたんです。


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2.給与から天引きする厚生年金保険料額はいつから変化するのか。
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厚生年金は平成29年9月で上限を迎えましたが平成27年10月からの被用者年金一元化により公務員は平成30年9月で18.3%、私立学校共済組合は令和9年4月から18.3%に統一。


厚生年金保険料は事業主と社員で折半するのでそれぞれ9.15%ずつ支払っています。


だから会社も年金保険料アップには敏感なのです。

会社も従業員と同じ保険料額を負担しなければならないので、保険料を引き上げようという改正をしようとすると毎度のように経済界からの抵抗にあいました。

資本主義の中では収益を減らす要因である社会保険料の負担などは邪魔ものですからね(笑)


ただ、会社は労働者をひたすら働かせて収益を追求しますが、定年というシステムを作って高齢(もしくは病気や怪我等)になって働けなくなるとポイっと捨て去って、他の労働者を雇えばいいだけですから非情な世界とも言えます。

そんな資本主義の欠点を補うのが社会保障の役割です。


社会保障が無ければ、そのような弱者は自己責任として切り捨ててられますし、それを放置しておけば社会は不安定化し、資本家や政治家も今の安泰の地位は脅かされる事になるでしょう。

革命により倒されるという昔ながらの恐怖が再現される恐れもあります。


そうならないためにも、彼ら労働者の生活を保障するために、社会保険料という身代金のようなものを会社も社会に差し出す事が必要といえます。


さて、話を戻しますが保険料率がアップするって事は徴収される保険料も高くはなりますが、4月5月6月に貰う給与額が大きく影響します。


4月5月6月の給与が高かった人はその年の9月分の保険料から翌年8月までの厚生年金保険料も高くなり、給与が低かった人は支払う保険料が下がります。


なぜかというと、この3ヶ月の給与(事務的には「報酬」と呼んでる)の平均を出して、その金額を標準報酬月額という金額に当てはめて、その標準報酬月額に翌年8月まで保険料率を掛けて徴収していくからです。

だから高い厚生年金保険料取られたくないなら、4月5月6月はあんまり稼がないようにしないといけないですね(笑)


ただ、保険料を高く納めた人は将来の年金は高くなるし、保険料が低かった人は将来の年金も低くなります。


今の時点の現金を残すために保険料を安くする方向を喜ぶか、高い保険料を払う事になっても将来を見据えた年金にするか…の選択ですね。


※参考
報酬に該当するものは、基本給だけでなく、残業手当、通勤手当、住宅手当、家族手当、扶養手当、役付手当、賞与(年4回以上のもの)等々、労働の対象として受けるもの全てをいいます。
食事とか社宅、寮みたいな現物給付も報酬に入ったりします。

だから、単純に給与明細に記載されてる給与額が報酬と符合するというわけではないので注意が必要です。
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仮に報酬が4月275,000円、5月310,000円、6月287,000円だったら、平均値は872,000円÷3=290,666円。
290,666円を下のリンクの標準報酬月額表に当てはめると標準報酬月額は300,000円になります。


・標準報酬月額表(日本年金機構)

これを定時決定といいます(算定ともいう)。
他にも細かい条件や、標準報酬月額の変更パターンがありますが、この記事では割愛します。


7月1日から7月10日までに従業員の報酬を計算して算定基礎届っていうのを年金事務所に出さないといけないから、算定の時期は総務の人等はかなり繁忙期です。


で、4月5月6月の給与により9月から新たな標準報酬月額になるから、上記の例でいえば300,000円に9.15%を掛けて27,450円を向こう一年間の給与まで天引きします。



なお、標準報酬月額には上限があって、どんなに高くても65万円が限度(年によって変わる時がある)。
下限は88,000円。


また、原則として当月の保険料は翌月の給与から天引きされます。
だから、10月の給与から徴収される保険料が変わってきます。


ちなみに賞与は支払われる度に、厚生年金保険料率と同じ率分を掛けて徴収されます(平成15年4月から賞与からも保険料を徴収して年金額に反映させるようにしました)。

なぜ、賞与からも保険料を取るようにしたのかというと、それまで取っていなかった時までは会社が社会保険料の負担をできるだけ下げたいから給与は安くして、その代わりに賞与をドカーンと払うというやり方で社会保険料の負担逃れという事が出来たからです。


さて、賞与は単に支払われた賞与に保険料率を掛けるのではなく、例えば12月に賞与1,250,300円が支払われたら、1,000円未満を切り捨てた額(標準賞与額という)の1,250,000円に9.15%を掛けて114,375円の保険料が徴収されます。

また、どんなに高い賞与を貰っても一回の支払いにつき150万円が標準賞与額の限度。

例えば夏のボーナスで500万賞与が支払われても、上限の150万に厚生年金保険料率掛けて徴収されます。


※補足
業務の性質上によっては4月5月6月が他の月に比べて著しく変動する仕事もあります。
この3ヶ月は年度初めの月群だから、業務の性質上でこの月群だけ非常に給与変動がどうしても激しくなる事があります。

そういう場合は前年7月から今年6月(1年間)までの月平均報酬額と、さっきの原則の3ヶ月の平均報酬額との差が2等級以上の差があったら前者の1年間の平均を標準報酬月額として用います。


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3.年の途中で大きく給与水準が上下してそれが3ヶ月続いたら…
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次に、定時決定をやると翌年8月までの厚生年金保険料額は一定になりますが、その間給与に割と大きな変動があると随時に標準報酬月額を変更します。


昇給とか降給とかで「固定的賃金」に変動があり、変動があった月から3ヶ月の間に支払われた報酬(残業手当等の固定的ではない賃金も含む)の平均が、従来の標準報酬月額よりも2段階(2等級)以上の差が出来たら標準報酬月額を変更します。

随時改定とか月変(げっぺん)ともいいます。


例えば、上の定時決定で使った報酬に比べて令和4年12月に321,600円、令和5年1月に344,500円、令和5年2月に342,000円になり、どの月も17日以上は働いてる(この17日以上も条件)って事で平均すると336,033円になります。


そして下のリンクの標準報酬月額表に当てはめると標準報酬月額が従来の300,000円から2等級高い標準報酬月額340,000円になりました。

・標準報酬月額表(日本年金機構)


だから、令和5年3月から(変動月から4ヶ月目に変更する)は標準報酬月額が340,000円になってこれに厚生年金保険料率を掛けて保険料徴収します。
340,000円×9.15%=31,110円に保険料がアップしてしまいました。


この標準報酬月額とか標準賞与額というのが将来貰う厚生年金額に影響してきます。


だから、標準報酬月額や標準賞与額が高い人ほど保険料も多く徴収はされますが、将来の厚生年金額も多く受け取れるわけです。


毎回年金記事には単に「給与」とか「賞与」というふうに簡易に書いてますが、本来は標準報酬月額とか標準賞与額を指してますのでこの機会に覚えていてほしいと思います!


※追記
随時改定は1~6月に改定があるとその年の8月まで適用し、7~12月の間に改定があると翌年8月まで適用します。
また、年の途中で厚生年金に加入すると資格取得時決定といって、1~5月に新しく厚生年金に加入したりするとその年の8月まで適用し、6~12月の間に取得すると来年8月まで標準報酬月額を適用します。


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4.老齢厚生年金の計算。
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という事でここまでは標準報酬月額とか標準賞与額、そして実際厚生年金の計算に使う平均標準報酬月額や平均標準報酬額についてお話ししました。

今回はそれを使って1つ老齢厚生年金を計算してみましょう!


1.昭和33年7月15日生まれの女性(令和5年中に65歳になる人)。

・1度マスターしてしまうと便利!(令和5年版リニューアル)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法。
https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12780334941.html

・絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方(令和5年版リニューアル)。
https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12782489170.html

20歳になる昭和53年7月から昭和56年3月までの33ヶ月は昼間学生で国民年金保険料を納める義務はありませんでしたが納めませんでした。
この期間はカラ期間。


昭和56年4月から平成10年3月までの204ヶ月は国家公務員共済組合。
この間の平均標準報酬月額は35万円とします。

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※注意
この平均標準報酬月額という部分は過去の給与(標準報酬月額)をぜーんぶ足して、それを加入月数で割ったものです。
これを老齢厚生年金額計算に使います。
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平成10年4月から平成16年8月までの77ヶ月は配偶者の扶養となり国民年金第3号被保険者となりました。


平成16年9月から平成27年3月までの127ヶ月は民間企業にて厚生年金に加入。
この間の平均標準報酬額は28万円とします。

平成27年4月から60歳前月である平成30年6月までの39ヶ月は国民年金保険料未納。


さて、いくらの老齢厚生年金と老齢基礎年金が貰えるのでしょうか?


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まず、65歳前から老齢厚生年金を貰うためには年金保険料納付済期間+免除期間+カラ期間≧10年を満たし、かつ、1年以上の厚生年金期間または共済組合期間、もしくは共済と厚生年金期間合わせて1年以上を満たす必要があります。



1年以上無い人は65歳からの支給となりますが、この女性は厚年と共済合わせて331ヶ月もあるから問題無いですね^^


また、女性は共済組合からの老齢厚生年金と日本年金機構からの老齢厚生年金の支給開始年齢が違います。

女性の共済組合からの老齢厚生年金は、男性の厚生年金の支給開始年齢と同じ。


・厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)

共済組合からは63歳から老齢厚生年金が支給され、厚生年金からは61歳から老齢厚生年金が支給されます。

だからまず61歳から厚生年金からの支給ですね。


日本年金機構からの老齢厚生年金→平均標準報酬額28万円(再評価済み)÷1000×5.481×127ヶ月=194,904円(月額16,242円)


そして63歳からは国家公務員共済組合連合会からの支給も請求により始まります。


国家公務員共済組合連合会からの老齢厚生年金→平均標準報酬月額35万円(再評価済み)÷1000×7.125×204ヶ月=508,725円(月額42,393円)


また、共済組合は旧職域加算の年金がある(平成27年9月までの期間なので注意)。

旧職域加算→35万円÷1000×0.713×204ヶ月=50,908円


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※注意1
0.713という給付乗率は7.125の約10%を表す。
もし、共済組合期間が20年以上あれば0.713ではなく1.425だった。
1.425は7.125の20%を表す。

※注意2
平均標準報酬月額の横にカッコ書きで(再評価済み)と書いていますよね。
これは何かというと、過去の給与記録って変化するんですよ。

年金って実際に受給するまで40年とかかかったりしますよね。
その間に給与の貨幣価値って変化したりします。

例えば昭和40年代とかなら数万円で月の生活をしてたのでしょうが、今は数万円じゃ暮らすのは困難です。
更にその昔の数万円だった頃の標準報酬月額で年金計算したら物凄く金額が低くなりますよね。

お金の価値って常に変化しますし、年金を計算する時は過去から現在までに上がった貨幣価値に直して(再評価する)、現在の水準に見合う年金額を計算します。
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よって61歳から日本年金機構から老齢厚生年金(報酬比例部分)194,904円。

63歳からは共済組合からの老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給も始まり、63歳時点の年金総額は日本年金機構からの老齢厚生年金194,904円+国家公務員共済組合連合会からの老齢厚生年金508,725円+旧職域加算50,908円=754,537円(月額62,878円)


65歳になると、今度は国民年金からの老齢基礎年金の支給も始まります。


老齢基礎年金は20歳から60歳までの年金加入期間で計算します。

20歳から60歳までの間に厚年は331ヶ月、カラ期間33ヶ月、未納39ヶ月、第3号期間77ヶ月。


・老齢基礎年金満額795,000円(令和5年度67歳到達年度までの人)÷480ヶ月×408ヶ月=675,750円


よって、65歳からは国家公務員共済組合連合会からの老齢厚生年金(報酬比例部分)508,725円+旧職域加算50,908円+日本年金機構からの老齢厚生年金194,904円+日本年金機構から老齢基礎年金675,750円=1,430,287円(月額119,190円)となります。


※追記
年金請求書は日本年金機構からは61歳誕生月の3ヶ月前に送られてきて、国家公務員共済組合連合会からは63歳誕生月の3ヶ月前から送られてきてそれぞれの誕生日の前日以降に請求可能となる。


ちなみに65歳前から発生する老齢厚生年金は、特別支給の老齢厚生年金と呼ばれる(記事では老齢厚生年金と略して書いてますが)。


また、65歳前からの特別支給の老齢厚生年金が貰えている人は65歳誕生月の初旬あたりにハガキタイプの年金請求書が送られてくる。


なぜまた65歳になったら年金請求しなければならないかというと、65歳前の年金は特別支給だから本来の老齢厚生年金と老齢基礎年金を請求する為に再度請求しなければならない。


この65歳時のハガキタイプの請求書を誕生月末までに出さないと年金が差し止まってしまう。

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※4月12日の有料メルマガ第290号で何で特別なのかという事とどうして厚年期間が1年以上必要なのかという事について、「60歳から65歳まで貰う老齢厚生年金は何が特別なのかという点と、それに至った最重要過程」という事で年金の歴史から解説します。

昭和36年4月の国民年金の始まりから関係します。


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まぐまぐ大賞2020・2021・2022受賞。
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※まぐまぐ大賞2022の語学資格部門1位と知識教養部門3位を受賞させていただきました。
本当にありがとうございました!(7年連続受賞)

・まぐまぐ大賞2022(語学資格部門1位)
・まぐまぐ大賞2022(知識教養部門3位)