みんな共通して受給する年金の要である老齢基礎年金を計算してみよう! | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんにちは!
年金アドバイザーのhirokiです。
 
今日も基礎的な記事を書いていきます。
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2月8日の第280号. 年金の価値を維持するための年金額変更の歴史と、65歳前後の違い(2)

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前回2月1日に第279号.年金の価値を維持するための年金額変更の歴史と、65歳前後の違い(1)を発行しました。

その続きとして、2月8日の第280号. 年金の価値を維持するための年金額変更の歴史と、65歳前後の違い(2)

(内容)
4.平成12年改正からは年金額抑制のために65歳前後で使われる賃金の数値などが異なる事になった。

5.平成16年改正で保険料の上限を決めて、その固定された収入の中で年金額を支払う事になった。

6.65歳前の人は賃金の変動率を使い、65歳以上の人は物価の変動率を使う事で何が起こるのか。

7.実際は67歳到達年度まで賃金の伸びを使う。

という点でお送りします。
非常に重要な点なので2月1日に発行した第279号からお読みくださる事をオススメします。
月の途中で登録されてもその月に既に発行した記事は全て読めます。
 
 
では本題です。
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1.昭和61年4月以降はどんな職業の人であろうと国民年金の被保険者となった。
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この間は国民年金の被保険者が3種類ある事を書きました。
 
 
今回はその被保険者期間を使って将来65歳になったら貰う事になる国民年金(老齢基礎年金)の計算をします。
 
 
老齢基礎年金は全ての人が共通して65歳から貰う事になる給付です。
 
 
 
これは昭和61年4月からはみんなが国民年金の被保険者になり、65歳からみんな平等に国民年金(老齢基礎年金)を貰いましょうという事になりました。
 
その上で厚生年金に加入してる人は上乗せで厚生年金が支給されたりします。
 
昭和61年3月31日までの制度は、国民年金、厚生年金、共済年金と独立した年金制度でありました。
国民年金だけなら25年以上は加入してください、厚生年金だけなら20年、共済年金だけなら20年以上は加入してくださいというのが原則でした。
 
しかし、もし退職などでそれまで10年程加入した厚生年金から脱退し、自営業として国民年金に移った時に「では、あなたは国民年金に加入したのでこれから25年以上加入してください。そしたら国民年金を支払います」という制度でした。
 
過去に加入した厚生年金は20年以上の期間がある事が原則としては最低条件だったので、10年しかないこの人は厚生年金を貰う事が出来ないという事になっていました。
 
 
このように、制度が変わった時に、それぞれの加入期間を単独で満たす必要があるという欠陥があったわけです。
 
 
しかし、昭和36年4月に国民年金が出来た時に、全ての人が何らかの年金が保障される事を目指しました。
これを国民皆年金と言いますが、この時に上記のような欠陥を改善しました。
 
 
どういう事かというと、さっきの厚年10年の人は国民年金に15年加入して全体で25年以上になれば、年金を貰う権利を満たして、加入した分の年金を支給しますよっていう通算制度が出来ました。
 
厚年と共済を合わせる場合は、両者合わせて20年以上あればそれぞれ加入した期間分は年金を出しますよっていう事になりました。
 
 
昭和36年4月に国民年金が本格的に始まってからこのような大きな改善がなされたわけです。
 
 
その後、昭和50年代になってくるとこのように年金制度がバラバラである事が問題となってきました。
特に共済は相対的に給付水準が高く、しかも15年でもらえたり、割愛しますがその他諸々の有利な条件があったわけです。
 
そのため、年金制度毎の不公平が顕在化し、多くの反発がまき起こりました。
 
更に、共済の中でも国鉄共済組合の年金が危機に陥っていました。
 
 
色々な共済組合があると、それぞれ独自の年金をやる事が出来ますが、産業によっては将来は斜陽化してくる事がよくあります。
まさに、国鉄は斜陽化して保険料を支払う人よりも受給する人がほぼ2倍になったのです。
 
国鉄と言えば、戦後の政策により職を失った人を大量雇用しましたが、昭和40年代になるとその人たちが一斉に退職期に入り、更に自動車産業が大人気となって車社会となっていきました。
国鉄はもろにその影響を受けたのです。
 
※どうして国鉄共済組合は危機に陥り、厚生年金に統合された歴史(有料メルマガバックナンバー)

https://www.mag2.com/archives/0001680886/2020/6



ちょっと脱線しましたが、このように年金制度がバラバラだといろいろ問題が多いので、統一できるところは統一しようとし、共通した年金として国民年金をすべての人に適用しようという事になりました。

 

サラリーマンは公務員として厚生年金、公務員は共済組合から共済年金と支給されますが、そういう人達も国民年金に強制加入させて、国民年金の被保険者とし、共通部分として国民年金からは老齢基礎年金を貰う形という事になりました。
 

これが昭和61年4月の基礎年金導入と、全ての人が国民年金の被保険者となった大改正でした。
 
 
どんな職業であれみんな国民年金の被保険者だから、退職して自営業になろうが公務員になろうが何だろうが、国民年金の被保険者に変わりない。
で、将来はその国民年金の加入期間が25年以上になったら老齢基礎年金を出しますねという事になりました。
サラリーマンとか公務員の人はその上に給料に比例した年金である老齢厚生年金を上乗せで支給しましょうと。
 
 
みんなが国民年金の被保険者になった事により、昔みたいにわざわざ年金制度が手を繋いで期間を繋ぎ合わせて…みたいな通算の意味が無くなり、昭和61年4月以降は通算するという法律は廃止されました。
 
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2.老齢基礎年金は原則として20歳から60歳までの年金期間のみを年金計算に使う。
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さて、話は戻りますが国民年金は20歳になると60歳までどんな職業であれ、国民年金に強制加入となり、途中で加入しないという事はできません。
 
 
老齢基礎年金は令和5年度現在は20歳から60歳までの480ヶ月間完璧に保険料を納めたら、満額の795,000円(67歳到達年度までの人)が支給されます。
68歳年度到達以降の人は792,600円。
 
なんで、67歳到達年度までの人(新規裁定者という)と68歳到達年度以降の人(既裁定者という)で金額が違うのかというと、新規裁定者は賃金の変動率を使い、既裁定者は物価変動率を使う事を原則としているからです。
 
令和5年度は賃金を2.2%、物価を1.9%としてそのズレが出たので年金にもそのズレが出ています。
 
本当は65歳前後で年金を異なるものにしたいのですが、簡単に言うと賃金の情報が2年遅れでやってくるのでそれが完全に外れるまで3年かかるため67歳までは賃金の情報を使う事になっています。
 
 
話を戻しますが、20歳から60歳の間に完璧に年金保険料を納めた場合は上記の老齢基礎年金の満額が受け取れます。
ただし、未納をしたりしてしまって480ヵ月に足りない場合は60歳から65歳までの60ヶ月間の間で任意で国民年金に加入する事が出来ます。
 
 
20歳になると誰もが国民年金に加入する事になりますが、国民年金の被保険者は国民年金第1号被保険者、国民年金第2号被保険者、国民年金第3号被保険者の3通りあります。
 
 
つい最近お話しした事ではありますが、被保険者期間が何ヵ月あるかどうかで将来の老齢基礎年金額も変化してきます。
 
 
この被保険者期間を使って、今回は簡単に国民年金からの給付である老齢基礎年金を計算してみましょう。
 
 
国民年金の老齢基礎年金は厚生年金のように過去の給与額は関係なく、加入期間に比例して増加する年金です。
 
最高480ヵ月(40年)の期間があれば、67歳到達年度までの人なら満額の795,000円(月額66,250円)が支給される。
 
 
なお、老齢の年金を貰う場合は最低でも10年以上(平成29年8月以降は25年ではなく10年に短縮された)の保険料納付期間(または免除期間等)が無いと1円も年金を貰う資格が無いので注意しましょう。
 
 
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3.老齢基礎年金の計算。
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〇.昭和33年9月13日生まれの女性(令和5年中に65歳になる人)


18歳年度末の翌月である昭和52年4月から昭和57年9月までの66ヶ月間は厚生年金に加入する(昭和61年3月以前の厚生年金期間は国民年金第2号被保険者期間だったとみなす)。
 
 
なお、国民年金強制加入となる20歳になるのは昭和53年9月からなので、昭和53年9月から昭和57年9月までの49ヶ月間が将来の老齢基礎年金の額に影響する。
 
 
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※参考
「みなす」って事は、国民年金第2号被保険者だったという事にするという事。
なぜ昭和61年3月までの期間は「みなす」のか。
 
国民年金第何とか被保険者という概念は昭和61年3月までは存在しておらず、国民年金加入者は国民年金の被保険者としてたし、厚生年金加入者は厚生年金の被保険者として別物でした(記事冒頭でお話ししたような形ですね)。
 
それが昭和61年4月からは新しく全ての人が将来は国民年金を共通の年金として老齢基礎年金を貰うようにしたから、すべての人が国民年金の被保険者になったので、新しい年金制度に合わせるために過去の期間を新しい制度の扱いに統一するために、「みなし」ています。
 
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この女性は20歳未満で年金に加入してますが、厚生年金は20歳前から加入する事が出来ます。
 
 
ただし20歳未満の厚生年金期間は老齢基礎年金には反映しない事に注意。
 
 
 
退職して昭和57年10月からは国民年金に加入しますが、昭和61年12月までの51ヶ月間は未納にする(昭和61年3月までの国民年金加入期間は国民年金第1号被保険者期間だったとみなし、昭和61年4月以降の期間は国民年金第1号被保険者期間)。
 
 
 
昭和62年1月から平成5年7月までの79ヶ月間は国民年金保険料を納めました(国民年金第1号被保険者)。
 
 
平成5年8月からは公務員の男性と婚姻し、パートをやりながら国民年金第3号被保険者となって平成16年2月までの127ヶ月間は国民年金保険料を納めなくても納めたものとしてカウントされました。
 
 
平成16年3月から平成20年6月までの52ヶ月間は国民年金保険料全額免除。
平成20年7月から平成24年6月までの48ヶ月間は国民年金保険料納付。
 
平成24年7月から、60歳に到達する平成30年9月の前月である平成30年8月までの74ヶ月間が国民年金保険料の4分の3免除とします。
 
 
この女性の老齢基礎金額はいくらになりますか。
 
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それではこの女性が貰う65歳からの老齢基礎年金額を計算してみましょう。
 
 
 
まず、20歳から60歳までの期間をまとめます。
 
 
ア.未納期間→51ヶ月
 
イ.国民年金第1号被保険者として保険料納付→79ヶ月+48ヶ月=127ヶ月
 
ウ.国民年金第2号被保険者期間(厚年期間)→49ヶ月
 
エ.国民年金第1号被保険者として全額免除(平成21年3月以前の期間)→52ヶ月(基礎年金の3分の1に反映)
 
オ.国民年金第1号被保険者として4分の3免除(平成21年4月以降の期間)→74ヶ月(基礎年金の8分の5に反映)
 
カ.国民年金第3号被保険者期間→127ヶ月間
 
他に20歳前にも厚年期間17ヶ月有りますが、これは基礎年金には反映しません。
 
よって、老齢基礎年金額に使う期間は未納やカラ期間を除く429ヶ月。
 
 
 
20歳未満や60歳以降の厚年期間(国民年金第2号被保険者)を基礎年金に反映させないのは、国民年金第1号被保険者や国民年金第3号被保険者は20歳から60歳までしか加入できないのに、20歳未満や60歳以降の期間も加入できる国民年金第2号被保険者の期間を老齢基礎年金に反映させるよっていう事になると、1号の人や3号の人に対して不公平な事になるため。
 
 
よって、被保険者ごとに公平を保つために、あくまで20歳から60歳までの国民年金強制加入の期間を老齢基礎年金額に反映させましょうという事にしています。
 
 
ちなみに、この女性は60歳時点で429ヶ月であり、480ヶ月の上限に足りないので上限に足りない51ヶ月間は60歳から65歳の間で任意で国民年金に加入できる例外があります。
 
とりあえず、平成30年9月から令和3年2月までの30ヶ月任意加入したとします。
 
 
任意加入した場合は国民年金第1号被保険者期間として扱う。
 
 
 
よって、この女性の65歳からの老齢基礎年金額は795,000円(令和5年度満額)÷480ヶ月間(分母)×(1号納付127ヶ月+3号127ヶ月+厚年49ヶ月+任意加入30ヶ月+全額免除52ヶ月÷3+4分の3免除74ヶ月÷8×5)=795,000円÷480ヶ月×396.583ヶ月(小数点3位未満四捨五入)=656,841円(1円未満四捨五入)
 
年金は偶数月に前2ヶ月分支払うので、656,841円÷6=109,473円(1円未満切り捨て)
 
(他に振替加算という加算もありますがこの記事では省いて進めます)
 
 
この老齢基礎年金を支給した上で、厚生年金などの過去の給与に比例した年金を支給します。
 
 
また、令和元年10月から消費税が10%に上がった事に伴い、年金生活者支援給付金も支給されています。
 
 
年金生活者支援給付金は年金収入(遺族年金や障害年金などの非課税年金は除く)+前年所得≦778700円(令和基準額毎年10月に変更する)である等のいくつかの条件がある。
 
 
もしこの女性が老齢基礎年金しかなかったなら656,841円<778,700円なので年金生活者支援給付金が支給される。
 
 
 
・年金生活者支援給付金→5,140円(令和5年度基準額)÷480ヶ月×(127ヶ月+127ヶ月+49ヶ月+30ヶ月)=3,566円(年額42,792円)となる。
 
・年金生活者支援給付金(免除部分)→11,041円(免除基準額)÷480ヶ月×(52ヶ月+74ヶ月)=2,898円(年額34,776円)
 
 
というわけで、老齢基礎年金は大原則として20歳から60歳までの被保険者期間で計算するという事を押さえておきましょう。
 
 
※追記
60歳から65歳までの任意加入は厚生年金加入中は不可。
 
あと、4分の3免除はなぜ8分の5に反映なのか。
平成21年4月以降は国庫負担が基礎年金の2分の1なので、国が2分の1+自分自身の保険料2分の1=1となって基礎年金額を作る。
 
自分の保険料2分の1を4分の3免除という事は4分の1しか払わないという事だから、自分の保険料2分の1×4分の1=8分の1となる。
8分の1+国の国庫負担2分の1=8分の5という事ですね。
 
 
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2月1日の第279号.年金の価値を維持するための年金額変更の歴史と、65歳前後の違い(1)

2月8日の第280号. 年金の価値を維持するための年金額変更の歴史と、65歳前後の違い(2)


2月15日の第281号. 障害厚生年金2級と3級の65歳以上で悪化した場合の取り扱いの大きな違いと計算事例。

2月22日の第282号.妻と別れて厚生年金記録を分割してもらったが、再婚後の遺族厚生年金にはどう影響するのか。

3月1日の第283号.海外居住中や60歳から65歳までの年金に加入していない時の障害年金事例はやや特殊。

3月8日の第284号.年金積立金の現在の役割と進行する高齢化への対応、そして年金積立金の重要な歴史。

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