物価による年金額の変動と少子高齢化に伴う年金額の抑制(少し基礎年金事例あり) | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんにちは!

年金アドバイザーのhirokiです。
 
 
・まぐまぐ大賞2021語学資格部門2位と知識ノウハウ部門3位のダブルで頂きました(6年連続受賞)
本当にありがとうございました。
https://www.mag2.com/events/mag2year/2021

 

公的年金ですべての人が将来は受給する事になるのが、国民年金から支給される老齢基礎年金です。

国民年金は20歳になると強制加入となり、60歳前月までの480ヶ月間加入して保険料を支払う義務が課されています。
(厚生年金は20歳前から加入可能であり、最大70歳まで加入できる)

とはいえ40年もの期間なので、途中に保険料が支払えるのが困難になる事もあります。
失業とか病気、災害などですね。

そのような時は保険料を支払うどころではないので、申請により国民年金保険料を免除してもらう事が出来ます。

上記のような人生の一大事ではなくても一定の所得以下の場合は、免除の申請をする事で保険料を免除する事が出来ます。

免除は市役所や年金事務所で申請する必要があります。


なお、免除にするという事はそれだけ保険料を支払っていない事になるので、将来貰う老齢基礎年金額が低下する事にはなります。

少しでも老後資金を増やすためにも、免除した期間は後で保険料を追納する事が出来るので、追納して年金を増やしておく事をおススメします。


追納は過去10年以内の免除期間において可能です。



さて、20歳から60歳前月まで完璧に国民年金保険料を納めたらいくらの年金になるのかというと、令和4年度満額は777,800円です。
基礎年金の額は昭和60年改正の時に高齢者の生活費を総合的に勘案して60万円と決められましたが、それ以降の物価の変動を繰り返しながら現在の777,800円となっています。

この金額は前年の物価や賃金の変動で毎年金額が変動します。

基本的には公的年金は物価や賃金の伸びで金額が変動します。

今年はロシアのウクライナ侵略のせいで世界的な物価の高騰になっているため、生活を直撃しています。


物価に変動するのであれば早く年金も変動してほしい!と思ってしまうかもしれませんが、前年の物価や賃金の変動率を用いて翌年度の年金を変更するので今すぐ反映しない事になります。


来年発表される今年の変動分はどのくらいになるかはわかりませんが(毎年1月下旬に発表)、今年の物価や賃金が反映されるのは翌年度の年金からとなります。


じゃあ、今年の物価が5%くらい上がったなら翌年度の年金は5%上がるのかというと、平成16年度改正以降の年金制度はそのような単純なものではなくなりました。


どういう事かというと、物価が5%上がったからって必ずしも5%年金が上がるわけではないという事です。


この辺の話はまた長くなるので簡潔に話しますが、例えば物価が5%上がっても、年金は4%くらいしか上がらない場合もあるという事です。


物価と同じ率の年金が増えるのであれば、生活水準レベルは保たれます。


しかし、物価より年金の伸びが小さいと生活水準は苦しくなります。


どうして本来の物価の伸びよりも小さい率しか年金に反映しないような事が起こるのかというと、現在も少子高齢化が進行中だからです。


例えば高齢化率は現在はほぼ30%ですが、2060年あたりには40%くらいになる事が見込まれています。
これからもまだまだ高齢者率が高まり続けます。

40%あたりが上限になりそれ以上高くならなくなるのは、高齢者が増えてくると同時に死亡率も高くなっていくからです。


さらに、少子化を表す合計特殊出生率も今は1.3くらいですよね(最低は平成17年1.26)。


出生率は2.0を下回ると人口が減っていきますが、出生率が2.0を下回ったのは今から47年前の昭和50年です。
高齢化率が問題になり始めたのが今から52年前の昭和45年。

もう長い事、少子化や高齢化の問題が付きまとってきてるわけですね。

この少子高齢化に対応するために常に年金は改正をやって対応してきました。
今で言うアップデートです。

何事もそうですが、何かを作ったら常にアップデートしないと時代の変化に対応できなくなるからですね。


医療や栄養状態が良くなって長生きする人が増えていったので高齢者の人が多くなっていきました。
しかし、高齢者の割合が増えるという事はそれだけ年金を受給する人が増えて、更に長生きだから長期間年金を受給するという事です。


そして少子化だから彼ら高齢者を支える現役世代が減るという事になります。
単純に考えると高齢者が増えて、それを支える現役世代の人が少なくなると現役世代の人の負担が増える事になりますよね。
(まあ、負担する保険料は現在は上限になってますが…)

高齢者が増えると年金の負担が増える…、少子化が進むと支え手が減る事になる…

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※注意
少子化が進むと多くの高齢者を支えられなくなると言われますよね
よく20歳から64歳までの人で65歳以上の高齢者を支えてるというようなお神輿のような表現があります。
これはあまり適切な表現ではありません。
昔と違って高齢者雇用や働く女性の促進により支え手(働いてる人)に回ってる高齢者や女性が急激に増加しているので、働いてる人が働いていない人を支えてる割合で見ると昔とさほど変わらない。

平成初期くらいまでは定年が55歳で、それ以降継続して働くなんてあまりなかったからですね。
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じゃあ、それらの年金の負担を増加させる要因を数値化して、毎年の物価や賃金の伸びから差し引くわけです。


高齢者が増えたので年金負担が更に1%増加しました!となれば、じゃあ年金の増額分から1%分引いて調整しよう(給付と負担のバランスを取る)という事をやるのですね。

もう収入として入ってくる保険料の上限は決まってるので、その毎年決まってる収入の中でやりくりしないといけないので高齢化率高くなって余計な出費が出たら、どこかで出費(年金)を抑えないといけないわけです。


例えば物価が5%上がったら、年金が5%上がるところですが、高齢化で増加した負担(費用)の1%分を5%から引いて4%の年金の伸びにするという事です。

こうすれば負担が増えたところは、給付の抑制でバランスを取る事が出来ますよね。


少子高齢化で余計に増える年金負担を抑制するために、年金の増加を抑制してるという事です。
マクロ経済スライド調整といいますが、これが将来の年金を確保するために毎年物価や賃金変動率から引き下げたりしています。

簡単に言うと、100個ある飴を10年間で毎年10個与えれば将来も均等に利益を受け取れますが、今年は20個貰っちゃえ!となると将来の人は80個を9年で分けないといけないですよね。
10個もらえるはずが、その後の人は9個で我慢…
じゃあ、利益を貰い過ぎないように物価からマクロ調整で抑えて、将来の人の利益を確保しようというわけです。


さて、最後に簡単に老齢基礎年金事例を一つ。
 


1.昭和55年5月12日生まれの女性(現在は42歳)

・1度マスターしてしまうと超便利!(令和4年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法。

https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12719286156.html

 

・絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方。

https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12649134483.html?frm_id=v.jpameblo&device_id=7cd95ce704ad47c5b63603dfd93ac9f2
 

20歳になる平成12年5月から平成15年3月までの35ヶ月間は学生だったので、国民年金保険料を支払うのが困難だったので学生納付特例制度を利用しました。

納付特例は保険料を全額免除しますが、学生を卒業して就職したら払ってねという期待もあるため、通常の免除制度のように税金は投入されていません。
 
よって、免除のままにすると全く将来の年金には反映しません。
 
平成15年4月から平成21年3月までの72ヶ月間は厚生年金に加入。

平均給与は18万円だったので、厚生年金保険料を支払うのが大変だったが、厚生年金保険料は免除する事は育児休業中みたいな時でなければ不可。

会社から給料が支払われるから保険料支払えないという事はないからですね。
 

平成21年4月から令和18年9月までの330ヶ月間は国民年金保険料納付。
 
 
令和18年10月から60歳前月の令和22年4月までの43ヶ月は国民年金保険料を全額免除した(国庫負担が基礎年金の2分の1投入されているので、老齢基礎年金の2分の1に反映)。
 
 
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さて、この女性の65歳時の老齢基礎年金を計算しましょう。
※年金記録(20歳から60歳までの国民年金強制加入期間で計算)
 
1.学生納付特例→35ヶ月
2.厚年期間→72ヶ月
3.国民年金保険料納付→330ヶ月
4.全額免除→43ヶ月(基礎年金の2分の1に反映)
 
 
・老齢基礎年金→777,800円÷480ヶ月(加入上限月数)×(72ヶ月+330ヶ月+43ヶ月÷2)=777800円÷480ヶ月×423.5ヶ月=686,246.4582円≒686,246円(1円未満四捨五入)
 
72ヶ月間厚生年金に加入したから、報酬に比例した年金である老齢厚生年金が支給されます。
 
 
ところで、65歳になるのは令和27年5月11日(誕生日前日)ですが、この日前の10年以内(令和17年5月以降)に全額免除期間が43ヶ月ありますよね。
 
 
その全額免除期間は追納して年金額を増やす事が出来ます。
 
 
その43ヶ月を追納すると、老齢基礎年金は777,800円÷480ヶ月×(72ヶ月+330ヶ月+43ヶ月)=721,085円となります。
 
ただし、65歳になる令和27年5月11日になると追納が不可になるので、65歳になるまでに追納しましょう。
 
※追記
世帯全員が非課税所得者であり、前年所得+公的年金収入≦781,200円であれば、65歳から老齢年金生活者支援給付金が別に支給される。
 
・年金生活者支援給付金→5,020円(基準額)÷480ヶ月×(72ヶ月+330ヶ月)+10,802円(免除基準額)÷480ヶ月×43ヶ月=4,204円+968円=5,172円(年額62,064円)

 


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6月29日の第248号は、「そんなに年金保険料を納めていないのに、こんな事で貰える資格を満たした事例3つ」

7月6日の第249号.振替加算事例と、漏れた年金記録を訂正する時。

7月13日の第250号.障害厚生年金受給者と離婚する時の年金分割は簡単にはできない理由と、振替加算事例。


7月20日の第251号.昔はいろんな年金を貰えたのに突然に複数受給禁止となったが、例外的に複数貰えてる事例。


6月1日の第244号.創設から早い段階で危機に陥った国民年金と、15年かけて国民年金を約4割引き下げた過去(1)を発行しました。

6月8日の第245号. 創設から早い段階で危機に陥った国民年金と、15年かけて国民年金を約4割引き下げた過去(2)を発行しました。

6月15日の第246号は、「昔とは時代が大きく変化したために欠かせないものとなった年金や介護保険と、旧年金制度を絡めた年金事例」

6月22日の第247号は、「年金は比較的貰いにくいものだったのに、どのように変化しながら貰いやすくしていったのか」。


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