公的年金ですべての人が将来は受給する事になるのが、国民年金から支給される老齢基礎年金です。
国民年金は20歳になると強制加入となり、60歳前月までの480ヶ月間加入して保険料を支払う義務が課されています。
(厚生年金は20歳前から加入可能であり、最大70歳まで加入できる)
とはいえ40年もの期間なので、途中に保険料が支払えるのが困難になる事もあります。
失業とか病気、災害などですね。
そのような時は保険料を支払うどころではないので、申請により国民年金保険料を免除してもらう事が出来ます。
上記のような人生の一大事ではなくても一定の所得以下の場合は、免除の申請をする事で保険料を免除する事が出来ます。
免除は市役所や年金事務所で申請する必要があります。
なお、免除にするという事はそれだけ保険料を支払っていない事になるので、将来貰う老齢基礎年金額が低下する事にはなります。
少しでも老後資金を増やすためにも、免除した期間は後で保険料を追納する事が出来るので、追納して年金を増やしておく事をおススメします。
追納は過去10年以内の免除期間において可能です。
さて、20歳から60歳前月まで完璧に国民年金保険料を納めたらいくらの年金になるのかというと、令和4年度満額は777,800円です。
基礎年金の額は昭和60年改正の時に高齢者の生活費を総合的に勘案して60万円と決められましたが、それ以降の物価の変動を繰り返しながら現在の777,800円となっています。
この金額は前年の物価や賃金の変動で毎年金額が変動します。
基本的には公的年金は物価や賃金の伸びで金額が変動します。
今年はロシアのウクライナ侵略のせいで世界的な物価の高騰になっているため、生活を直撃しています。
物価に変動するのであれば早く年金も変動してほしい!と思ってしまうかもしれませんが、前年の物価や賃金の変動率を用いて翌年度の年金を変更するので今すぐ反映しない事になります。
来年発表される今年の変動分はどのくらいになるかはわかりませんが(毎年1月下旬に発表)、今年の物価や賃金が反映されるのは翌年度の年金からとなります。
じゃあ、今年の物価が5%くらい上がったなら翌年度の年金は5%上がるのかというと、平成16年度改正以降の年金制度はそのような単純なものではなくなりました。
どういう事かというと、物価が5%上がったからって必ずしも5%年金が上がるわけではないという事です。
この辺の話はまた長くなるので簡潔に話しますが、例えば物価が5%上がっても、年金は4%くらいしか上がらない場合もあるという事です。
物価と同じ率の年金が増えるのであれば、生活水準レベルは保たれます。
しかし、物価より年金の伸びが小さいと生活水準は苦しくなります。
どうして本来の物価の伸びよりも小さい率しか年金に反映しないような事が起こるのかというと、現在も少子高齢化が進行中だからです。
例えば高齢化率は現在はほぼ30%ですが、2060年あたりには40%くらいになる事が見込まれています。
これからもまだまだ高齢者率が高まり続けます。
40%あたりが上限になりそれ以上高くならなくなるのは、高齢者が増えてくると同時に死亡率も高くなっていくからです。
さらに、少子化を表す合計特殊出生率も今は1.3くらいですよね(最低は平成17年1.26)。
出生率は2.0を下回ると人口が減っていきますが、出生率が2.0を下回ったのは今から47年前の昭和50年です。
高齢化率が問題になり始めたのが今から52年前の昭和45年。
もう長い事、少子化や高齢化の問題が付きまとってきてるわけですね。
この少子高齢化に対応するために常に年金は改正をやって対応してきました。
今で言うアップデートです。
何事もそうですが、何かを作ったら常にアップデートしないと時代の変化に対応できなくなるからですね。
医療や栄養状態が良くなって長生きする人が増えていったので高齢者の人が多くなっていきました。
しかし、高齢者の割合が増えるという事はそれだけ年金を受給する人が増えて、更に長生きだから長期間年金を受給するという事です。
そして少子化だから彼ら高齢者を支える現役世代が減るという事になります。
単純に考えると高齢者が増えて、それを支える現役世代の人が少なくなると現役世代の人の負担が増える事になりますよね。
(まあ、負担する保険料は現在は上限になってますが…)
高齢者が増えると年金の負担が増える…、少子化が進むと支え手が減る事になる…
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※注意
少子化が進むと多くの高齢者を支えられなくなると言われますよね。
よく20歳から64歳までの人で65歳以上の高齢者を支えてるというようなお神輿のような表現があります。
これはあまり適切な表現ではありません。
昔と違って高齢者雇用や働く女性の促進により支え手(働いてる人)に回ってる高齢者や女性が急激に増加しているので、働いてる人が働いていない人を支えてる割合で見ると昔とさほど変わらない。
平成初期くらいまでは定年が55歳で、それ以降継続して働くなんてあまりなかったからですね。
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じゃあ、それらの年金の負担を増加させる要因を数値化して、毎年の物価や賃金の伸びから差し引くわけです。
高齢者が増えたので年金負担が更に1%増加しました!となれば、じゃあ年金の増額分から1%分引いて調整しよう(給付と負担のバランスを取る)という事をやるのですね。
もう収入として入ってくる保険料の上限は決まってるので、その毎年決まってる収入の中でやりくりしないといけないので高齢化率高くなって余計な出費が出たら、どこかで出費(年金)を抑えないといけないわけです。
例えば物価が5%上がったら、年金が5%上がるところですが、高齢化で増加した負担(費用)の1%分を5%から引いて4%の年金の伸びにするという事です。
こうすれば負担が増えたところは、給付の抑制でバランスを取る事が出来ますよね。
少子高齢化で余計に増える年金負担を抑制するために、年金の増加を抑制してるという事です。
マクロ経済スライド調整といいますが、これが将来の年金を確保するために毎年物価や賃金変動率から引き下げたりしています。
簡単に言うと、100個ある飴を10年間で毎年10個与えれば将来も均等に利益を受け取れますが、今年は20個貰っちゃえ!となると将来の人は80個を9年で分けないといけないですよね。
10個もらえるはずが、その後の人は9個で我慢…
じゃあ、利益を貰い過ぎないように物価からマクロ調整で抑えて、将来の人の利益を確保しようというわけです。
さて、最後に簡単に老齢基礎年金事例を一つ。