なぜ日本の老齢の年金は貰いやすいのか。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんにちは!

年金アドバイザーのhirokiです。
 
 
・まぐまぐ大賞2021語学資格部門2位と知識ノウハウ部門3位のダブルで頂きました(6年連続受賞)
本当にありがとうございました。
https://www.mag2.com/events/mag2year/2021
 
 
老齢の年金を受給するためには、2つの条件があります。
 
1つは年金の保険料を納付した期間(保険料納付済み期間)+免除期間+カラ期間≧10年である事。
 
2つ目は支給開始年齢に達する事。
 
これを満たせば誰でも受給できます。
 
 
未納以外の期間が最低でも10年あれば受給できるので、現在の制度で老齢の年金が受給できないという事は余程の事が無い限りないでしょう。
 
 
ちなみに国民年金には20歳になると強制的に加入となり、59歳11ヶ月までの40年間保険料を納付する義務があります。
 
その40年間の内、たった10年の期間があれば年金が受給できるので早ければ30歳でも10年満たしてしまう人が現在では現れるわけです。
 
仮に60歳になるまでにそれでも10年行かない人は、60歳以降70歳までは厚生年金に加入できたり、60歳以降も国民年金に任意で加入して70歳まで加入する事が出来ます。
 
 
なお、厚生年金は在職中は最大でも70歳までは強制加入となりますが、厚生年金加入していない人は国民年金に60歳以降70歳まで任意加入が出来ます。
 
国民年金に60歳以降も任意で加入するというと65歳までというのが一般的ですが、年金を受給する最低限の期間10年を満たしていない人に限っては65歳以降70歳まで「特別」に任意加入する事が出来ます。
 
 
 
65歳以降70歳までの任意加入は10年を満たしていない場合の特別な措置なので、70歳になるまでに10年を満たした場合はそれ以降の任意加入は不可となります。
 
 
このように、年金制度に加入しようと思えば20歳から70歳までの50年間は加入できる中で10年は満たしてくださいという事になります。
 
 
まあ、厚生年金は20歳未満で就職した場合は、例えば18歳とかで加入したりするので、そうなると最大50数年間も加入できる人が出てきたりしますね。
 
 
 
よって、今の制度においては年金受給資格期間10年を満たす事はよほど頑張って保険料を未納にしない限り、年金受給に結び付く事になります。
 
 
さて、現在は10年で老齢の年金が受給できますが、そもそもは原則として25年無いと受給できませんでした。
 
 
平成29年8月から25年が10年まで短縮されました。
 
 
それは以前から受給資格期間が長すぎるのではないかと指摘されていたからです。
 
確かに他国の年金制度と比べると、非常に長めではありました。
※例
アメリカ10年、イギリス1年、ドイツ5年、オーストラリア10年、中国15年、韓国20年など。
 
 
だからといって、日本の年金が貰いにくいかというとそうでもなかったです。
 
 
それはあくまでも保険料を納付しなければ期間にはならないという制度ではなかったからです。
 
 
 
最初の式で見てもらったように、保険料納付済み期間+免除期間+カラ期間≧10年という事になっていますよね。
 
保険料を納付する以外にも、「免除期間」とか「カラ期間」というのがあります。
 
 
長い人生において失業とか、病気、災害などで保険料をし払えるどころではないという事も有り得るので、そういう場合は保険料を免除する事が出来ました。
現在も500万人程が免除利用中です。
 
 
免除制度というのは世界的にも珍しい制度となっており、この期間も10年の中に組み込む事が出来ます。
 
しかも保険料を全額免除しても、国民年金の中には半分が税金でできているので、その税金分は将来受け取る事ができます。
 
 
極端な例えですが、20歳から60歳まで全額免除した人であっても、基礎年金の半分の388,900円は受給する事が出来るという事です。
完璧に納付してきた人は満額の777,800円(令和4年度老齢基礎年金満額)です。
厚生年金はこれとは別に支払います。
 
 
次にカラ期間ですが、これは特に昭和61年3月までの旧年金制度の名残なんですが、今現在の年金制度のように国の都合で強制加入させていなかった人が居ました
 
例えば代表的な人に、サラリーマンや公務員の専業主婦だった人ですね。
 
 
サラリーマンや公務員は厚生年金や共済年金(平成27年10月以降は厚年に統合)に加入ですが、これらの年金は家族をひっくるめて生活保障をする年金でありました。
 
つまり、夫が厚年加入して勤めていて妻は専業主婦をしていたら、老後は夫の厚生年金で夫婦の生活を面倒見ようという事ですね。
 
そうなると、専業主婦の妻は夫の厚生年金で守られているので、わざわざ妻を国民年金に強制加入させなくてもいいだろうという事で加入させていませんでした。
 
 
昭和時代の専業主婦は老後は無年金でも良いだろうというのが、当然の考え方だったのです。
 
 
ところが、昭和61年4月になると年金制度は新しく生まれ変わりまして、今まで国民年金に加入してなかった人も強制加入としまーす!という事になりました。
無年金のままだと離婚した場合等が危険だからですね^^;
 
 
今まで年金なんてものに加入してなかった専業主婦も、昭和61年4月からは強制加入となって年金の被保険者となったわけです。
 
 
でも、加入させてくれるのはいいけど、今さら加入させてもらっても年金受給資格期間が満たせない場合が出てきますよね。
 
 
例えば昭和61年4月時点で55歳の人が、25歳から55歳までの30年間はサラリーマンの専業主婦として加入してなかった場合、これから60歳まで5年間加入しても受給資格が満たせないですよね。
 
 
じゃあただ、5年間は加入して保険料だけお布施するようなものなのか…という事になってしまうので、今まで国の制度の都合でサラリーマンや公務員の専業主婦を強制加入させていなかった期間はせめて受給資格期間に算入しようねという事で、使われてるのがカラ期間です。
 
 
そうすると55歳から急に強制加入させられた専業主婦の受給資格期間は保険料納付5年+カラ期間30年=35年となり、十分に受給資格期間を満たす事になります。
 
 
とはいえ、実際に保険料を納めたのは5年なので、5年分の年金を支払います。
カラ期間は年金には反映しない空っぽの期間なので、カラ期間と呼ばれます。
 
 
このように日本の年金制度は、保険料納付した期間のみが受給するための期間というわけではないので、その辺の考え方は重要になってきます。
 
なので、今回はいくつか簡単に2つ事例を見てみましょう。
 
 
1.昭和33年3月10日生まれの男性(今は64歳)

・1度マスターしてしまうと超便利!(令和4年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法。

https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12719286156.html

 

・絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方。

https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12649134483.html?frm_id=v.jpameblo&device_id=7cd95ce704ad47c5b63603dfd93ac9f2
 
 
この男性は20歳になる昭和53年3月から昭和55年3月までの25ヶ月間は大学生だったため、国民年金には強制加入ではありませんでした。
 
昭和55年4月から昭和56年3月までの12ヶ月間は専門学校に通いましたが未納。
専門学校生は強制的に加入させていました。
 
昭和56年4月から平成26年3月までの396ヶ月間は国民年金保険料未納。
 
 
平成26年4月からは国民年金保険料を支払い始め、60歳前月の平成30年2月までの47ヶ月間は支払いました。
 
 
それ以降は何も年金には加入していません。
 
 
65歳になると年金の受給年齢になるそうですが、貰えますか?
 
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この男性は令和4年5月現在で、保険料納付済み期間47ヶ月間+カラ期間25ヶ月=72ヶ月しかないので、10年(120ヶ月)には足りていません。
 
あと48ヶ月間足りないですね。
 
 
年金を受給したい場合は、令和4年5月から国民年金の任意加入をし始めたとして、令和8年4月で48ヶ月になって最低の10年を満たします(厚年加入でもいいですが、再就職が必要なので…)。
 
なので、この男性の場合は65歳からの受給ではなく、最短での受給でも68歳の年です。
 
年金の受給権が発生するのは、令和8年4月の翌月の5月1日となり、その翌月である令和8年6月分からの受給となります。
初回支払いは令和8年8月15日(初回支払いはもう1ヶ月くらいは遅くなると見ていたほうがいいです)。
 
 
あと、65歳以降の国民年金の任意加入は受給資格期間を満たしていない人の場合の特別措置なので、受給資格10年を満たした後の令和8年5月以降の任意加入はできない。
 
 
※参考
なお、カラ期間ですが平成3年3月までは大学生は強制加入させていなかったので、加入していなかった学生期間はカラ期間として扱う。
この男性は25ヶ月間。
ちなみに定時制、夜間、専門学校(昭和61年3月まで)、通信制の人は強制加入だったので保険料支払わなかった場合は単なる未納期間。
 
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2.昭和23年1月22日生まれの女性(今は74歳)
 
20歳になる昭和43年1月から昭和44年3月までの15ヶ月間は未納にした後、昭和44年4月から昭和46年9月までの30ヶ月間は厚生年金に加入した。
当時の平均給与は22万円とする。
 
 
寿退職して、昭和46年10月から昭和49年4月までの31ヶ月間は国会議員の妻となる。
 
国会議員の妻の場合は国民年金には強制加入ではなく、任意加入だったが加入せず。
この期間はカラ期間として扱う。
 
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※参考
国会議員本人は昭和36年4月から昭和55年3月までは国民年金の適用外でした(任意加入も不可だった。配偶者は任意加入はできた)。
昭和55年4月から昭和61年3月までは任意加入はできるようになり、昭和61年4月以降は国会議員本人も国会議員の配偶者も国民年金に強制加入。
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昭和49年5月に離婚して以来は、昭和62年6月までの158ヶ月間は保険料を全額免除した。
 
昭和62年7月から60歳前月の平成19年12月までの246ヶ月間は未納にした。
 
 
さて、この女性の年金記録を見てみましょう。
 
・保険料納付済み(厚年)→30ヶ月
・全額免除→158ヶ月(←この期間は老齢基礎年金を計算する際は3分の1反映します。平成21年4月以降は2分の1)
・カラ期間→31ヶ月
 
合計は219ヶ月。
 
 
という事は、10年以上(120ヶ月以上)なので貰えるかというと、この女性が60歳時点や65歳時点(平成25年1月)でさえもまだ受給資格期間は25年以上が必要だった時だったので、年金が受給できませんでした。
 
 
60歳以降も年金に加入するつもりはなく、再就職の予定もなかったのでこのまま無年金だと思っていました。
 
 
 
しかし、平成29年8月1日からは年金受給資格が25年から10年に短縮されたので、平成29年8月1日に年金受給権が発生して翌月9月分から年金が受給できるようになりました。
当時はこの女性が69歳の時ですね。
 
 
・平成29年8月受給権発生の老齢厚生年金→22万円×7.125÷1000×30ヶ月=47,025円
差額加算は微額なのでこの記事では割愛します。
 
・平成29年8月受給権発生の国民年金からの老齢基礎年金→777,800円(令和4年度満額)÷480ヶ月×(30ヶ月+158ヶ月÷3)=133,955円
 
よって、年金総額は180,980円(月額15,081円)
 
 
なお、令和元年10月からは低年金者への給付として、年金生活者支援給付金の支給が始まった。
前年の所得+前年の年金収入の合計が781,200円以下で、非課税世帯の場合。
 
 
・年金生活者支援給付金→保険料納付済み期間による基準月額5020円(令和5年度基準額)÷480ヶ月×30ヶ月+免除期間による基準額10,802円÷480ヶ月×158ヶ月=314円+3,556円=3,870円(年額46,440円)
 
 
 
…というわけで、老齢の年金自体は非常に未納が多かった人でない限りは貰えますが年金の保険料を納めた期間が少ない人ほど低年金になってしまうので、加入できる間はしっかり納めたほうが老後はより安心ではあります
それに国が終身で面倒見てくれるからですね…^^;
 
ちなみに未納にする人が多いと年金が崩壊するとかいう噂が以前よくありましたが、年金はその人の過去の保険料納付記録に応じた年金しか支払わないので未納者が増えるからって財政が破綻するとかいう事にはならない。
 
そもそも全体の被保険者に対して、未納者は2%ほどしか居ないのでほぼ影響もない。
 



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5月11日の第241号は、「年金受給者の退職改定と、65歳以上の人が在職し続ける間の1年ごとの年金額変更」

5月18日の第242号は、「障害基礎年金受給者が老齢の年金受給を遅らせる場合と、繰下げを断念した時の新たな取り扱い」

5月25日の第243号.単純に行方不明になって生存がわからない場合と、船などの事故で生存が不明な場合の遺族年金の事例。

6月1日の第244号.創設から早い段階で危機に陥った国民年金と、15年かけて国民年金を約4割引き下げた過去(1)

6月8日の第245号. 創設から早い段階で危機に陥った国民年金と、15年かけて国民年金を約4割引き下げた過去(2)

5月4日の第240号は「65歳前後で別物の年金になってしまった経緯と、厚生年金が大幅に増えたり減ったりして驚くケース」を発行しました。

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