過去の給与が非常に高かったから、貰える年金額に期待していたものの… | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんにちは!

年金アドバイザーのhirokiです。
 
 
・まぐまぐ大賞2021語学資格部門2位と知識ノウハウ部門3位のダブルで頂きました(6年連続受賞)
本当にありがとうございました。
https://www.mag2.com/events/mag2year/2021
 
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1.給与が高ければ高いほど年金もどこまでも高くなるのか?
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厚生年金は過去の給料や賞与の額で将来受け取る年金額が人それぞれ異なりますが、その金額は多ければ多いほど青天井に上がるのでしょうか?
 
企業に勤める場合は給与明細を見ると、給与や賞与から厚生年金保険料が引かれますよね。
 
 
その給与や賞与が高い人ほど多くの厚生年金保険料が天引きされます。
健康保険料や介護保険料、雇用保険なんかもそうですが…。
 
 
逆に、低い人ほどその保険料も低くなります。
 
 
なお、保険料は実際の給与をもとに引いてるのではなく、標準報酬月額というある一定の金額に保険料率を掛けて給与から天引きします。
 
これは原則として、4月5月6月に貰った給与の平均を取って標準報酬月額表に当てはめて、9月からその標準報酬月額を適用して来年の8月までその保険料額を取ります。
 
もしくは平成23年からの措置ですが、業務の性質上で4,5,6月の給与額が他の月と比べて著しく変動する場合は、前年7月から今年6月までの1年間の平均した給与を標準報酬月額として使用します(標準報酬月額の等級が2等級以上変動する場合)。
 
 
賞与は支給されるその都度、賞与の額の1,000円未満は切り捨てた額(標準賞与額)に保険料率を掛けて徴収します。
だから、例えば1,207,134円の賞与が支給されたら、1,207,000円が標準賞与額。
 
この標準賞与額は年金に反映させます。
 
 
じゃあ、そういう標準報酬月額や標準賞与額が高ければ高いほど高い年金が貰えるのか
過去の報酬に比例するので、給与が高かった人は高い年金が貰えます。
 
ただ、標準報酬月額や標準賞与額には上限があるんですね。
標準報酬月額の下限は88,000円。
 
 
例えば、月額100万円の給与を貰おうが標準報酬月額は最大65万円です(令和2年9月から上限62万円から65万円に上がった)。
 
※標準報酬月額(協会けんぽ。東京都)

だから、今の厚生年金保険料率は18.3%(率は民間企業であれば平成29年9月にこの上限に達した)だから、その半分である9.15%を65万円にかけると59,475円がこの100万円の給与の人から天引きされる厚生年金保険料。
 
ちなみに健康保険の場合は上限は65万円ではなく139万円なので、給与が100万円なら標準報酬月額が98万円となります。
 
たとえば東京なら健康保険料率9.84%と介護保険料率1.8%込みの11.64%なので、それを労使折半すると個人が払うのは5.82%の保険料。
 
そうすると、標準報酬月額98万円×5.82%=57,036円が給与天引きされます。
 
 
また、賞与が仮に500万円だったとしても、この賞与にも厚生年金には限度があって賞与額がどんなに高くても一回の支給につき150万円が限度。
(健康保険は年間573万円まで)。 
 
例えば7月に500万円の賞与貰っても、上限の150万円に9.15%を掛けて137,250円が500万円から天引きされます。
 
 
このように、青天井に年金が増額するような仕組みにはなっておらずに、標準報酬月額等に上限があるわけですね。
 
上限が無いと給料が高い人と低い人との格差が開きすぎてしまう危険性もあるし、過剰な社会保障をしない為でもあるのでしょう。
 
 
というわけで非常に給与が高い人がその状態で将来年金が貰えるとしたらどのくらいの年金額になるのか試算してみましょう。
 
一つの仮定として考えてみます。
 




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2.夫が20歳から60歳までの間に300ヶ月ほど月収100万円上で働いて、年2回はそれぞれ150万円を超える賞与。妻は夫が厚年加入中は国民年金第3号。
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1.昭和45年5月8日生まれの男性(今は52歳)


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20歳になる平成2年5月から平成3年3月までの11ヶ月間は未納とする。
 
平成3年4月1日から給与27万円(標準報酬月額28万円)で新入社員となり、厚生年金に加入となりました。
4月から厚生年金に新規加入したので、毎月の保険料28万円×9.15%=25,620円が給与から天引きされる事になります。
 
ただし、4月分の保険料は翌月の5月に支払われる給与から天引き開始となります。
 
当月分の保険料は翌月の給与から天引きされるのが原則です。
 
 
なお、厚生年金の資格を新規に取得した場合の標準報酬月額は1月~5月までの取得は、その年の8月まで。
6月から12月までの取得の場合は翌年8月までの適用となります
 
 
給与ではなく、標準報酬月額というものを決めて、向こう1年間適用するというのは事務の煩雑を避けるためです。
給与はちょくちょく変動しますから、そのたびに計算して保険料額を決めてたらとても大変になりますよね^^;
 
 
しばらくは28万円の標準報酬月額で平成3年4月から平成6年8月までの41ヶ月間働きました。
 
 
平成6年に給与が上がっており(役職手当4万円と通勤手当2万円)、4月~6月は33万円の平均となりました。
そうすると平成6年9月からは標準報酬月額34万円に変更となり、平成7年3月31日までの7ヶ月間働く。
 
 
平成7年4月に再就職し、毎月140万円の給料で働く事になりました。
賞与は7月と12月にそれぞれ500万円ずつとします。
 
 
かなり給与が高くなりましたが、将来の年金に使う標準報酬月額はどうなるのでしょうか?
標準報酬月額には上限があるので、そうすると62万円(令和2年9月以降は65万円)になります。
 
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※注意
上限が62万円になったのは平成12年10月からですが、便宜上62万円としています。
なお、年金に反映する賞与はそれぞれ150万円が限度ですが、平成15年3月までの期間の賞与は年金には反映しません。
 
ただし、平成7年4月以降の賞与には1%の特別保険料が徴収されていました(年金額には反映しないが、年金の財源として使っていた)。
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なので、平成7年4月から令和2年8月までの305ヶ月間の標準報酬月額は62万円だったとします。
 
なお、平成15年3月までの96ヶ月間の平均標準報酬月額は62万円とし、平成15年4月から令和2年8月までの209ヶ月間の平均標準報酬額は856,842円とします。
 
 
・平均標準報酬額856,842円は(62万円×209ヶ月+賞与150万円×33回支給)÷209ヶ月から算出しています。
平均を出す時は報酬の総数を加入月数で割って出します。
 
 
令和2年9月からは標準報酬月額が65万円となり、60歳前月の令和12年4月までの116ヶ月間の平均標準報酬額は895,689円とします(賞与は19回払ったとします)。
 
 
という事で、この男性の65歳からの年金総額を算出してみます。
なお、厚生年金は70歳まで加入できるので、60歳以降も加入すれば年金額は増額していきます。
 
 
・65歳からの老齢厚生年金(報酬比例部分)→(28万円×41ヶ月+34万円×7ヶ月+62万円×96ヶ月)×7.125÷1000+(856,842円×209ヶ月+895,689円×116ヶ月)×5.481÷1000=522,833円+1,551,013円=2,073,846円
 
・65歳からの老齢基礎年金→777,800円÷480ヶ月×469ヶ月(20歳から60歳までの期間で未納の11ヶ月を引いた期間)=759,975円
 
 
あと、2歳年下(昭和47年3月生まれとします)の生計維持している妻が居たとします。
そうすると老厚に配偶者加給年金388,900円も加算。
 
加給年金は最大で妻が65歳になるまでの加算(令和19年3月分まで)
妻の年金記録は平成7年6月結婚の令和12年4月までの419ヶ月間の国民年金第3号被保険者期間のみとします。
 
 
第3号被保険者期間は夫が厚生年金加入中に年収130万円未満等である場合になれる期間(昭和61年4月以降の20歳から60歳までの期間に限る)。
 
・妻の65歳からの老齢基礎年金→777,800円÷480ヶ月×419ヶ月=678,954円
 
 
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3.受給する年金額には税金がかかる事がある(遺族年金や障害年金にはかからない)。
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よって、夫婦ともに65歳以上になって本格的な年金受給の世帯収入として見てみると…
 
夫は2,833,821円(加給は有期年金なので除いています)+妻678,954円=3,512,775円(月額292,731円)
 
 
ちなみに年金額が65歳以上の人は158万円以上だと課税対象者になるので、年金に税金がかかる事があります。
毎年10月頃に扶養親族等申告書が送付されてくるので、扶養者などが居る人は提出する事で源泉徴収税額を抑える事が出来る。
 
源泉徴収税(所得税)をついでに計算します。
 
 
まず夫の年金総額2,833,821円を年金支払い月数の6回で割ります。
そうすると472,303円が毎回の偶数月の年金額。
 
次に、基礎控除額を算出→472,303円×25%+65,000円×2ヶ月=248,075円
ただし月額135,000円×2ヶ月=27万円を下回る場合は、27万円を基礎控除とします。
 
※年金からの源泉徴収税額(日本年金機構)
 
妻は年間所得95万円以下とすると、配偶者控除32,500円×2ヶ月=65,000円
 
 
本人や妻に障害などは無し。
 
 
・課税所得→472,303円ー(基礎控除27万円+配偶者控除65,000円)=137,303円
 
・偶数月の年金支払い時に源泉徴収される所得税→137,303円×5.105%=7,009円
 
 
よって、年金振込額は472,303円ー7,009円=465,294円となる。
 
 
というわけで、過去に給与が凄ーく高かったとしても、年金額自体は完全に比例するというわけではないですね…
 
 
※追記
源泉徴収税はそんなに高くならない事が多いですが、年金の手取りを引き下げるのは社会保険料の影響の方が大きいです
なので、実際は上記の振込額よりも低くなってきます。
 
65歳以上の人は年金から介護保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険(75歳以上の人)や個人住民税が年金から天引きされます(特別徴収という)。
 
これらの社会保険料は各市区町村によって金額は違いますが、住民税非課税世帯か課税世帯かで結構違ってきます。
 
この男性の場合だと介護保険料や国民健康保険料は年間10万円以上はかかってくるはずなので、そうなると年金振込額が2~3万くらい変わってくる事になりますね^^;
 
社会保険料はどんなに年金が低くても支払う事になります。
 
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5月4日の第240号は「65歳前後で別物の年金になってしまった経緯と、厚生年金が大幅に増えたり減ったりして驚くケース」

5月11日の第241号は、「年金受給者の退職改定と、65歳以上の人が在職し続ける間の1年ごとの年金額変更」

5月18日の第242号は、「障害基礎年金受給者が老齢の年金受給を遅らせる場合と、繰下げを断念した時の新たな取り扱い」

5月25日の第243号.単純に行方不明になって生存がわからない場合と、船などの事故で生存が不明な場合の遺族年金の事例。


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