なぜ10月になると天引きされる厚生年金保険料が変化するのか。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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こんにちは!

年金アドバイザーのhirokiです。
 
 
10月の給料明細を見ると、厚生年金保険料が高くなっていて驚く場合があります。
 
 
また手取りが減ったとガックリされるというかですね。
 
 
なぜかというと9月には厚生年金保険料率が変更(基本的には高くなる)されたり、厚生年金保険料率を掛ける標準報酬月額が変更されるからです。
 
 
ちなみに前者の厚生年金保険料率の変更は平成29年9月に上限の18.3%を迎えてるので、これ以上高くなる事は今のところありません。
 
なお、厚生年金保険料は従業員個人のみでなく、事業主も同じ額を支払っています。
 
これを折半といいます。
 
 
例えば、従業員が2万円の保険料を支払っているなら、会社も同じ2万円を支払っているという事になります。
ちなみに健康保険料なども折半です。
 
 
保険料率が18.3%なので、個人負担は9.15%分という事になります。
 
 
さて、厚生年金保険料率はもう上限の18.3%を平成29年9月に迎えてるので、保険料率の上昇によって保険料額がアップという事はありません。
 
 
ところが、従業員によっては給料額は変動しますよね。
 
 
 
もし、給料が40万円の人が保険料率10%なら4万円の支払いですが、50万円に給料が上がれば10%掛けると5万円に保険料額がアップします。
 
保険料率が上がらなくても、給料アップで支払う保険料額もアップするわけですね。
 
 
 
さて、その給料額(正式には標準報酬月額という)が9月に変更されるので、変更された給料(標準報酬月額)が高くなれば支払う保険料額も上がります。
逆に給料下がる人は、支払う保険料も下がります。
 
 
 
あれ?給料が上がったりするのって4月の事が多いから、9月に給料額変更っておかしくない?と思われた方もいるでしょう。
 
 
 
厚生年金の保険料を徴収する際の給料(標準報酬月額)の決め方は、一般的な給料の変動する4月とは異なり、分けて考える必要があります。
 
 
9月の給料(標準報酬月額)を変更する際は、4月、5月、6月に貰う給料の平均を9月から適用します。
 
 
たとえば、今まで20万円に9.15%=18,300円の保険料を支払っていたとします。
 
 
その人が4月にベースアップして、4月は23万円、5月はちょっと残業多くて245,000円、6月は休みがあって225,000円だったとします。
 
それを合計して平均すると、(23万円+245,000円+225,000円)÷3ヶ月=233,333円になります。
 
 
で、その233,333円という数字を標準報酬月額表の23万円から25万円の間に当てはめると、標準報酬月額は24万円になります。
 
※標準報酬月額表(日本年金機構)

 
つまり、この人は9月からは今までの20万円から24万円に給料(標準報酬月額)変更となり、9月から翌年8月までは24万円に9.15%を掛けた保険料額21,960円を支払い続ける事になります。
 
 
ちなみに9月分の保険料は翌月の10月に支払われる給与から徴収する事になっているので、10月に支払われる給与から保険料額が21,960円にアップします。
 
当月分の保険料は翌月の給与から天引きする事になっています。
 
 
ところで、給与は標準報酬月額と同じ額ではありません。
 
 
給与って毎回変動したりしますよね。
 
 
しかし標準報酬月額は9月に決まると、翌年8月まで原則としては変更しません。
さっきの人であれば翌年8月までは24万円に保険料率9.15%をかけ続けて保険料を徴収する。
 
 
なぜそんな事をするのか。
 
 
向こう1年間の保険料率を掛ける数字を標準報酬月額として一定に決めておけば、事務処理の煩雑を避ける事が出来るからです。
 
 
毎月違う給料を把握して、それにいちいち保険料率を掛けて徴収するのはあまりにも煩雑なので、標準報酬月額というものを決めてそれに保険料率を掛け続けて徴収するわけです。
 
 
なお、4月5月6月の平均した給料を、9月から適用して翌年8月まで保険料を徴収し続けますが、もし4月5月6月の勤務日数が17日未満の場合はその月は省きます。
 

例えば6月の勤務日数が17日未満なら、4月と5月の給与を平均した額を標準報酬月額表に当てはめて標準報酬月額を決めて、9月から適用します。
 
 
ところで給料というと単純にお金の支払いをイメージしますが、含まれるのは単純にお給料の支払いだけにとどまりません。
 
定義としては給料、賃金、俸給、手当、賞与その他どのような名称であるかを問わず、労働者が労働の対象として受けるすべてのものとしています。
これらをひっくるめて「報酬」と呼んでいます。
 
 
なので実際はこの報酬を平均して9月からの標準報酬月額を適用します。
 
 
だから例えば目に見える基本給は24万円だけど、他に管理職手当が4万円、通勤手当(定期券現物支給)が1万円、扶養手当が2万円だったなら、報酬総額は31万円になり、31万円が4月5月6月に支払われたなら平均すると31万円になります。
 

この31万円を標準報酬月額に当てはめると、標準報酬月額は32万円となり、9月から標準報酬月額は32万円として厚生年金保険料率9.15%を掛けて29,280円を翌年8月分の保険料まで徴収し続けます。
 
 
よって、9月は標準報酬月額が変わって、10月に支払われる給料から徴収される保険料額が変更してくる時期なので留意しておきましょう。
 
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さて、給料が変更されるのは4月が多いですが、場合によっては年度の途中でも大きく変わってくる事があります。
 
 
その場合は途中で変更します。
 
 
例えば、先ほどの毎月31万円(標準報酬月額32万円)の給料を得ていた人が昇格して11月から40万円になったとします。
 
こんなに上がったのに翌年9月まで待たなければならないのかというと、そうではありません。
 
 
11月から大きく引き上がったので、12月、翌年1月までその状態が引き続くと、翌年2月から給料40万円(標準報酬月額41万円)に変更となります。
上がった状態が3ヶ月続くと、4ヶ月目から変更という事ですね。
 
 
標準報酬月額が32万円だったら32万円×9.15%=29,280円の保険料でしたが、2月分の保険料からは41万円×9.15%=37,515円にアップします。
 
 
約4万円くらい給料が上がると、このように年度の途中でも標準報酬月額を変更します。
 
 
 
この年度の途中で変更した標準報酬月額は1月から6月までの間に変更されたらその年の8月まで適用し、7月から12月までの間に変更されたら翌年8月まで適用します。
 
 
10月の時期は保険料天引き額が変わってくる時期ですが、その額は主に4月5月6月の給料で変わってくるので気にしておきましょう^^
 
 
高い保険料を支払うのはイヤだなあ…と思われるかもしれませんが、高い保険料支払ってる人はその分将来の厚生年金額も高くなる事にはなります。
 
 
将来の年金もですが、どっちかというと病気や怪我で健康保険から給付を受ける時に標準報酬月額が高い人のほうが手厚くなるのもメリットです。
 

 
 
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9月29日の第209号は「年金受給する資格が無かった人が、以前よく使われていた特例で貰える時」

10月6日の第210号は「厚生年金期間が割り増しされる職業の年金と、厚生年金を貰うために存在した救済措置」


9月1日の第205号.「本来の初診日を適用すると障害年金請求できる余地が無かったが、元気に生活出来ていた期間があると…」を発行しました。

9月8日の第206号は、「国民にはよくわからないまま昭和末期から徐々に年金額を引き下げ続けていった過程」を発行しました。

9月15日の第207号は、男性の受給する遺族年金計算と、依然として女性に不利な社会が続く原因。
を発行しました。


9月22日の第208号は、「なぜ年金を全額税金で支給したり、積立金でやるのはデメリットが大きすぎるのか」を発行しました。

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