毎年の年金額を物価や賃金に変動させるように決めた当時あたりの話。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんにちは!
年金アドバイザーのhirokiです。
 
この間、左の背中側が痛くて病院に2度行ったんですが、結局は検査で目立った異常が無くて痛みも消えてくれたのでよくわかりませんでした…^^;
 
 
・まぐまぐ大賞2021語学資格部門2位と知識ノウハウ部門3位のダブルで頂きました(6年連続受賞)
本当にありがとうございました^^
https://www.mag2.com/events/mag2year/2021
 
 
本日から令和4年度になりましたね。
 
今年度は何かと年金改正が多いですし、年金額も今月分から0.4%減額となっています。
 
令和4年4月分から年金額が下がるので、実際の振込額への影響は6月15日振込から変化してきます。
 
 
年金は偶数月に前2ヶ月分を支払う事は基本中の基本でありますが、それを当てはめると4月分は5月分と共に6月に支払われる流れという事です。
 
6月の初旬には毎年ほぼすべての年金受給者の人に年金振込通知書を送るので、それで来年までの向こう1年間の金額の確認をお願いします。
 
 
さて、年金額が下がった計算や仕組みなどは先月の有料メルマガで書いたので、ここではその辺の話はしませんが、過去の経緯について簡単にまた述べます^^;
 
 
ここ数年はコロナに翻弄され、最近ではウクライナ情勢で毎日目が離せない状況となっていますよね。
 
だから国のお金が厳しいから、年金が下がってるのではないか…というような憶測が流れたりします。
 
または、年金を下げるならまず無駄な出費を抑えろ!というような批判も多くなります。
 

よく「無駄を削減しろ!」という事が言われたりしますよね。
もちろん無駄を省く事は大事だと思いますが、その目標ってもう約50年前からの話なんですよ。
 
なんかこう間延びしてしまってるというかですね。
 
 
当時は第四次中東戦争による石油危機で、石油の価格が高騰したりして深刻なエネルギー問題になりました。
 
日本はとても石油に依存した国だったので、石油使ってる産業は大打撃を受けました。
もちろん日本だけでなく、いろんな国が打撃を受けました。
 

会社の収益が減ってしまったから国に入る税収も少なくなって、国の歳入が赤字になりました。
 
 
日本経済の成長は終焉し、本格的な不況の時代になりました(途中でバブルはきましたが)。
 
 
赤字だから国債発行して補うしかないですよね。
 
石油危機以降はほぼ毎年のように当たり前に国債を発行し続けています。
 
 
赤字になったから、「税金を増やす前に無駄を削減しよう!」というのがスローガンとなったわけですが、そんな事は今に始まった事ではありませんでした。
 
 
今回のロシアのウクライナ侵攻においても、例えばロシアからの天然ガスが手に入らないとかウクライナの小麦が少なくなるというような事になると、どうしてもその影響を受けてしまう。
 
供給が世界的に少なくなるので、相対的に需要が増えて物価が上がってしまう。
 
日本は特に資源がほとんどなくて、輸入に依存してる部分が大きいので、他国で何かが起こるとどうしても弱い立場になりますよね。
 
やはり食料自給率、エネルギー、国防だけは自分たちで何とかできるようにしておかないと他国に振り回されるし、外交も強く出れない。
 
 
さて、話を戻しますが、年金は昭和48年の改正からは原則として物価変動率や賃金変動率に連動するようにしてるので、物価や賃金が下がれば年金も下がるし、それらの数値が上がれば年金も上がります。
 
これはもう毎回言ってる事ですね^^;
 
 
令和4年度もそれらの数値が上がらずに下がってたから、年金がそれに連動して下がった事になります。
 
 
年金額を上下させるルールに沿ってるだけの事です。
 
 
 
よって、年金がこれから上がるか下がるかどうかというのは、年金制度の構造の問題ではなく日本経済が成長するかどうかなどの問題といったほうがいいですね。
 
 
なお、少子高齢化が日本ではよく話題になりますよね。
世界一の長寿国だから。
 
そんな中、若い人が少なくなるのに高齢者は増える一方の中で年金制度は持つのかと心配もされます。
 
 
高齢化が本格的になってきたのは今から52年前の昭和45年から(高齢化率7%)であり、少子化が本格的になってきたのは昭和50年(合計特殊出生率が2.0を切り始めた)からであります。
 
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※参考
高齢社会の14%になったのは平成6年であり、超高齢社会の21%に突入したのは平成19年でした。
令和4年現在は高齢化率はほぼ30%。
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高齢化率が気になり始めた当時からすでに年金はもう持たないとか、崩壊するみたいな話があったようですが、令和現在も年金は普通に支払われています。
約4000万人以上の人の生活に欠かせないものとして、年金は人々の生活に浸透しています。
 
年金をもし無くしてしまうと高齢者の生活は子供などの家族が面倒見るとか、生活保護で何とかするしかなくなってしまう。
 
若い人たちの生活にも多大な影響を及ぼす事になる。
 
 
さて、遠い昔から少子高齢化は進行し続ける事がわかっていたため、この50年間の間に高齢化に対応した年金にするために何度も年金は改正してきました。
 
少子高齢化が進むなんて昔から分かっていた事だから、そういうのを踏まえて年金を改正し続けてきたわけです。
 
 
昔から「このままだと年金給付費が膨れ上がって、若い人の保険料負担が過大なものになる…」という事が憂慮されてきました。
 
だから、年金の水準を下げたり、支給開始年齢の引き上げをしようというような事が考えられました
 
 
年金というと昔は60歳から貰うものというイメージが強かったですが、平均寿命や平均余命が著しく伸びていったので引退してからの年金受給期間が長くなっていく一方でした。
 
年金ができた頃の昭和20年前後の時は寿命が50歳台であり、60歳から年金を貰うというのはちょうどいいものでした。
 
 
しかし、昭和30年代になると平均寿命は男性は65歳あたりになり、女性は70歳に到達しました。
 
 
昭和50年代に入ると男性は70歳台に到達し、女性は75歳を超えてきました。
 
 
昭和60年になると女性は80歳に到達しました(男性が80歳台になったのは平成25年)。
 
 
寿命がどんどん延びてきたわけですね。
 
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※参考
平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳ですが、0歳児がいつまで生きるかを表す。
平均余命は今の年齢時点の人が、今後何歳まで平均的に生きるのかを表す。
 
例えば今65歳の人で男性の平均余命は約85歳であり、女性は約90歳となっている。
なので基本的には平均余命のほうを見るのが正しく判断できる。
 
※各年齢の平均余命(厚生労働省)
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そうすると年金受給年齢とのバランスが悪くなってきたのです。
 
 
全体の年金給付費も昭和45年あたりは年間1兆円行かないくらいだったのに、高齢化のスピードが早いし支給開始年齢はまだ60歳だったので10年後には10倍の年金給付費になってしまいました。
20年後には20倍になった。
 
 
更に昭和48年の石油ショックで日本の税収は半分になってしまい、国の財政はついに赤字になっていきました。
 
深刻な不況に陥る中で、今後の事を考えると年金の増加を抑える必要が出てきました。
 
昭和50年代に入ると今までは年金を上げていたのを抑制の方向に転換していく事になってきたわけです。
 
 
この辺から年金の支給開始年齢を引き上げたり、年金の水準を下げるという事がいろいろ議論になるようになりました。
 
 
なので早速、昭和55年に厚生年金の支給開始年齢を60歳から65歳にしようという改正をしたかったのですが、野党や労使からの反発でできずに結局20年後の平成13年からようやく実行する事になりました。
 
 
60歳から65歳までの引き上げは2030年(令和12年)完了です。
 
 
 
さすがに平均寿命が80歳以上なのに60歳からの年金支給開始年齢だと早すぎるので、そこは65歳に引き上げたわけです。
 
と言ってもまだ引き上げ最中なので、年金の支給開始年齢の引き上げというのは多くの反発があるし、時間はかかるしで簡単なものではありません。
 
 
60歳から65歳に引き上げれば済む話という簡単な問題ではなく、急に引き上げると生活を壊してしまう危険があるので、60→61歳、61歳→62歳…64歳→65歳というように、数年ずつに1歳ずつ引き上げるようなじれったい事をやるわけです
 
 
もう一つ年金額を引き上げていた要因もありました。
それは、昭和30~40年代というのは高度経済成長期だったので、人々の賃金が著しく上がっていった事です。
 
 
 
老後の社会保障としての機能を持つ年金ですが、現役時代の頃の賃金との差が開き始めてきました。
 
 
例えば現役の頃の給与が30万あったのに、老後の年金は1万円です…となると全然老後保障になりませんよね。
 
じゃあどうするか。
 
 
年金額を意図的に引き上げていくしかないので、約5年間隔で改正して年金額の水準を大きく引き上げていきました
 
 
ところが現役世代の人の賃金の伸びが毎年10%とか物価の伸びが毎年5%とかそのくらいのものだったので、改正して年金額を引き上げてもすぐ現役世代の賃金との差が出来てしまいました。
 
 
そこでわざわざ改正しなくても、物価や賃金の伸びという経済の変動率を年金にスライドする方法(物価スライド制)が昭和48年から導入される事になり、これにより毎年改正しなくても年金は自動で物価や賃金の伸びを反映するようになったのです。
 
ちょうど石油危機の年だったから、物価が2年で約40%ほど上がったので年金も同じだけ上がる事になりました。
当時は狂乱物価と呼ばれました。
 
 
これが現在も、年金額変動の場合の大原則となっています。
 
 
まあ、現在は平成16年の改正からはそんな単純なものではなくなりましたが、考え方の原則は物価や賃金が上下すれば年金も上下するものであるという事です。
 
 
よく年金の抜本的な改革という事が言われたりしますが、結局のところ日本の経済が良くならない限りはどんなに年金の構造を変えても解決はしないので覚えておきましょう。
 
年金が下がる時はどうしてもいろんな不安を煽る話が増えるからですね…^^;
 
 
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4月6日の第236号は「新しくなった年金の繰上げ制度と、年金を早めに貰えるようにした歴史」

4月13日の第237号は「4月から変わった加給年金の加算ルールとその事例」

4月20日の第238号は、「遺族年金が貰えない場合や貰えるパターンの事例4つ」。

4月27日の第239号は「障害年金を貰ってる最中に年金額が変化する時」

3月2日の第231号は「著しく増加した非正規雇用者の厚生年金適用と、年金に組み込まれた所得再分配機能」を発行しました。

3月9日の第232号は「20歳前障害基礎年金事例と、障害厚生年金受給者が複数の傷病を負った時」

3月16日の第233号は、「すべての人が何らかの年金に加入した国民年金創設時と、年齢的に国民年金に途中から加入する事になった人」

3月23日の第234号は「年金の下落と、年金額変動の仕組み(1)」
 
3月30日の第235号は「年金の下落と、年金額変動の仕組み(2)」

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