本来の年金受給開始年齢まで待つか、月額2万くらい減らしてでも今から貰うか…(年金の繰上げ) | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

おはようございます!

年金アドバイザーのhirokiです。

久しぶりに普通にブログ記事を書いた気がします^^;
何かと今年はやらなければならない事が多くて、手が回らなかったですね…

 


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では本題です。

 
厚生年金を貰う年齢が平成13年4月より60歳から65歳へと引き上がり始め、現在も65歳へ向かって引き上げ中であります。
 
厚生年金が引き上がってるのであり、国民年金から支給される老齢基礎年金は元々65歳からの支給です
 
 
なので現在65歳前から貰えてるのは厚生年金や共済年金(平成27年10月から厚生年金に統合)です。
 
 
厚生年金は60歳から貰えるのが昔は普通でしたが、少子高齢化が進み続ける事により年金財政を悪化させる一方になってしまうので、平成6年に支給開始年齢の引き上げが決まりました。
 
 
なお、会社の定年退職が60歳であるため、退職したら60歳からは年金生活を…と考えていた人が、支給開始年齢の引き上げでしばらく貰えない期間が生じてしまうので、その間の収入を確保するために雇用継続したり、定年廃止したり高齢者雇用の確保が盛んになりました。
 
 
本来は60歳から貰える厚生年金がしばらく貰えないと無年金期間が出来てしまうので、その間は働けるように雇用を確保し始めたわけです。
 
 
さて、今から年金を貰う人は60歳から貰えるという事は無いですが、請求により60歳から貰ったりする事は出来ます。
 
 
これを年金の繰上げといいます。
 
 
 
本来の支給開始年齢よりも早く貰えるなら早く貰いたい!と思ってしまいそうですが、実際はあまり良い制度ではありません。
 
なぜなら本来貰うはずだった年金額よりも減ってしまうからです。
(その他諸々注意する事はありますが…)
 
その減額は一生続きますので、低い金額のまま受給し続ける事になります。
 
1ヶ月単位で早めるごとに0.5%ずつ減額されます。
 
よって、65歳じゃなくて60歳から貰うとすれば、60ヶ月間早く貰うので0.5%×60ヶ月=30%の年金が減額されます。
 
高齢者の貧困の問題などの原因を促進してしまう事にもなりかねないので、支給開始年齢よりも早くもらう事はおススメはしていません。
 
 
 
ただし、人によってはそれでも早く貰いたいという人がいますので、その意思は尊重しないといけません。
 
 
ところが、年金額が減らされてしまうにもかかわらず、昔から意外と利用者が多いです。
 
 
この減額率については、本来の年金支給開始年齢より前から貰えるのでそのペナルティが年金減額という説明もありますが、実際はペナルティを付けたわけではありません。
 
早く貰い始めたとしても、65歳から貰い始めても平均余命までの年金受給総額が変わらないようにという事での減額率です。
 
 
 
余談ですが、この年金の繰上げが導入されたのは、国民年金が始まった昭和36年4月からです。
 
国民年金は昭和36年の時から65歳支給でしたが、厚生年金が60歳支給だったので、国民年金も60歳から貰えるようにしてほしいという声に応えたものです。
 
国民年金は主に自営業者や農家の人が加入するものでしたので、支給開始はサラリーマンが加入する厚生年金より遅くてもいいだろうと考えられていました。
 
 
ただ、自営業や農家の人であっても65歳前には引退したいという人もいるからですね。
 
 
だから年金の繰上げというものができるようにしました。
 
 
さて、もう60年間ほど存在する年金の繰上げ制度ですが、令和4年4月1日以降のは1ヶ月の減額率が0.5%から0.4%に緩和されるようになりました。
 
この緩和で年金の繰上げができる人は、昭和37年4月2日以降生まれの人からです(令和4年4月1日以降60歳を迎える人)。
 
 
昭和37年4月1日以前生まれの人が、年金の繰上げを請求する場合は1ヶ月0.5%の減額率となります。
 
 
 
今回は年金の繰上げによる計算をしてみましょう。
 

1.昭和35年5月17日生まれの女性(今は61歳)
・(令和3年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!
https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12647918035.html?frm_id=v.jpameblo&device_id=7cd95ce704ad47c5b63603dfd93ac9f2

 
18歳年度末の翌月である昭和54年4月から平成15年3月までの288ヶ月間は会社で働き、厚生年金に加入する。
なお、この間の平均給与(平均標準報酬月額)は28万円とする。
 
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※注意
20歳になるのは昭和55年5月からなので、この時から平成15年3月までの275ヶ月間が老齢基礎年金に反映される。
厚生年金期間は国民年金第2号被保険者という。
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退職し、平成15年4月からは公務員の夫の扶養に入ったため国民年金第3号被保険者となる。
第3号被保険者は年金保険料を納める必要は無いが、将来の老齢基礎年金には反映する。
 
 
平成15年7月に失業手当をハローワークに申請に行ったが、自己都合退職だったので当時3ヶ月間の給付制限になり、平成15年10月まで給付制限がかかったものの、国民年金第3号被保険者にはなれた。
 
つまり平成15年4月から平成15年10月までの7ヶ月間が第3号被保険者。
 
(失業手当は20年以上の雇用保険期間があり、自己都合退職の場合は150日間)
 
 
平成15年11月分から平成16年3月分までの5ヶ月間失業手当を受給するが、その間は国民年金第3号被保険者にはなれなれずに、国民年金第1号被保険者として国民年金保険料を納める必要があったが5ヶ月未納(令和3年度月額16,610円)。
 
失業手当の年間見込み収入が130万円を超えると第3号被保険者から外れる。
 
平成16年4月からはまた第3号被保険者になったが、夫は令和元年3月末に退職したため、180ヶ月間が第3号被保険者。
 
 
令和元年4月からはまた国民年金保険料を納める必要があったが、60歳前月の令和2年4月までの13ヶ月間は未納とした。
 
 
なお、夫とはとりあえず2年くらい前に離婚したものとし、この女性が64歳の時に3歳年下の男性(昭和38年生まれ)と再婚したとします。
 
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さて、この女性は令和2年5月16日に60歳到達しますが、厚生年金は62歳からの支給となります。
国民年金は65歳から。
 
ちなみに、老齢の年金を貰う最低受給資格期間は120ヶ月以上無いといけません。
120ヶ月以上は余裕でありますね^^
 
さらに、62歳からの厚生年金を貰いたい場合は1年以上の厚生年金期間が必要ですが、これも大丈夫です。
(1年以上無い人は厚生年金は65歳支給となる)。
 
 
よって老齢の年金は貰えます。
 
 
・62歳(令和4年5月)の翌月分から貰う予定の老齢厚生年金(報酬比例部分)→28万円×7.125÷1000×288ヶ月=574,560円
 
次に65歳から貰う老齢基礎年金。
 
 
老齢基礎年金は国民年金強制加入の20歳から60歳前月までの480ヶ月間で計算する。
 
ア.国民年金同時加入とする厚年期間(国民年金第2号被保険者期間。昭和55年5月~平成15年3月までの275ヶ月)
イ.国民年金第3号被保険者期間187ヶ月。
他の18ヶ月間は未納。
 
 
・65歳からの老齢基礎年金→780,900円(令和3年度満額)÷480ヶ月×(187ヶ月+275ヶ月)=751,616円
 
 
あと、老齢厚生年金の差額加算→1,628円(令和3年度定額単価)×288ヶ月(全体の厚年期間)ー780,900円÷480ヶ月×275ヶ月(20歳から60歳前月までの国民年金同時加入してる厚年期間)=468,864円ー447,391円=21,473円
 
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※少し補足
差額加算というのは、昭和61年3月まで厚生年金で支給していた定額部分という年金と昭和61年4月以降に国民年金から老齢基礎年金として支給し始めた金額の差。

昭和61年3月31日までの厚生年金は「報酬比例部分+定額部分」だったが、昭和61年4月1日以降の厚生年金は「報酬比例部分+老齢基礎年金」となった。

定額部分は厚生年金に加入した期間に比例する年金であり、国民年金も同じく厚生年金加入期間に比例する。
 
ただ、昭和61年3月31日をもって定額部分は廃止して、その後は65歳から国民年金から老齢基礎年金が支払われる事になったが、両者の計算のやり方が異なっていたのでどうしても差額が出てしまった。
 
定額部分は全体の厚生年金で計算していたけども、老齢基礎年金は20歳から60歳までの厚年期間しか使わない。
どうしても従来の計算より低額になってしまったので、従来の計算より下がらないように差額加算を計算して支給して配慮されている。
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よって、62歳(令和4年5月)からは574,560円が支払われ、65歳からは老齢基礎年金751,616円と差額加算21,473円の支払いが始まる。
 
65歳総額は1,347,649円(月額112,304円)。
 
 
 
さて、令和3年5月に61歳になりましたが、まだ受給は先ですよね。
 
 
 
 
夫と離婚した事も影響して、生活がやや苦しかったため、年金を本来より早く貰う年金の繰上げを令和3年5月中に請求して受給する事にした。
 
 
そうすると、老齢厚生年金は本来貰う62歳より12ヶ月早く貰うから0.5%×12ヶ月=6%の減額。
 
老齢基礎年金や差額加算は本来の65歳より48ヶ月早く貰うから0.5%×48ヶ月=24%の減額となる。
 
 
 
となると、老齢厚生年金574,560円×94%=540,086円
 
老齢基礎年金751,616円×76%=571,228円で、差額加算21,473円×76%=16,319円となる。
 
 
ちなみに差額加算の減額分5,154円(→21,473円ー16,319円)は、差額加算からは引かずに報酬比例部分から差し引いて、差額加算は全額支給する。
 
よって、老齢厚生年金(報酬比例部分540,086円ー差額加算の減額分5,154円+差額加算21,473円)+老齢基礎年金571,228円=1,127,633円(月額93,969円)
 
 
月額としては2万円くらい減りましたね。
 
 
この年金を一生涯受給する事になりますが、64歳の時に3歳下の男性と婚姻したので、女性が65歳になった時に配偶者加給年金(年額390,500円)が老齢厚生年金に加算される事があります。
 
 
※追記
差額加算の繰上げ減額分を報酬比例部分から引いたのは、差額加算自体は規定により当分の間(いつまでという期限は今のところ無いです)は減額せずに支払う事になっているため。
 
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まぐまぐ大賞2020受賞。
 
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11月10日の第215号は、「年金貰える年齢になっても働いてるなら年金は支払わなかった歴史と、令和4年からの在職老齢年金計算」

11月17日の第216号は、「20年ほど前まで1200万人も加入していた厚生年金基金はなぜ崩壊していったのか」

11月24日の第217号は、「65歳になると振替加算を付くようにしなければならなかった理由と、老齢基礎年金のやや間違いやすい計算」

11月1日「(号外)障害年金を請求したのに、病状が悪くて年金支給決定前に死亡すると請求は無意味なのか」を発行しました。

11月3日の第214号は、「上がり続けた国民年金保険料と、国民年金実施からの苦難の歴史や世代間の不公平について」を発行しました。

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