65歳からの年金を増やそうとしたのに、他の年金を貰える事になって増額の夢が叶わない時。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんばんは!

年金アドバイザーのhirokiです。
 

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全て読み切り。
https://www.mag2.com/archives/0001680886/
 
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65歳からの年金である老齢厚生年金と老齢基礎年金を貰うのを遅らせると年金が増えていきます。
 
 
今の制度であれば1ヶ月遅らせるごとに0.7%ずつ増えていき、65歳から70歳まで最大60ヶ月間年金を貰うのを我慢すると、0.7%×60ヶ月=42%の年金が増えます。
 
 
たとえば毎年100万円貰える年金が5年後には142万円として毎年貰えるわけですね。
 
なお、令和4年4月1日以降に70歳になる人からは75歳まで年金を貰うのを我慢して増額させる事が出来ます。
 
 
65歳から75歳までの120ヶ月間遅らせるので、その場合は0.7%×120ヶ月=84%年金を増額させる事が出来るという事です。
 
 
聞いた感じだと、とてもオイシイ制度のように見えますがこの年金の繰上げを利用できてる人は年金受給者の人のうち2%もいません。
かなり少数派です。
 
 
本格的に年金受給が始まる65歳の年齢から、またしばらく年金を我慢するわけですから、その間の生活をどうするかというのがよく問題になります。
 
 
この年金の繰り下げを前もって見込んで、しばらく受給を我慢できるだけの貯蓄をしておくとか、民間の年金を利用する、もしくは継続雇用で当面の生活ができるという人向けの制度ともいえる。
 
 
特に高齢者雇用が現代は多いので、その間は年金を貰わないという事で老後の年金を豊かにするのもいいですね。
 
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※注意
昭和36年4月1日以前生まれの男子、昭和41年4月1日以前生まれの女子は65歳前から厚生年金が貰える特別支給の老齢厚生年金がありますが、これは貰うのを遅らせても増えない。
 
よって、65歳前から貰える人は年金請求書が送付されてきて、支給開始年齢になったら速やかに請求しましょう。
 
あくまで増えるのは65歳から支給される老齢基礎年金や老齢厚生年金(65歳到達月にまた簡易タイプの年金請求書が来る)。
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さて、繰下げの制度を利用する時に、年金を貰うのを遅らせて増やす事が出来なくなる事態が発生する事があります。
 
本人は年金を増やしたいからまだ貰いたくないんだけど、繰下げが途中でできなくなる事があります。
 
 
よくあるのが老齢以外の他の年金を貰うようになった時です。
 
 
特に女性が貰う事が多い遺族厚生年金ですね。
 
 
 
60代以降の年齢になると、配偶者が亡くなるケースというのが増えてきます。
 
 
夫婦のうちどちらかと言えば夫のほうが先に亡くなるケースが多いので、妻が遺族厚生年金を貰うという事になりがちです。
 
この時に妻が65歳からの老齢の年金貰うのを我慢して増やそうと考えていたところで、遺族厚生年金の受給権を持つようになってしまうと「他の種類の年金」を貰える事になるので老齢の年金繰り下げは不可となります。
 
 
老齢の年金を増やしたいからまだ遺族厚生年金貰わなくていいわ!と思って遺族年金請求しなくても、夫死亡時点で遺族年金の受給権が発生してしまうので、やっぱり繰下げする事が出来なくなる。
 
 
 
なぜ他の年金を貰えるようになると年金の繰り下げが出来なくなるのかというと、さっきの遺族厚生年金を貰いながら老齢の年金を繰下げできるとなると、年金を貰いながら年金を増やすみたいな都合のいい状況になるからです。
 
 
このような都合のいい事はほぼ規制されてると思って間違いないです^^;
 
 
 
 
よって、繰下げを利用したい人の関門としては、当面の生活資金の問題だけでなく、他の種類の年金の受給権が発生するかどうかという所。
 
 
 
令和4年4月1日以降に70歳になる人は、最高75歳まで年金を遅らせる事が出来ますが、そこまでできる人はまさにほんの一握りでしょう。
 
あまり期待しすぎないほうがいいですね…
 
 
さて、今回は65歳から年金を繰り下げてる人が途中で他の年金を貰う事になった場合に、一体どういう貰い方になるのかという面を考えてみましょう。
 

 
1.昭和29年5月8日生まれの女性(今は67歳)
・(令和3年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!
https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12647918035.html?frm_id=v.jpameblo&device_id=7cd95ce704ad47c5b63603dfd93ac9f2

・絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方。
https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12649134483.html?frm_id=v.jpameblo&device_id=7cd95ce704ad47c5b63603dfd93ac9f2
 
 
20歳になる昭和49年5月時点では短大に通っていて、昭和50年3月までの11ヶ月間は国民年金に任意の加入だった。
11ヶ月間は国民年金に加入しなかったためカラ期間となる。
 
 
昭和50年4月から昭和52年6月までの27ヶ月間は厚生年金に通うが、昭和52年7月にサラリーマンの男性との婚姻を機に退職する。
 
なお、27ヶ月間納めた厚生年金保険料は脱退手当金という一時金で、一定額を返金してもらった。
27ヶ月はカラ期間になる。
 
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※参考
昭和61年3月31日までの制度には厚生年金保険料を返還する制度があり、5年以上の期間を持ち、その後年金が貰える可能性が無い人は返還した。
 
なお、女子は昭和29年5月から昭和53年5月までの間に2年以上の期間があると、それをもって請求により返還した。
 
女子は昭和の時代は雇用期間が短かったので脱退手当金による一時金受給を有利にしていた。
この一時金による返還の制度は主に女子のために昭和19年に作られた制度でもある。
 
昭和61年4月以降は原則として廃止された(ほとんどの人が年金に結び付くようになったから)。
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昭和52年7月からはサラリーマンの専業主婦だったから国民年金には加入する必要は無く、頑張って加入はしなかった。
 
任意で加入しなかった期間はカラ期間になる。
 
 
昭和52年7月から昭和61年3月までの105ヶ月間はカラ期間になる。
 
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※注意
カラ期間は年金額にはならないが、年金受給資格期間最低10年には入る期間。
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昭和61年4月に国民年金第三号被保険者制度が始まり、サラリーマンや公務員の専業主婦も強制的に国民年金に加入する事になって、将来は妻自身の名で老齢基礎年金を貰えるような制度になった。
 
 
ところで昭和62年8月22日(初診日)に聴神経の腫瘍が見つかり、10月12日に摘出手術を行う。
摘出手術をしたものの聴力が弱り、聴力レベル値が70デシベルほどだった。
 
 
聴力の状態が良くなったり悪くなったりだったが、初診日から1年6ヶ月経過した日(障害認定日)である平成元年2月22日時点での聴力レベル値が90デシベルだったので障害基礎年金を請求するに至る。
 
 
障害基礎年金は20歳になって年金に加入するようになってからの初診日の前々月(昭和62年6月)までに3分の1を超える未納(それがダメなら直近1年以内に未納が無ければいい)があったら請求できないが、この女性は昭和61年4月から昭和62年6月までの期間で見る。
 
カラ期間となる月はカウントしないので注意。
 
 
昭和61年4月から62年6月までに特に未納は無いから障害基礎年金2級(令和3年度満額780,900円)が請求により平成元年2月22日の障害認定日の翌月分から支給されるようになった。
 
 
その後、聴力の状態は回復しないものとして一生涯、障害基礎年金2級780,900円が出る事になった。
 
 
 
年金記録のほうに話を戻すと、昭和61年4月から平成18年8月までの245ヶ月間は国民年金第三号被保険者期間とする。
障害基礎年金2級の受給者のなので国民年金の法定免除になるという認識が強いですが、3号になれるなら3号被保険者となる)
 
 
平成18年9月から60歳後の平成28年10月までの122ヶ月間は厚年に加入する(国民年金の老齢基礎年金を計算する時は60歳前月の平成26年4月までの期間。92ヶ月)。
 
なお、この122ヶ月間の平均給与は16万円とします。
 
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さて、この女性は障害基礎年金2級年額780,900円を一生貰える人ですが、女性自身が加入した厚生年金が60歳から貰える人。
 
 
この女性の60歳からの老齢厚生年金は年額10万円ほどなので、金額の高いほうである障害基礎年金2級を貰い続けるものとします60歳から65歳までは複数の年金貰えても1つの種類を選択する)。
 
 
 
65歳からの年金総額を計算します。
 
 
・老齢基礎年金→780,900円÷480ヶ月×(3号245ヶ月+2号92ヶ月)=548,257円
 
・老齢厚生年金(報酬比例部分)→16万円×5.481÷1000×122ヶ月=106,989円
 
・老齢厚生年金(差額加算)→1,628円(令和3年度定額単価)×122ヶ月ー780,900円÷480ヶ月×92ヶ月(20歳から60歳までの国民年金同時加入となる厚年期間)=198,616ー149,673円=48,943円
 
 
老齢の年金だけの総額は老齢厚生年金(報酬比例部分106,989円+差額加算48,943円)+老齢基礎年金548,257円=704,189円。
他に今までの年金保険料支払い期間により年金生活者支援給付金も貰えますが、今回は計算は割愛します。
 
 
なお、障害基礎年金に関しては老齢厚生年金との併給が65歳から可能なので、障害基礎年金2級780,900円+老齢厚生年金(報酬比例部分106,989円+差額加算48,943円)=936,832円で貰ったほうがトクですね。
 
障害基礎年金受給者の人は障害年金生活者支援給付金月額5030円(1級は月額6,288円)も貰える。
 
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※注意
障害厚生年金受給者の人は老齢厚生年金や老齢基礎年金との併給は不可。
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ところで…今回のテーマは年金の繰り下げだったんですが、この女性は65歳から老齢の年金はしばらく貰わないでおこうと考えていた。
 
 
 
あれ?この女性はすでに老齢以外の他の種類の年金が貰えてるから年金の繰り下げは利用できないのではと思われたかもしれませんが、障害基礎年金を貰ってる人は老齢厚生年金のみであれば繰下げできるという例外がある。
 
 
 
よって、老齢厚生年金(報酬比例部分106,989円+差額加算48,943円)=155,932円を65歳から71歳まで貰わずに繰り下げようかと考えた
 
 
71歳までであれば、0.7%×72ヶ月=50.4%増額(155,932円×150.4%=234,522円)。
 
 
 
でも繰下げ中である現在の67歳時に、夫が死亡して遺族厚生年金年額90万円の受給権が発生した。
 
 
なお、遺族厚生年金90万円は妻の老齢厚生年金分155,932円引かれて支給されるので、744,068円が遺族厚生年金となる。
つまり、遺族厚生年金744,068円+老齢厚生年金155,932円=90万円。
 
 
 
そして遺族厚生年金が発生したので、夫死亡した後に女性が老齢厚生年金を貰うのを我慢しても繰り下げ増額はできない。
 
 
こうなると女性が67歳の時の、夫死亡時点で老齢厚生年金の繰り下げを申し出たものとして計算する。
 
 
 
65歳から67歳までの繰り下げだと、24ヶ月×0.7%=16.8%増額なので、155,932円×116.8%=182,129円を67歳以降貰う。
 
65歳から67歳まではもちろん老齢厚生年金は1円も貰っていないですよね。
 
 
 
ココで考えてもらいたいのは、遺族厚生年金は妻の老齢厚生年金分が引かれて支給されますが、67歳から繰り下げ増額で老齢厚生年金182,129円まで増えましたよね。
 
 
こうなると遺族厚生年金90万円ー老齢厚生年金182,129円=遺族厚生年金717,871円となる。
つまり、遺族厚生年金717,871円+老齢厚生年金182,129円=90万円となり、65歳時点の繰り下げ増額しない場合と金額が同じになる。
 
 
 
繰り下げ増額するだけ無駄だったという事になります^^;
 
これでは年金を貰うのを遅らせただけ全くの無駄なので、65歳から67歳まで貰わなかった繰り下げ増額しない老齢厚生年金155,932円×2年=311,864円を65歳から遡って貰うようにする(繰下げは辞退するのを申し出)。
 
 
 
なので繰下げするつもりの人は、今後遺族厚生年金が発生するかどうかを考えておく必要があると言えます。
 
余談ですが遺族厚生年金と障害基礎年金は併給して受給できますが、遺族厚生年金に加算される経過的寡婦加算(昭和31年4月1日以前生まれの妻のみ)は障害基礎年金との併給時は経過的寡婦加算は全額停止になる。
 
 
※追記
繰下げは65歳以降1ヶ月単位で増えていきますが、最低でも66歳誕生日の前日までの1年間は待つ必要がある。
 
例として65歳8ヶ月というような事はできない。
 
あと、65歳前から貰える老齢の年金は遅らせて増やすという事はできないので、早急に受給しましょう。
 
 
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5月12日の第189号は「労災が起こった場合の遺族給付と日本年金機構からの遺族厚生年金との併給。」

5月19日の第190号は、「交通事故で被害者やその家族に発生する損害賠償と年金の変則的支払い。」
 
 
5月5日の第188号は「遺族年金を貰いながら頑張って働いても、年金の増え方が圧縮されてしまう事例」を発行しました。

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