65歳以上の人が傷病を負っても原則として障害年金請求不可。仮に請求できても… | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんにちは!

年金アドバイザーのhirokiです。
 
 
 
万が一、病気や怪我で働く事が困難になった場合の保障として障害年金があります。

 
障害年金を請求する条件としては、必ず初診日(その傷病で初めて病院に行った日)というものが必要であり、その初診日を特定しないといけません。
 

初診日は受診した病院のカルテなどに残っていますが、受診しなくなって5年が経つとカルテが廃棄されてるなどして初診日が特定できなくなる事があります。
(5年が過ぎてもカルテが残ってる事もある。割と大病院は残ってたりする)
 
 
カルテが無くても客観的にココが初診日であると判断できそうな資料があったら、それでも初診日の確認は可能であります。
 
 
その初診日を特定出来たら、次は初診日前の年金保険料納付記録を確認します。
 
 
初診日という保険事故が起こる前に、事前に自分のできる限りの努力として年金保険料を納めて備えていたかな?という事を確認するためです。
 
 
年金は保険なので、あらかじめ保険事故が起きる前に自分で備えておく必要があります
 
 
あまりにも未納が多いと、そのような努力を怠ったものとして、障害年金の請求はできませんよという事になる。
 
 
初診日の前日において、初診日の前々月までに国民年金の被保険者期間がある場合は、その被保険者期間の3分の2以上が保険料納付済みもしくは免除期間でなければならないと定められています。
 
それか、初診日の前々月までの直近1年間に未納が無ければそれでもいい(65歳未満の人に限る)。
 
 
「初診日の前日において」というのは、初診日という保険事故が起こった日に慌てて過去の保険料を納めて、障害年金給付を受けようという場合を避けるためです。
 
 
事故が起こってから保険料納めて、保険金を受け取るという事が出来ないという事と同じですね。
 
 
「初診日の前々月までに」というのは、その月の年金保険料の納付期限が翌月末である事によるものです。
 
 
今は8月ですが、8月分の保険料は9月末までに納めてくださいという事になります
 
 
例えば10月に初診日があると、初診日の前々月である8月分の保険料まで見るわけですが、8月分の納付期限が9月末だから10月になれば8月までの保険料納付記録が確定しますよね。
 

9月の保険料が滞納なのか納付なのかはまだ10月中は確定してない。
 
 
なので国民年金保険料の納付期限を考慮しての、初診日の前々月までの記録で見るわけです。
 
 
 
さて、その初診日と保険料納付記録というハードルを越えたら、次はお医者さんに診断書(年金専用のもの)を書いてもらう必要があります。
 
障害年金が貰えるかどうかはほぼ診断書で決まります。
 
診断書の料金は5000円から1万円くらいですね。
 
 
保険適用外なのでそのくらいの料金が一般的にかかります。
 
 
 
診断書の結果、初診日が国民年金のみだった人であれば障害等級が2級または1級であれば障害基礎年金が支給されます。
 
初診日が厚生年金加入中だった人は障害厚生年金が3級から1級まで支給されます(3級より軽い障害が残った人は一時金もある)。
 
厚生年金の人のほうが給付も手厚く、範囲は3級までと広いです。
 
 
 
さて、病気や怪我を負うのはどの年代でも起こる事ではありますが、やはり高齢になるほど病気も増えて、ケガなども増えたりします。
骨折から寝たきりという事も起こりえます。
 
 
 
じゃあもし65歳以上の高齢者の人に重い病気や怪我で思うように日常生活が送れなくなった時に、障害年金が請求できるのかというとそれは原則として不可となります。
 
 
高齢者こそ病気や怪我が増えるから障害年金が大切になるような気がしますが、障害年金は65歳以上の高齢者は請求が原則としてできなくなります。
 

なぜかというと65歳以上になると、よっぽどの事が無い限り老齢の年金が貰えるようになるからですね
 
 
老齢の年金で生活保障されるようになるから、障害年金を請求して障害年金で生活保障という事はしなくてもいいよねという判断からです。
 
結局は一人に保障される生活は一つなので、老齢の年金で生活保障して、更に障害の年金で生活保障となると過剰給付を招く恐れがあります
 
 
 
よって、老齢の年金の支払いが本格的になる65歳以上の人は障害年金の新規の請求は原則として不可になります。
 
 
 
しかし、中にはできる人もいます。
 
その中でも65歳以上でも厚生年金に加入してる人ですね。
 
 
65歳から70歳までは厚生年金に加入できるので、もしこの間に初診日があれば障害厚生年金の請求が可能となります
 
 
ちなみに国民年金からの障害基礎年金の請求はというと、それはもう無理ですね。
65歳以上の人は国民年金には加入してないからです。
 
 
65歳以上の人というのはよっぽどの場合を除いて国民年金には加入できません。
 
なぜなら65歳になると国民年金から老齢基礎年金の支給が始まってるのに、その後も国民年金に加入するという事はおかしいからです。
 
20歳から65歳までの間の国民年金保険料納付記録の集大成を老齢基礎年金として支給するのに、65歳以降も国民年金に加入は変ですよね。
 
 
なので、65歳以上の人が障害年金を請求しようとする場合は、やや特殊な場合になります。
 
 
 
それにもう老齢の年金を貰ってる事がほとんどなので、障害年金が老齢の年金を超えないと請求するだけ無駄になってしまうという事も起こります。
 
よって、高齢者の新規での障害年金請求はかなり稀です。
それに請求自体をおススメしない。
 
 
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※注意
65歳前からすでに障害年金を貰ってる人は、65歳以降も障害が続く限り障害年金を貰う事が出来る。
障害基礎年金を貰ってる人は、障害基礎年金と老齢厚生年金の両方を貰う事が出来る。
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というわけで今回は高齢者の人の障害年金受給を見てみましょう。
 


1.昭和29年6月28日生まれの女性(今は67歳)
・(令和3年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!
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18歳到達した年度の翌月である昭和48年4月から昭和53年3月までの60ヶ月間は厚生年金に加入した。
 
昭和53年4月にサラリーマンの男性と婚姻する事になったため、厚生年金に加入して納めた保険料60ヶ月分を脱退手当金として受け取った。
この60ヶ月間は厚生年金に加入しなかったものとなる。
 
女子は昭和29年5月から昭和53年5月までの間に2年以上の厚年期間があると、年齢に関係なく脱退手当金が貰えた。
 
 
なお、60ヶ月間はカラ期間になる(昭和61年4月以降に年金保険料納めたり免除期間があれば)。
 
 
 
 
昭和53年4月から昭和61年3月までの96ヶ月間はサラリーマンの専業主婦だった場合は国民年金に加入する必要は無かったが、将来の事を考えて国民年金に任意で加入した。
 
 
昭和61年4月になるとサラリーマンの専業主婦も国民年金強制加入となり、平成17年6月までの231ヶ月間は国民年金第三号被保険者となる。
 
平成17年7月から平成24年5月までの83ヶ月間は未納とする
 
 
平成24年6月から60歳前月の平成26年5月までの24ヶ月は国民年金保険料を納め、60歳到達月からは国民年金保険料を納めなくてもよくなった(60歳になると強制加入から外れる)。
 
 
ただし、もう少し年金を増やしたくて60歳以降は平成26年6月から平成30年2月までの45ヶ月間を国民年金に任意加入した。
 
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さて、この女性は65歳から老齢基礎年金が貰える。
 
 
・老齢基礎年金→780900円÷480ヶ月×(任意96ヶ月+231ヶ月+24ヶ月+任意45ヶ月)=644,243円
 
 
令和元年10月からは老齢年金生活者支援給付金も貰えるようになった(令和3年10月からは前年所得+前年の公的年金収入≦781,200円以下の場合に支給。住民税非課税世帯)。
 
・年金生活者支援給付金→月基準額5,030円÷480ヶ月×396ヶ月=4,150円(年額49,800円)
 
 
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さて、65歳(令和元年6月)になった後に、友人の会社を手伝うために非正規雇用として働くようになり、厚生年金にも久しぶりに加入する事になった。
 
令和元年6月から令和3年9月現在まで加入中。
 
 
異常な疲労感に苛まれていたので、令和3年2月4日に病院に行き、そこで腎臓の数値の悪さを指摘された。
それ以来、通院が始まる。
 
 
 
思いのほか状態が悪く、令和4年1月16日から人工透析療法を始める(人工透析は障害年金では2級以上になる)。
 
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※参考
障害年金請求の場合は初診日から1年6ヶ月経った日(障害認定日)である令和4年8月4日まで待たなければならない。

ただし、1年6ヶ月経たなくても人工透析を始めて3ヶ月経過した日以降(令和4年4月16日)に請求が可能となる。
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障害年金を請求したいと思って、年金事務所に相談に行くけども65歳以上なので、本来はできないと言われた。
 
 
ただ、初診日が厚生年金加入中なので請求できなくもないが、メリットがない。
 
 
 
どうしてか計算してみる。
 
 
 
まず計算する前に初診日の前々月までに、国民年金の被保険者期間がある場合の過去の保険料納付要件を判定する。
 
 
65歳以上の人なので初診日の前々月までの直近1年間に未納が無い事という特例条件は使えない。
 
 
よって、初診日の前々月までに国民年金の被保険者期間がある場合は、その被保険者期間の3分の2以上が保険料納付済みか免除期間である事」というのを満たさなければならない。

つまり未納が3分の1以下にならないといけない。
 
 
なので昭和53年4月から平成30年2月(最後に国民年金の被保険者だったところ)までの479ヶ月の記録で、未納期間が83ヶ月。
 
 
83ヶ月÷479ヶ月=17.3%なので、未納率は3分の1以下。
 
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※注意
65歳以降(令和元年6月以降)の初診日前に厚生年金に加入してますが、65歳以降の厚生年金期間は保険料納付要件の中には含まない。

あくまで、「初診日の前々月までに国民年金の被保険者期間がある場合は、その被保険者期間の3分の2以上が保険料納付済みか免除期間である事」なので、65歳以降の期間は国民年金の被保険者期間ではない。
 
記事の冒頭でも言ったように、65歳からは老齢基礎年金を貰えるので、それ以降は国民年金の被保険者とはしないから。
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で、障害厚生年金を計算する(人工透析は2級)。
 
障害認定日までの平均標準報酬額を20万円とします。
 
 
・障害厚生年金2級→20万円×5.481÷1000×300ヶ月(最低保障月数)=328,860円
 

2級以上だと普通は障害基礎年金も出るけども、65歳以上の厚年初診日の場合は障害基礎年金は出ない。
 
国民年金の被保険者ではないから。
 
 
ただし、最低保障として585,700円に満たない場合は、585,700円を支給する。
 
 
これは通常は障害厚生年金3級の最低保障額ですが、65歳以上の初診日の人は障害基礎年金が出ない事で3級の額より低い事がある。
 
よって最低保障額を設けている。
 
 
 
585,700円貰えるけども…老齢基礎年金貰ったほうが金額が高いですよね。
 
だから障害年金請求するのは診断書の無駄になってしまう事がある
 
 
※追記
老齢と障害を比べてそんなに金額が変わらない場合は、税金や社会保険料の事も加味すると障害年金のほうがいいかもしれない。
 
あと、人工透析の場合は70歳以上の障害年金受給者の人は永久に支給される。
 

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8月25日の第204号.年金にかかる源泉徴収税額の計算と、確定申告(還付申告)時の税金の計算。

9月1日の第205号は「本来の初診日を適用すると障害年金を請求できる余地が無かったが、元気に生活できていた期間があると…」

9月8日の第206号は、「国民にはよくわからないまま昭和末期から徐々に年金額を引き下げ続けていった過程」

8月4日の第201号は「65歳以上の在職者の年金停止(基金あり)と、そもそも年金が停止される時はこういう条件を満たす必要がある。」を発行しました。

8月11日の第202号は「女子の年金が一般的な支給開始年齢より早めに支給されてきた名残と、その特徴的な年金計算」

8月18日の第203号.70歳以上在職者から見る過去の厚生年金加入記録の特徴と、65歳過ぎて初めて年金受給権を獲得した後。

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