生前に見込まれていた遺族厚生年金が、実際の支給時は遥かに低額となってしまったのは… | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

おはようございます。

年金アドバイザーのhirokiです。
 
 
遺族年金を受給しようという時は、例えば夫が死亡した時に妻や子(18歳年度末未満)が居れば必ず支給するとは限りません。
 
まあ、多くの人が貰えてるから死亡時には遺族年金が発生するものという感覚が強い。
 
 
しかし、遺族年金を支給しようかという時は、亡くなった人の亡くなる前までの年金記録が一定の条件を満たしているかを確認する。
 
年金は大原則として、保険料を支払って将来の万が一に備える保険だから過去の保険料を支払って備えてきたかを確認する。
 
 
あまり保険料の未納が多いと、万が一に備える努力をしなかったものとして、年金も支払われない事がある。
 
 
 
さて、死亡した際に過去の保険料納付記録を確認するんですが、一定の条件で定められてる。
 
死亡日の前日において死亡日の前々月までに保険料を納めなければならない期間がある時は、その3分の2以上が保険料を納付したか、免除期間でないといけない。
 
つまり3分の1以上の未納が無い事っていう事ですね。
 
 
 
例外を除き、20歳からは国民年金に加入しますが、この20歳到達月からは保険料を納める義務が発生し、60歳の前月まではその義務を負う。
 
たとえば、54歳で死亡した時までの34年間の間で、未納が10年で24年間は保険料納付または免除期間だったとします。
 
そうすると34年間のうち「24年間」は3分の2以上になってるかどうかを調べる。
 
 
24÷34=70.58%だから、3分の2以上(66.66%)を満たしているから大丈夫。
 
 
なお、25年以上の有効な年金記録が有るならわざわざその3分の2がどうとかいう納付要件は見ない(本日の事例の場合によっては見る事もある)。
 
 
 
あと、その3分の2を満たせていない人は、死亡日の前々月までの1年間に滞納が無ければそれでも遺族年金は出すという特例が令和8年3月31日まで設けられている。
 
絶望的なほど未納が多い人も少なくとも直近1年間は未納にしないようにしたいところ。
 
ただし、この特例は65歳以上の人は使えなくなるので注意。
 
 
 
このように死亡した時までの納付状況を見るのですが、ちょっと気を付けたい部分を見ていきましょう。
 
 
1.昭和28年6月23日生まれの男性(今年67歳を迎える人)
 ・(令和2年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!

https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12563651891.html


・絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方。
https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12564534484.html

 
 
 
18歳年度末の翌月である昭和47年4月から昭和50年5月までの38ヶ月間は厚生年金に加入する。
この期間の平均給与は19万円とする。
 
 
昭和50年6月からは海外に在住する事になり、昭和62年8月までの147ヶ月間は日本の年金制度には加入しなかった(昭和61年4月からは任意加入ができるようになったが加入しなかった)。
なお、この147ヶ月間はカラ期間にはなる。
 
昭和62年9月から平成2年11月までの39ヶ月間は国民年金保険料全額免除。
 
 
平成2年12月から平成15年6月までの151ヶ月間は未納。
 
 
平成15年7月から平成23年2月までの92ヶ月間は厚生年金に加入する。
この間の平均給与は26万円とします。
 
 
平成23年3月から60歳前月の平成25年5月までの27ヶ月間は未納とする。
 
 
この男性の生年月日によると61歳(平成26年6月)から老齢厚生年金が発生する人。
 
年金記録としては未納期間とか海外行ってて保険料納めてない期間が多いですが、まず老齢の年金が貰えるかを判断する。
 
 
保険料を納めた期間は38ヵ月+92ヵ月=130ヵ月、免除期間は39ヵ月、カラ期間は147ヵ月の合計316ヶ月間となり、この平成26年当時に老齢の年金を貰うために必要な300ヵ月は以上は満たしていたので61歳から貰えた人。
 
61歳からの老齢の年金額は省略。
 
 
その後、平成28年4月から再就職する事になった。
 
ーーーーーーーーーーー
 
夫の65歳(平成30年6月)が近づいてきて、なんとなく夫が死亡した時の遺族年金の保障が気になって、平成30年の1月に妻(50歳とする)が年金事務所に相談に行く。
 
 
相談に行った時(平成30年1月死亡と仮定)の状況で遺族厚生年金を試算してもらった(夫は在職中死亡と仮定する)。
再就職した平成28年4月から死亡月の前月の平成29年12月までの21ヶ月間の平均給与は20万円とする。
 
 
そうすると以下の2通りの金額が提示された。
 
遺族厚生年金→(19万円×7.125÷1000×38ヵ月+26万円×5.481÷1000×92ヵ月+20万円×5.481÷1000×21ヶ月間)÷4×3=(51,443円+131,106円+23,020円)÷4×3=154,177円(月額12,848円)
 
全体の期間が25年以上(300ヵ月以上)ある人の死亡は、わざわざ3分の2とか見ずに実際に加入した厚生年金期間分は遺族厚生年金を出す。
その場合の金額。
 
ーーーーーーーーー
 
次に厚生年金加入中の死亡であれば、実際の厚生年金加入期間が300ヵ月に満たなければ300ヵ月最低保障と計算する事もできる。
さらにオマケの加算として中高齢寡婦加算が付く(夫死亡時に妻が40歳以上で65歳になるまで加算)。
 
 
遺族厚生年金→(19万円×7.125÷1000×38ヵ月+26万円×5.481÷1000×92ヵ月+20万円×5.481÷1000×21ヶ月間)÷151ヵ月×300ヵ月÷4×3=(51,443円+131,106円+23,020円)÷151ヵ月×300ヵ月÷4×3=306,311円
 
 
厚生年金加入中の死亡での遺族厚生年金は、この上に中高齢寡婦加算586,300円も付いて、総額892,611円(月額74,384円)。
 
 
しかし、この厚生年金加入中の死亡の有利な年金を受給するには、過去の保険料納付記録の判定を行う。
 
 
 
過去の保険料の納付状況を見る時は、保険料を納付しなければならない期間の3分の2以上は未納じゃない事が必要ですよね。
 
 
平成30年1月死亡とすると、昭和47年4月から平成29年12月までの549ヶ月間の期間の中で見るが、カラ期間の147ヵ月と60歳到達月である年金には加入してない平成25年6月から平成28年3月までの34ヵ月は省く。
 
 
そうすると549ヵ月ー(147ヵ月+34ヵ月)=368ヵ月の中で考える。
 
 
その368ヶ月間の中に保険料納付済み期間と免除期間が38ヵ月+39ヵ月+92ヵ月+21ヵ月=190ヵ月となる。
割合として190ヵ月÷368ヵ月=51.63%なので、3分の2以上(66.66%)を満たしてないので、これだと不可。
 
 
じゃあ、死亡日の前々月までの1年間に未納が無ければいいという特例があるからそれで見ると、平成28年12月から平成29年11月までの1年間に未納が無いから条件を満たすから、総額892,611円の遺族厚生年金を貰う事ができるという事だった。
 
 
 
しかしながら妻が65歳になると中高齢寡婦加算が無くなるから気を付けてくださいと。
その場合は892,611円ー586,300円=306,311円になってしまう。
 
ーーーーーーー
 
 
さて、平成28年4月から厚生年金に加入して働いていた夫が、令和2年(平成だと平成32年にあたる)7月20日に厚生年金加入中に死亡した。
夫は享年67歳だった。
 
60歳以降に働いた期間は平成28年4月から令和2年6月までの51ヶ月間。
この期間の平均給与は25万円とする。
 
 
なので、妻は遺族厚生年金を請求しに行ったが、支給された年金が試算されていた892,611円よりはるかに少ないものだった。
 
 
遺族厚生年金→(19万円×7.125÷1000×38ヵ月+26万円×5.481÷1000×92ヵ月+25万円×5.481÷1000×51ヶ月間)÷4×3=(51,443円+131,106円+69,883円)÷4×3=189,324円(月額15,777円)
 
 
厚生年金加入中に死亡したら300ヵ月の最低保障が付いて、さらに妻が65歳未満だったら中高齢寡婦加算586,300円が付くんじゃなかったのかびっくり!?
 
 
一体何が起こったんでしょうか。
 
 
 
これはですね、保険料の納付要件を満たしてないからです。
 
 
まず昭和47年4月から死亡日の前々月までの令和2年5月までの578ヶ月間で見ます。
保険料納付要件を見る時は、カラ期間147ヵ月と60歳到達月の平成25年6月から平成28年3月までの34ヵ月、そして65歳到達月以降の平成30年6月から令和2年5月までの24ヵ月を除く(ココ注意)。
 
 
そうすると、578ヵ月ー(147ヵ月+34ヵ月+24ヵ月)=373ヵ月間の中でどのくらい保険料納付または免除してるかを見る。
 
 
保険料納付済み期間と免除期間が38ヵ月+39ヵ月+92ヵ月+26ヵ月(平成28年4月から65歳到達月の前月である平成30年5月まで)=195ヵ月となる。
 
 
195ヵ月÷373ヵ月=52%ほどしか満たしておらず、この条件では不可。
 
 
 
じゃあ、直近1年に未納が無ければ…という特例は、65歳以上の人の死亡では使えない。
 
 
よって、この夫が死亡するまで実際に加入した厚生年金期間(38ヵ月+92ヵ月+平成28年4月から令和2年6月までの51ヶ月間=181ヵ月)での年金計算となったので、189,324円(月額15,777円)という非常に少ない遺族厚生年金の結果となってしまった。
 
 
※追記
今回のように保険料納付要件を見る時は65歳以降の期間は含まない。
 
これは「保険料納付済期間」がどういうものなのかという事を考えないといけない。
保険料納付済み期間というのは国民年金第1号被保険者期間(1号とみなされた期間を含む)、2号被保険者期間(2号とみなされた期間を含む)、3号被保険者期間です。
 
保険料納付要件を見る時は昭和36年3月までの厚年や共済期間も保険料納付済期間とみなしている。
 
 
しかし、65歳以上の老齢基礎年金が貰える人の厚生年金期間は国民年金第2号被保険者期間とみなされていないので納付要件においての納付済み期間にはなっていない。
 
もう65歳以上になって国民年金から老齢基礎年金が貰える人なんだから国民年金の被保険者ではないよねって事ですね^^;
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・事例と仕組みから学ぶ公的年金講座(月額770円税込み毎週水曜日20時にメルマガ発行)
途中で登録されてもその月の発行分はすべてお読みいただけます。

https://www.mag2.com/m/0001680886.html


5月13日の第137号は「年金は75歳から支給しますという事ではないが、支給開始年齢の引上げの歴史と現制度の問題点」
ネットニュースで前半だけ掲載されましたが、後半の事例を含めた内容です。

5月6日20時の第136号は「相次ぐコロナ失業。年金受給者が退職して失業手当を貰う時に停止された年金はどこで支給再開するのか」を発行しました。
 

・有料メルマガバックナンバーはこちらから(現在30ヶ月分以上ありますが、すべて読みきりですのでどこから読んでもらっても差し支えありません)
 https://i.mag2.jp/r?aid=a5e0498c7d627b
 

特別編としてネットニュースに掲載されたのでご高覧いただければ幸いですニコニコシェア等はご自由に構いません。
 
次回5月13日の第137号「年金は75歳から支給しますという事ではないが、支給開始年齢の引上げの歴史と現制度の問題点」有料メルマガの前半の掲載。