今月分の年金額から引き上がったが、毎年度経済の動きに変動する。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんにちは!

年金アドバイザーのhirokiです。
 
 
 
年度が変わったので今月分の年金額から変更となりました。
 
前年度に比べて0.2%の増額となっています(一部そうではない事もありますが、0.2%)。
 
なお、年金振込額に違いが出てくるのは6月15日(4月分5月分)振り込みから。
 
 
年金が毎年度変化する事があるのは前年の物価や賃金の変動に左右されるからです。
そういう経済的な要因が上がれば年金は上がるし、要因が下がれば年金も下がる。
 
 
年金が上がれば文句はないけど、下がるともう年金は崩壊に向かってるとか、財政がもう破綻しようとしている!とか、年金を下げるのは健康で文化的な最低限の生活がなんたらかんたら言われますが、単に年金法に基づいて物価スライドや賃金スライドしてるに過ぎない。
 
 
とはいえ、今は平成16年改正から始まったマクロ経済スライド調整という、物価や賃金の伸びから平均余命の伸びや少子化による現役世代の減少という年金の負担を引き上げてしまう要素を引き下げるという事をやっている。
 
よって、物価や賃金の伸びがそのまま反映されるという事じゃなく、年金の上げ幅はやや抑えられる。
 
 
たとえば、1.2%物価が上がり、賃金が1%上がったとすると、この場合は賃金の伸び率を年金に反映させる。
 
賃金というのは年金受給者を支える現役世代の力なので、それを超える物価の伸びに年金額を反映させてしまうと年金額と保険料負担のバランスが崩れてしまうので賃金の伸びに年金額を抑える。
 
 
そうすると前年度の年金額が100万円だったら、今年度は101万円になるという事。
 
 
ですが今は、マクロ経済スライドというめんどくさいものでその伸びが抑えられている。
 
 
 
マクロ経済が0.3%だったとすると、この場合は賃金1%を年金額に使うので1%-0.3%=0.7%が実際の年金額の伸びに反映される。
 
 
つまり、賃金の伸びは1%だけど、マクロ経済で0.3%落とすから、年金の伸び率は0.7%に抑えられて、1,007,000円になってしまう。
 
 
 
前年度よりも0.7%上がってるので、「見た目」は上がって良かったね!ってなる。
 
しかし、経済の伸びよりも年金額の伸びが低いので、年金額の価値は落ちた事になる。
 
 
 
たとえば給与とか年金が上がらないのに物価が上がり続けると生活が困ってしまいますよね。
 
年金は100円から110円に上がって嬉しいけど、それ以上に物価が100円から120円に上がってるとやっぱ苦しいですよね^^;
年金や給与も120円に上がっていればいいけど。
 
 
 
じゃあマクロ経済が、0.3%ではなく、2%下がったら賃金1%ー2%=マイナス1%として年金額を下げて、100万円から99万円にするのかというとそれはしない。
 
 
マイナス1%ではなく、この場合はマイナスにはせずに年金額は前年度と同じく100万円に据え置かれる。
使えなかったマクロ経済スライド率は翌年度に繰り越す(青色申告みたいに控除を繰り越すみたいな感じ)。
 
 
マクロ経済スライド率で年金額そのものは下げない。
年金額そのものが下がるとしたら賃金とか物価が下がる時。
 
 
見た目が下がると、どうしても許さーん!o(`ω´ )oプンスカってなりますよね(笑)
 
人間の心理というのは見た目で動かされてしまう。
 
 
このようにして年金額の価値を平成16年改正から導入したマクロ経済スライドで落とす事にした。
 
 
なぜかというと、それまで年金というのは現役時代の平均賃金の約60%台を給付しよう!というのが目標でした。
 
 
 
まず60%台を給付する事を決めて、それから必要な保険料を5年ごとに毎回決めていく。
 
 
 
しかし、少子高齢化で高齢者はどんどん増えて年金の支払総額が膨らみ続けるのに、保険料を支払う現役世代は少なくなる一方ですよね。
 
 
 
そうなると、たとえば年金受給者全体に約60%台給付である1000万円支払うとします。
現役世代はそれを1000人で賄うとすれば、現役世代一人当たり1万円の保険料を支払う。
 
 
ところがその後、現役世代が少子化で500人になったとすると、これまで通り年金受給者に1000万円支払い続けるとすれば現役世代一人当たり2万円ずつ負担してもらわないといけない。
 
 
 
現役世代あたりの負担を多くしていかないと今まで通りの年金を支払う事が出来なくなる。
 
 
 
 
現役世代としても一体どこまで保険料を負担すればいいの!?という不安が大きくなりはじめ、年金制度への不満が高くなっていった。
 
 
じゃあどうしたのか。
 
 
 
今まで年金受給者の年金は現役の頃の平均賃金の60%台を目標にするっていう頑固な考えを捨てて、まず現役世代の負担できる保険料の限度を決めよう!そうだ!18.3%までが上限だ。
 
この18.3%(事業主と折半だから、9.15%ずつ)までをお願いします。
国民年金保険料は17,000円×保険料改定率でお願いしますと。
 
 
先に負担してもらう上限を決めた。
つまり毎年入ってくる財源の上限が決まってしまった。
社会保障関係費として一般歳出から年金には今は約11兆円が毎年支払われてはいます(年金積立金の運用益からも時々使う)。
 
 
じゃあ年金受給者の年金はどうするか。
 
 
今迄みたいに60%台に執着するわけにはいかないですよね。
 
 
だから、保険料18.3%台に釣り合う給付として、50%ちょいの給付に持っていく必要があった。
 
 
 
現役の頃の平均賃金の50%以上は確保したいと。
 
やっぱ、年金は生活保障としての有力なお金ですから、せめて現役の頃の50%以上はありたいという事で、18.3%という厚生年金保険料が算出されている。
 
 
 
 
しかし…どうやって60%台から50%台まで引き落としていくのか。
 
 
 
年金額そのものをさっさと引き下げたら簡単ですが、そうなると受給者からの反発は想像を絶するものになりますよね^^;
 
 
だから、毎年年金額を変動させる要因となる物価や賃金の経済の伸びに目を付けた。
 
 
そのまま物価や賃金の伸びに合わせずに、マクロ経済スライドですこーしずつ伸びを落としておく。
 
 
 
そうすると、現役世代の賃金がたとえば35万円で、今の年金受給者の年金価値が21万円とする。
 
 
経済的な伸びよりも年金の価値を引き落とし続けると、賃金と年金の額の差が開いてきます。
 
 
やがて現役世代の賃金は46万円になったとしても、年金の伸びは賃金より抑えられるから23万円当たりの伸びになって現役世代の賃金に対して50%くらいの価値に到達する事になる。
 
 
保険料(負担)と年金給付(給付)が均衡するようになる。
 
 
 
負担と給付が釣り合えば破綻する事は無い。
 
 
 
 
以前の60%台の目標の時は、それを続けてたら危険だったでしょうけど^^;
 
 
 
というわけで、現在は50%に向かって価値を落としている最中なのです。
 

しかし、今年はコロナショックでどこもかしこも賃金は上がらないどころか急落だし、物価もマイナスになるだろうし、来年度の年金額への影響が懸念されます。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・事例と仕組みから学ぶ公的年金講座(月額770円税込み毎週水曜日20時にメルマガ発行)
途中で登録されてもその月の発行分はすべてお読みいただけます。

https://www.mag2.com/m/0001680886.html

4月29日の第135号は「配偶者死亡時に複数の年金を貰う権利が発生したが、ついつい貰う事を忘れていた場合と年金額の変化」


4月1日の第131号は「障害年金受給後の病状の悪化と、普段とは違う年金の振り込み」を発行しました。

4月8日の第132号は「老齢厚生年金をすでに受給してる人が死亡すれば、その4分の3の遺族厚生年金が必ず発生するのか」を発行しました。

4月15日の第133号は「労災給付と公的年金の同時受給事例と、どうして労災年金は減額されなければならないのか」を発行しました。

 

4月22日の第134号は「年金貰えないと思って長年放置後に貰える事が判明!その時の最善の貰い方と制度の縛り」を発行しました。

・有料メルマガバックナンバーはこちらから(現在130記事以上ありますが、すべて読みきりですのでどこから読んでもらっても大丈夫です) 
 https://i.mag2.jp/r?aid=a5e0498c7d627b

 

あわせて読みたいバックナンバー

平成の時代と年金(2019年4月有料メルマガバックナンバー)

https://www.mag2.com/archives/0001680886/2019/4

 
どうして年金額は0.2%上がり、国民年金保険料も上がったのかの計算(2020年2月バックナンバー)

https://www.mag2.com/archives/0001680886/2020/2