テレビ大阪/BSテレ東制作の「それでも俺は、妻としたい」は最高だった。
足立紳は今度はテレ朝で、自らの夫婦関係や家族の赤裸々な真実をさらけ出すことにしたらしい。
MEGUMIと風間俊介は、中村アン(朝山朝子)と小澤征悦(朝山賢太)に代わったが、息子の晴太はなんと同じ子役の嶋田鉄太が演じている。この子、自閉スペクトラム症の役を実に自然におもしろおかしく、かつ丁寧に演じていてすごい。違う局のドラマで同じ役をやるなんて、なかなかない。
そして今回初登場、長女の蝶子に 渡邉心結。母親同様、常にイライラして思春期真っただ中のJKを演じているが、なかなか味のある演技をしている。娘の高校生の頃を思い出してしまった。
「それでも、俺は妻としたい」の二人は、マジ切れドSのMEGUMIと、本当にこの人仕事しているの?と言うくらい売れなくて情けない風間俊介の掛け合いが最高だった。
一方、本ドラマはモデルの足立伸が「ブギウギ」で売れた後のエピソードなので、夫はそれなりに仕事をしている男として描かれている。
中村アンはキレ方が上品で、汚い言葉で罵ったりもするけれど、どこか相手を突き放さない優しさを感じるキレ方。MEGUMIと比べてどちらがいいとかではなく、相手の夫役とのバランスもあるので、これはこれでいい。
その夫役の小澤征悦は、風間俊介とはまた違った情けなさを醸し出している。
風間版は、いつも「ヤルこと」しか考えていないナヨナヨっぷりだったが、小澤版は煮詰めて煮詰めて男のダメな部分をドリップしたかのような、優柔不断で自己中、かつ自分のこと大好きなダメ男として描かれている。
でも男性目線で見ると男って、所詮こんなもんだよな、、、となぜか安心してしまう。
その点では風間版も同じ所感だったかもしれない。
自分たち家族をモデルにした映画を作るために、毎エピソード奮闘していく朝山家。
映画製作のために奔走する夫婦間のいざこざや、子供たちとの生活の一部始終が、いちいち心に刺さる。
それは、ドラマ用に仕立てられた美しいお話ではなく、どこにでも転がっているような、ごく普通のきれいではない日常だったりする。
古くからの友人で朝山家が立ち上げた事務所の所属俳優である、なかちゃんこと中野(松尾諭)が突然亡くなり、朝山夫妻が世話になった子供たちを葬式に誘う最終話のシーン。
どれだけ説得しても、結局二人は来なかった。子供ってそういうものだ。
ある程度の年齢になり、自分の世界ができてくると大人とは違う時間に生きるようになる。
そういったところのリアリティも、このドラマの魅力だ。
中村アン演じる朝子はとても魅力的な大人である。
最終話で自分のことを語るシーンは、どうしようもない夫との関係性においても、自らを冷静に分析して前向きにとらえようとする素敵な女性だ。
足立紳は、仕事でも人生でも本当にいいパートナーと出会えたということだろう。
共演者も個性的な俳優陣で固められている。
さとうほなみ、宇野祥平、坂田聡、竹財輝之助、影山優佳、 梅舟惟永らに加え、劇中の映画製作で、朝山夫妻を演じる俳優役に、丸山智巳、河井青葉。
足立紳の家族をモデルにしたドラマの中で、更にその家族をモデルにした映画を撮っているというドロステ効果的な見せ方で、なかなか面白い。
また松尾諭が、悲哀をまとった売れない俳優役を演じているが、足立紳は以前NHKドラマで「拾われた男 Lost Man Found」の脚本を書いていて、そのドラマは松尾諭のエッセイが元になっている。その縁もあってこの作品で重要な役で出ていたのだろうか。
こうなると、今度はまた違う局で違う俳優陣でこの家族のドラマをやってくれないだろうか。その時も晴太役は、同じ子役で。
最後に、朝子の言うことは本当にまったくその通りで何も反論の余地はないのだが、男であるMATTはやはり、賢太の情けなさがよくわかる。特に子供に対してのスタンスというか接し方。あのもどかしさは見ていて共感しかなかった・・・・・笑